日本政府が超高速取引の規制を検討

少し前の話ですが、マーケットにおける人工知能を駆使した「ロボット・トレーディング」、超高速取引を規制する方向で検討に入ると伝わりました。超高速取引とは、1000分の1秒単位で取引を繰り返す投資手法で、それを操るのは、最新のAIを搭載したコンピューターです。

世界的には、マーケットを荒らす要因、また公平性を欠く取引だとして、嫌われ、規制の方向にあるようですが、そんな中、日本政府はこれまで、これを容認、野放しにしてきたのようですが、なぜこのタイミングでそんな声が出始めたのでしょうか。その理由には、公平な取引のためとか、個人投資家を守るためとかの、恰好いい理由ではなく、単に日本政府の都合と言う部分がありそうです。

それは日経平均株価の現在の位置ではないでしょうか。

 

いいようにやられる日本市場

今年に入って、年初から日本株は世界に突出して暴落しており、その裏には「ロボット・トレーディング」の暗躍があると言われています。外国人投資家は、年初から日本株を5兆円も売り越しております。

アベノミクスが始まって以来、外国人は日本株を15兆円買い越して、まさに政府にとっては、外国人投資家は大きな力、見方でした。今まで、日本政府が世界の潮流に従わず、超高速取引を野放しにしてきた理由はきっと、ここにあるのでしょう。その裏にいる外国人投資家は、相場を荒らしこそすれ、結局は日本株を買ってくれる存在だったのです。

しかし、今年に入ってから、その投資姿勢には変化がみられると考えざるを得ず、彼らは、日本市場を必要以上に荒らすだけではなく、株価を大きく下げさせる圧力になっていると言えます。つまり、今まで政府の味方だった彼らは、今年に入ってから敵になってしまったのです。

政府はとうとう、それに業を煮やし、「そんなことをするなら、見ていろよ」と警告を発してきたと言うことでしょう。随分都合がいい話とも思いますが、政府にとっては、今の株価水準は非常に都合が悪い水準だと言うことが言えるのでしょう。

 

ロボット・トレーディングの弊害

しかし、世界的には、それは規制される方向にあるのですから、まあやっと、日本もいい方向へ向かうと考えればいいでしょう。と言うのも、この「ロボット・トレーディング」は、一般の投資家にとっては、百害あって一利なしの邪魔なものであり、不正な、不公平な取引も秘密裏に行われているのが実態のようです。

例えば、注文が取引所に届く前に途中でかすめ取り、価格を操作するようなことも行われているようです。それは1000分の1秒で行われていることなので、普通の投資家にはどうしようもないわけです。

また、アルゴリズムの暴走による突然の理由なき株価暴落、アメリカではこれを「フラッシュ・クラッシュ(瞬間的な暴落)」と呼ぶそうですが、NYダウでは過去に何度かそのようなことが起きているそうです。その辺りは、クリストファー・スタイナー作『アルゴリズムが世界を支配する』に詳しいですね。

 

AIの社会への進出 市場と同じことが起こる可能性

さて、そんな動きを操っているのは人間ではなく、最新のコンピューター、アルゴリズムであるわけですが、その人工知能が、これから私たちの社会にどんどん進出してくると言われています。そんな彼らが、マーケットの世界に於いては、既に規制の対象になりつつあると言う事実をどう捉えますでしょうか?

マーケットに起きていることは、特殊な環境下でのことなので、別と考えればいいのでしょうか? また、社会に出て来る人工知能は、マーケットのそれとは別物なのでしょうか? 私にはどうもそうは思えません。マーケットに起きているようなことは、社会に於いても起きる、むしろ、昨今のマーケットの事情はそれを暗示していると考える方がよほど自然ではないでしょうか。

 

彼らの”合理性”が混乱を招く

超高速取引が、マーケットで行っていることはなんでしょうか。それは「合理的にお金を奪う」、ということです。当ブログでは、合理性を、

目的を最短で達成しようとする性質のこと

と主張していますが、「お金を最短で奪うと言う目的」、彼らは、マーケットでそれを純粋に貪欲に追求しているのです。では、その目的の更なる達成のために今後どうするのか? その知能をもっともっと速く、正確にしようとするでしょう。そうでなければ、並み居るライバルに勝てないのですから。

これが、更にどんどん進化していくと、もはや、人の投資家は参加できなくなり、ロボット同士の戦いになると想像できます。1000分の1が100000分の1までになるかもしれません。しかし、そんなコンピューターはよっぽど資金力のあるところしか、開発、運用できないでしょう。そうなると結局、もっとも資金力のあるところが、最終的には独占することになるのです。こうなったら、マーケットは終焉です。

これが合理性の本質です。

合理性が極まってしまうと、最終的には独占により終焉が訪れるのです。我々人間には、それを防ぐ可能性が無限にあります。それは「こころ」と呼ばれる機能だったります。しかし、ロボットには、それが存在しません。ロボットがこころを持つようになると言う馬鹿なことを言う、科学者の方もいるようですが、それは彼らの存在理由から考えてあり得ません。彼らにとって、それは全く必要のない物なのです。合理的な彼らがそんな無駄な物を備えようとするはずがありません。

 

人工知能の危険性に善悪はあまり関係ない

「悪意を持った科学者が人工知能を・・」と言うことで、その恐怖が語られることが多いですが、AIの危険性に関して、人の善悪観念はあまり関係がありません。「いいか悪いか」など、主観的なものでしかなく、高度なAIは個人単位で所有できるものではないのですから、「悪い人」ではなく、「頭のおかしな人」の手で動く能性は低く、そんなことは考えても仕方がありません。

人工知能が本質的に危険なのは、合理性を極めようとするからです。それしかないからです。前述した通り、合理性とは限界点があり、極まると最終的に終焉に行き着く性質のものなのです。だから我々人間は合理的なだけの生き物ではないのです。神様は、本来、私たちをそのようには作ってはいないのです。

 

人類の終焉の回避は可能?

マーケットはそのことにいち早く気づいたからこそ、人工知能を規制する、と言う方向に動いているのではないでしょうか。これは私たちの実体社会でも同じことが起きることを暗示しており、いづれ規制への道を探ることになる、ということでしょう。しかし、そのために、私たちはその弊害を一度目にしなければならないでしょう。そうなるまではきっと気が付かないのです。

世界の著名な方々が、人工知能の危険性を口にし、人類の終焉に繋がると、あの天才科学者ホーキング博士もおっしゃられています。人工知能を無秩序に解き放てば、私もその可能性はかなり高いと思っています。しかし、私たちがそのリスク、危険性を最大限認識できれば、それを規制するという方向にだって舵を取ることが出来る、と言うことをマーケットは先陣切って教えてくれているとも言えるのではないでしょうか。