大方の予想を覆し、共和党のトランプ氏が大統領選挙で勝利を収めましたね。事前のマスコミ報道などではクリントンが優勢とされていたところだったため、世界に衝撃が走り、マスコミ報道が出鱈目だったような記事も散見しますが、私はそうは思いません。得票数ではクリントンが勝っていたようですし、みんな拮抗していると伝えてましたよね、確か。クリントンが圧倒的に有利だと言っているところはなかったように思います。

私も最終的にはクリントンかなと思っていたので予想が外れたわけですが、私たち投資家としましては、選挙結果の読みが外れたことなどは、むしろどうでもいいことではないでしょうか。

トランプが選出されたことよりも、強烈な驚きとなったのが、その後の株価、為替の動きです。

想定通りだが、サプライズ

選挙当日の値動き

選挙結果が判明しだした時、取引中の日経平均株価は暴落を開始しました。あれよ、あれよという間に三桁の下げ幅となり、また先物のサーキットブレーカー発動か? というような酷いありさまでした。それもそのはず、トランプ大統領が誕生すれば世界は大混乱に陥り、株もドル円も大暴落するというのが所謂コンセンサスとなっていたのです。

しかしそのような中、当ブログでは「トランプショックは決して大したことない!」とお伝えしてきたわけであり、「やべっ!あんなこと書かなきゃよかった」と一瞬思ったかは内緒ですが(笑)、固唾を飲むような気持で、仕事にもあまり集中できずに、値動きを見ていました。

すると、日中の取引を900円以上安いところで終えた日経平均は、夕方に夜間取引で500円以上反発し、ドル円は101円前半でとどまった後、103円まで戻っていました。これで「ほら、大したことなかったでしょ」と書けるとほっとしていたところですが、この後にサプライズが待っていました。

ドル円はその日の深夜に前日の104円を回復、105円にも迫る動きとなりました。そして肝心のNYダウはなんと大幅上昇で次の日を迎えたのです。そして翌日の日経平均株価は3桁上昇で前日の下げ以上の上昇となりました。

 

マーケットが本当に好感したもの

しかし、マーケットはなぜこれほどまでに事前に言われていた内容と真逆の動きとなったのでしょうか。一般的にはトランプの掲げている大型減税や財政出動などの経済政策が好感されていると言われております。しかし、それは当ブログでもお伝えしていた通り、元々隠されていたものではありません。世界の投資家がそれを知らないはずはないのです。

では、何が一番好感されたかというと、つまるところ彼の態度じゃないでしょうか。トランプは選挙の勝利宣言で今までの過激な態度が人が変わったように一変したようですし、オバマと会談した際も非常に謙虚な態度を取ったそうです。

そもそもマーケットは、トランプが大統領になったら事前の発言通りの行動で世界を混乱に陥れるのではないか、という不安でトランプをリスクオフ要因とみなしていました。それが、この会見、会談で払しょくされたのです。こちらが一番の要因ではないかと個人的には思っております。

ちなみに、当ブログではこの記事の中で、

トランプ大統領は、インフレ、株価暴騰への起爆剤?

トランプは大統領になればおとなしくなるはずで、それは株価の下落要因にはならないとも予想しておりました。

このスピードは想定外

NYダウは勢いに乗り、史上最高値を更新しました。このタイミングでの史上最高値更新は予想することが出来ませんでしたね。

ドル安はトランプ大統領の誕生でピークを付け、アメリカ株はむしろ暴騰リスクの方が高いと書いてきましたが、それは長期的視点であり、この短期のうちにこのような上昇を見せるとは想定外でした。

今後について とうとうインフレに?

トランプ大統領で株価は暴落せず、高騰。しかし、それでめでたし、めでたしかというと、気になる点もあります。トランプ大統領が掲げる経済政策は簡単にいうとインフレ政策です。しかも、それもかなり大胆な政策なようです。

 

イギリスと欧州でインフレ加速?

