4月7日、アメリカはシリアのシャイラト空軍基地に巡航ミサイルを撃ち込みました。その理由は、「アサド政権が化学兵器を使用したため、その報復」ということ。

トランプ政権を甘く見てはいけない! トランプ政権下では物騒なことが起こってくる、 そうお伝えしてきた当ブログでは、この行動に驚きこそないものの、当初想定してこととは、違う形になりつつあるなと思うところです。今回、今までのトランプ政権をいったん整理し、これからのトランプ政権を改めて考えてみたいと思います。

ただ、一つ大きく変わらないのは、トランプ政権は対中国戦略だろうということです。

 

シリア攻撃に見るトランプ政権の変化

アメリカが、シリアに攻撃を仕掛けたということは、一つ大きな変化でした。トランプ大統領は予てからシリアに手を出すことは止めると公言してきたからです。そして、その先にはアサド政権を支援するロシアと仲良くなるという戦略が隠れていました。

そして、その辺りの戦略のブレーンであったと考えられるのが、スティーブ・バノン首席戦略補佐官です。そのバノンさんがつい先日、NSCを外され、本日、補佐官も更迭されるのでは?との記事が出ていました。

バノンさんはシリアへの攻撃には反対だったようです。また、ロシアに近付く戦略もこのバノンさんが主導していた可能性が高いでしょう。トランプ政権は大統領就任前から、ロシア側に近付こうとしていたことを次々と暴露されて問題になっていました。

個人的には、この戦略は非常に合理的でアメリカは中東にかまっている余裕はないだろうという見解ですが、このロシアに近付くという戦略は共和党内でも非常に反発が大きかったようです。というか、どこの馬の骨ともわからんバノンさんに主導されて、というのが気に食わないといったところなのでしょうか。

私は、このロシアが絡みの情報を誰が暴露しているのか? ということが非常に重要だと考えていましたが、最近の情勢を見ていると、内部である可能性が非常に高いでしょう。

さて、このシリア攻撃でトランプ政権の戦略は大転換となるのか? という部分ですが、ここはまだようわかりません。ティラーソン国務長官は、中東の戦略が大きく変わるわけではないと話していたようですし、ロシアとの関係がこれで決定的に悪くなるかもわかりません。当然事前通告はしていたのでしょう。ただ、ロシアと仲良くなる作戦はいったんは頓挫したのは間違いなさそうですね。

 

なんでアメリカはミサイルを発射したの?

少し変わって「なんでアメリカはここででミサイル」を発射したのか、という子供のような疑問に当ブログが答えてみたいと思います。

「アサド政権が化学兵器を使用したため、その報復」これはアメリカが公に言っていることです。しかし、肝は今回そのタイミングが米中首脳会談の前日で、習近平さんとトランプさんの会食中だったということです。日米首脳会談後に北朝鮮がミサイルを発射しましたが、これとほぼ同じようなことをアメリカがやっているわけです。

その北朝鮮に対し、厳しい圧力をかけることをアメリカは中国に望んでいる。つまり、今回のミサイル発射は中国と北朝鮮へのけん制を通り越して脅しになっているということです。

さて、ここまでは特にどなたも異論のないだろう、テレビ報道を見ていれば分かる部分です。しかし、当ブログでは多少のリスクも感じながら、もうちょっと突っ込んで考えてみたいと思います。

 

化学兵器を使用したのは誰?

化学兵器を使用したのは誰なのでしょうか? この疑問はどうなのでしょうか。ここに関してはテレビ報道では語られることは、ほぼないですね。

基本的にアサド政権が使ったと断定されています。なぜでしょう。それは欧米がそう言っているから、です。アサド政権は反体制派の自作自演だと言っています。ロシアはアサド政権が使用したという根拠はないと言っています。

メディアは欧米の言っていることを信じています。日本人も恐らく8割くらいの方は欧米を信じているでしょう。

しかし、逆から見てみると、今回、アメリカは米中首脳会談の前日というこのタイミングでミサイルを発射したかったのだと推察できます。そしてアサド政権が化学兵器をしようしたとすると、その意向に沿う形で、アメリカにミサイルを撃ち込まれる口実を与えた、ということになります。これは変ですよね・・。

私は個人的には、アサド政権がほぼ制圧している支配地域で化学兵器を使う可能性はかなり低いと思っています。メリットが全然なく、欧米から一斉に攻撃されるというデメリットしかないと思うからです。もちろん、単なる推論です。

ですが、同時にアサド政権が化学兵器を使用した、と断定することは私たちには出来ません。ですから、「化学兵器を使用したのは誰か」という答えに正解があるとすれば、それは「分からない」になると思います。

ちょっと古いですが、このような見解もあります。以前にもご紹介した北野幸伯さんの記事です。

<シリア反体制派がサリン使用か、国連調査官 AFP=時事5月5日(月)配信

http://archives.mag2.com/0000012950/20170330161507000.html

 

当ブログオリジナル? アメリカの対欧州戦略について

当ブログが伝えてきた対欧州戦略はどうでしょう。ここに関しては、当ブログ以外にそのような見解はあまり見当たらず、オリジナルということになります。というと、聞こえはいいですが、客観的な裏付けが少ないとも言えます(笑)。

ただ、なぜ当ブログがそのような見解を立てるかというと、相場の世界の動きを追って来たからです。21015年夏のギリシャ問題から始まるドイツ、メルケルへの圧力の高まりと、チプラス首相の不可解な言動。VWワーゲンの排ガス規制問題のアメリカによる暴露、パリのテロ事件直後のNY株の動きなど、色々なサインがそこには表れていましたが、それらの不可解が一点に集まってきたように感じられるのです。

この動きの焦点は、フランスの選挙ル・ペン党首が勝つかどうかに現れると思っています。ル・ペンを勝たせることは、アメリカの戦略に入っていると私は感じています。その戦略の一つとも考えられた移民の入国規制ですが、これもバノン補佐官の戦略だと言われています。またバノン氏はEUに対しては、懐疑的であることを駐米ドイツ大使に伝えたと報じられていました。

バノンの失脚により、ここにも大きな変化が現れるのでしょうか? しかし、ドイツへの圧力の強まりは、すでにオバマさんの時代から始まっているので、また別とも考えられます。

 

戦略転換の可能性

まとまりがなくなってきたので、最後に強引に纏めますと、当ブログがこれまでお伝えしてきたアメリカの国家戦略の推察は、トランプ大統領の言動を紐解いたものでした。それが変わってきた、ということはアメリカの戦略が変わってきた可能性を示していると言えます。それはバノン外しに露骨に表れていると言えるでしょう。

そして、それは今まで、戦わずして勝つための戦略だったように思えます。いかに正面からぶつからず、中国を抑え込むか、そのための緻密な戦略だったように感じるのです。

しかし、今回、突然の武力行使に踏み切ったことからも、方針転換が行われている可能性が高いでしょう。また、このような事態はまだ序章に過ぎないとも考えられます。

トランプ大統領が就任した直後に感じた、この政権はジョージ・ブッシュ時と似ているという予感が、やはりという感じになってきた気がする昨今の共和党政権です。