かつての一流メーカーの凋落

当ブログでは国内一流家電メーカーの凋落ぶりを、再三取り上げてきたのですが、

シャープ凋落の本当の理由② 「社長も本気の”さん付け運動”」
年功序列廃止で家電メーカーは脱『リア王』なるか!?

その代表格としてシャープがあります。

 

再建策も示させれているようですが、どれもひどい内容で、従業員や株主は不憫であるとしか言いようがありません。経営陣には株主はともかくとして、従業員を守ろうなんて気概のあるリーダーは一人もいないのでしょう。その理由は、過去の記事の通りです。

 

シャープの創業者早川徳次さんのお話

シャープの創業者の早川徳次さんは、シャープペンシルを発明し、会社を順調に大きくしますが、関東大震災で家族を失うという不幸に見舞われ、会社の譲渡を決意。その際シャープペンシルの特許を無償で提供する代わりに従業員は絶対に守ってくれと言ったそうです。そして、会社を去り、その後にシャープの前身の会社を立ち上げる。

 

そういう人だからこそみんながついていくわけで、逆にそういう人でなければ会社の経営なんて勤まるはずありません。一番の問題は会社のトップに本当のリーダーが一人もいないことです。

 

リーダー不在の理由 本当のリーダーとは?

では、そもそも、なぜ正しい判断の出来ないような人がリーダーになってしまっているのでしょうか?

それにはまず、リーダーとはどんな人のことか考えてみる必要があるでしょう? 皆さんが大人でしたら、少し思い出して欲しいのですが、小学校や中学校時代に、

「頭がよく、行動力や勇気があり、そのせいで人望も厚く、また先生にも一目置かれている為、交渉なんかも出来ちゃう」

そんなリーダーがクラスに1人くらいはいたのではないでしょうか。その子がリーダーと誰が決めるでもなく、皆が認めて自然とそうなっていた。これが所謂本当のリーダーというものなんではないでしょうか。

その実力を皆に認められて正しく自然とリーダーになった者、人間でも動物でもそれが自然社会で群れを引っ張る資格を持っている。私はそう考えています。

 

サラリーマン社会のリーダーの嘘

しかし、サラリーマン社会となるとどうでしょうか? 実はこれと真逆になっていますね。上から指名されてリーダーになる。皆が認めていようがいまいが、まったく関係なく。下からの支持ではなく、上からの支持で、リーダーになる。上からの支持を集める力なんて、本当
の実力とはやはり違うものです。なぜなら、自分より能力の上の人を排除し、自分の地位を脅かさない人しか選ばれないからです。

会社の命運ではなく、自分の言うことを聞く無難な人物しか出世していかないシステムだということです。

この不自然さ、不合理さはいったいなんでしょうか。これが本当のリーダーと呼べるのでしょうか?

 

そんな摂理を鋭く洞察するのが『リア王』

シェークスピアの四大悲劇、『リア王』では、長女ゴネリル、次女リーガンは老王のご機嫌を取ることだけに注力して、土地を手に入れた後、老王を裏切ります。本当のことを言ったコーディリアは波紋を食らいます。

『リア王』の記事で、「リアはまるで出来ない上司のよう」と書きましたが、まるでサラリーマン社会みたいですよね。単なるこじつけでしょうか? 似てますよね。

 

本当の実力者が、それ相応の地位につけない、リーダーになれない。そんな不自然極まりない不合理なリア王型組織が日本の企業の主流なのです。そして、シャープと東芝のなれ果てのようなひどい姿の理由もここにあります。

 

事実、この2社の経営陣は、社員たちを守る気概がまるでなく、とてもリーダーの器ではありません。彼らが悪い、というよりも、そんな人間が会社の命運を握るリーダーのポジションにいることが問題なのです。

あ なたの会社はちゃんと皆に認められた人が上に立てる風土でしょうか? もしそうでないとすれば、先行きはあまり明るくはないかもしれません。そし て、日本経済を引っ張るべき超一流企業ですら、その兆候が認められるのですから、その先は復活どころかさらなる衰退を想像するのも当然ではないでしょう か。

『リア王』の最期では、フランス軍は敗退し、老王リアも、長女ゴネリルも、次女リーガンも、三女コーディリアも没しました。偉大なる物語の予言力・・・。果たしてシャープと東芝の未来はどうなるのでしょうか・・?

 

経営陣のためだけのシャープ

シャープは判断を誤ったとよく言われますが、私はそれすら疑問です。と言うのも、誤ったと言うより経営陣にとって一番楽な形をとっている結果なだけなんじゃないかと思ってしまうのです。そして、それはこうなった今もです。

だから、彼らにとっては誤りでも何でもないんじゃないか。シャープはもはやそんな彼らだけのためにある。そんな風にすら思えてしまうのです。

「企業発展のためには、肉親でも何でも、人間的なものを一切、犠牲にし、置き忘れてしまってしまっていいものでしょうか、人間性を置き忘れた企業は、いつか、何処かで必ず、躓く時が来るというのが、私の信条です」

-『華麗なる一族』- 山崎豊子作

これは、山崎豊子さんの小説『華麗なる一族』に出てくるこの小説のテーマとも言える台詞です。結局、シャープはどこかに人間性を置き忘れてしまった結果、敗退に向かったと考えられるのではないでしょうか。

追記

この記事を公開したのは、2015年5月ですが、その後に発売になった本の中身を最近知って驚きました。

当ブログの「脱リア王論」を実践し、成功を収めている会社があったのです。それは世界のトップ企業、かの「google」だったのです!

「google」先生の人事が当ブログの「脱リア王論」を実践していた件