下のFacebookページでお伝えしていたのですが、少し前からですが、イギリスや欧州の一部でインフレの加速を伝えるニュースが出ています。

世界的な債券利回り上昇、今回は根拠十分

特にイギリスは経済状況がよく、元々利上げの方向に進んでいたはずなのに、EU離脱の後に再び利下げの方向へ金融政策を逆戻りさせました。その影響もあり、ポンドは対ドルで31年ぶりの安値に沈んでいます。今のところ、それはイギリスの製造業にいい形で貢献しているそうなのですが、私は通貨安がいいことばかりなのかというと、そうではないかと・・。

ユーロもその影響でだいぶ安くなっています。ここにきて、アメリカの大胆な経済政策が加わったらどうでしょう。通貨安が続く国はインフレが必要以上に加速してしまう懸念があるのではないでしょうか。

肝心のアメリカは?

では、肝心のアメリカはというと、金融政策に関して、彼らには頼もしい存在がいます。それは連邦準備制度理事会、FRBです。特にリーダーのジャネット・イエレン議長の実力値は相当高いと当ブログでは睨んでいるわけです。しかし、一般的にはどうも「ハト派の優しいおばさん」くらいにしか認識されていないような感じがあります。

フィッシャーFRB副議長、行き過ぎた「高圧経済」のリスクを警告

こちらの記事に出ている通り、今年は確かにメンバーと議長の意向が違うのではないかと、思われるような場面がありましたが、しかし、当ブログではそれは政治、特に大統領選挙の影響であり、メンバーはイエレンが立場上言えないことを代弁しているだけと予想してきました。

 12月17日、イエレン米FRB議長がFOMC後、会見に臨んだ。ワシントンの会場で同日撮影(2014年 ロイター/Kevin Lamarque)

12月17日、イエレン米FRB議長がFOMC後、会見に臨んだ。ワシントンの会場で同日撮影(2014年 ロイター/Kevin Lamarque)

2017年の利上げの行方

イエレンを「単なる優しいおばさん」にしていた大統領選挙が終わりました。12月の利上げは間違いなくあると思います。そして、経済政策が予定通り行われ、トランプがおかしな介入をしない限り、2017年の利上げは加速すると予想したいと思います。前から書いていますが、来年はイエレン先生豹変の年です。これを抑えておかないと、男性投資家の皆さんは来年、「女心はようわからん」ということになるでしょう(笑)。

最後に日本は?

では、最後に私たちの日本はどうなるでしょうか。アメリカが利上げを加速すると仮定すれば円安ドル高になると予想できます。来年は120円を回復する局面もあるのではないかと。そして、当然日経平均も同時に騰がって去年の高値を上回る場面があるかもしれません。

しかし、依然と少々違うのは、私はこれを楽観的な気持ちでは書いておりません。なぜなら、政府、日銀にコントロールされた都合の「いい円安」はすでに終わってしまったと感じるからです。もし、本当にこれから円安が始るとしても、それは以前のような政府、日銀主導のいい物ではありません。それは世界的な大きな流れによるコントロール不能の物のはずです。

実際に債権はすでに売られ始めているようです。巨大なバブルと化した債権が崩れるとなると、余り余るお金の行きつく先は、燃やしてしまわない限り、リスク資産しかありません。通貨安政策をとる国にはそれが濁流となり流れこみ、必要以上のインフレが加速する懸念を持っておいても損はないと思います。

先日、トランプ騒動に紛れて日銀の黒田総裁がこのような発言をされていました。

出口戦略については頭の体操として議論している

【発言】日銀総裁「出口戦略、市場に大きなショック与えることはしない」

一節の言葉だけを捉えて批判をしたくないのですが、さすがにこの発言には、私も多くの驚きと不安を感じました。日銀にFRBと同じような働きを期待するのはどう考えても無理であり、私たちはやはりそれ相応の備えを考えておかねばならないなと思ったのです。