12日、「ランサムウェア」というコンピューターウィルスを用いた世界的なサイバー攻撃が行われ、世界で100ヵ国以上が感染したと報じられています。ここまでの大規模サイバー攻撃というのは、過去にも例がなく、大きな話題となっています。そんな中、昨日辺りからニュース報道で伝えられたのが、「犯人は北朝鮮ではないか」という説です。なるほど、あの北朝鮮なら確かにやりかねない! こう感じた方は結構いたのでしょうか。

でも、ちょっと待ってください。果たして本当にそうでしょうか。これ、そう安々と信じていいのでしょうか。「いや、そんなの信じていないよ」というのであれば、この記事の価値はあまり、ありません。しかし、もし、大半の方がある程度信じている、ということであれば、これは結構危険なことが起きているのではないか、と感じて、記事を書きたくなったのです。こんなことを言うのは、きっと私くらいかもしれません。

ただ、初めにお断りしておきますが、私は「北朝鮮はやっていない」と言ったり、彼らを擁護したいわけではありません。

北朝鮮関与の疑い?

まずはこちらの記事をお読みください。

「ランサムウェア」攻撃に北朝鮮関与の疑いも

~ BBC Japan ~

こちらをお読みいただくと、北朝鮮犯人疑惑という情報には全く価値がないことが分かっていただけると思います。

現時点での推理は北朝鮮の可能性を示唆しているが、決定的な情報を得ているとはまったく言い難い。

証拠としてはわずかな断片にすぎない。

かなり覚束ないし、いずれも状況証拠だが、引き続き調べる価値はある

答えよりも疑問の方が多い

もしも、という仮説要素が非常に多い

その一方で、北朝鮮ではないと示唆する詳細データもある

「かなりおぼつかない」、「答えよりも疑問の方が多い」、「もしもという仮説」・・、挙句の果てには、「北朝鮮ではないと示唆する詳細データもある」・・。これは北朝鮮疑惑であり、北朝鮮じゃない疑惑だということです。いったい、なんのこっちゃでしょう・・。そもそも、記事の題名がおかしい。読み終わったら、どこが北朝鮮がやったという疑惑なの? と思うでしょう。ただひたすら、「分からない」としか書かれていないです。

で、誰が言っているのか、というと専門家となっています。サイバー攻撃というのは、列記とした犯罪行為です。じゃあ、専門家と言えば、国のサイバー犯罪を取り締まる組織かなんかのはずですよね・・普通は。

大学教授? 民間会社の名前すら出ていない名無しさん? なんでしょうこれ? まとめると、どこかのおっさんが、「北朝鮮がやったかもね、一応そういう風には見えるよね。彼らならやりかねないし。でも、結局わかんないよね」と言っている、そういうお話ということです。

もちろん、彼らに罪はないです。彼らは聞かれたから、「分からないけど、そうかもしれないね」と正直に答えているに過ぎない。もし、外れていても、当然なんの責任の欠片もない。

テレビ報道の怖さ

さて、この疑惑が如何におぼつかないかは、ここまで、もう十分かっていただけたかと思います。何より、情報の発信源がそう言っているのですから、間違いありません。しかし、冒頭で書きました通り、私は北朝鮮はやっていないぞ、と言いたい訳ではありません。もちろん、それは分かりません。でも、アメリカがやったのかもしれないし、中国かもしれないし、ロシアかもしれないし、はたまた日本なのかもしれません。

私が言いたいのは、先程お伝えした非常にいい加減な情報によって、世界中の人々がきっと北朝鮮の仕業に違いないと思ってしまうことが、恐ろしい危険だと言うことです。北朝鮮は悪い国だからそれでもいい? じゃあ、もし、北朝鮮以外がその対象にされたとしたら? 例えば、あなたとか。

サイバーだとわかりづらいので、リアルの世界で考えてみましょう。今起きていることは、何か犯罪があったとして、テレビに出てきた専門家、例えば犯罪心理学者とかが、親しい知人が犯人に違いありませんと言って、みんながそれを信じて、誰かを犯人に仕立て挙げている、というような状態に近いです。

異常ですよね。どう考えても。

この北朝鮮の疑惑は、天下のNHKでも取り上げられていて、「北朝鮮がやったという疑惑があるんです。根拠は不明なんですが」とキャスターが言っていて、私は絶句しました。報道ってこういうのでいいんでしたっけ? どこの誰ともわからないおっさんの頭に浮かんだもしもという仮説を伝える場なんでしたっけ? テレビ報道って・・。

 

サイバー攻撃はでっちあげの宝庫になる可能性

サイバー攻撃が世界的なニュースになったのは、初めてのことだったと思います。報道も世間の反応もきっとまだ慣れていないのでしょう。しかし、最後に、非常に不気味なことがさらっと書かれています。

サイバー攻撃の発信元を特定するのは、非常に困難なことで有名だ。確認が取れるというより、大勢がそうに違いないと合意したから、おそらくそうなのだろう――という結論で落ち着く場合が多い。

そうですか・・それを作る強力な力を持っているのは、メディアの方々ですよね。「大勢がそうに違いないと合意したら、犯人が出来上がる」、これがどれほど恐ろしいことなのか、きっと大抵の人は分かることだと思います。

サイバー空間という一般人にはなにが起きているのかすらわからない世界だからこそ、その危険性がより高まるということではないでしょうか。専門家? 知りません。そんな得体の知れない奴らの言うことを簡単に信じてはいけません。自分に都合のいいことしか言わないのが、人の常なのです。

そういうわけで、今回、私一人だけだろうけど、かなり怒っています。なぜなら、彼らメディアのやっていることはかなり危険だから。その相手が北朝鮮だからいい、という問題ではないと思います。なぜなら、その矛先は、将来私やあなたにも向くかもしれないから、です。

 

それは大げさかもしれないし、最初だからなのかもしれないけど、とりあえず、「もしも、という仮説要素」をテレビが報じるな、とだけは言いたいと思っています。

最後にもう一度断りますが、この記事は北朝鮮はやっていない!とは言っていないです。

そしてサイバー戦争において、事実は非常に手に入りにくいものなのだ。

これだけが事実です。