12月1日、「アメリカのフリン前大統領補佐官が、トランプ政権に不利な証言を行う」、との一部報道を受け、NYダウは一時350ドルも安い場面がありました。せっかく、税制改革が成立の見込みとなり、株式市場は大暴騰かというところだったのですが、台無しです。

しかし、この通称「ロシアゲート」と呼ばれる疑惑(意味不明な造語なので私は嫌いですが)、一体なんだかわかりますでしょうか。一般的に、トランプ政権の中枢が選挙の前にロシアの高官とコンタクトを取っていたのではないか、と言う疑惑です。ええ・・で・それがなにか・・?

更には、トランプはロシアと結託して選挙に勝ったなどと、論拠が不明瞭な陰謀論的な物言いまである始末です。

これを大問題、と言う風に扱われても、私たちはおろか、当のアメリカ人も戸惑うばかりではないでしょうか。日本の森友、加計学園問題と性質的には近く、マスコミが大騒ぎだが、多くの国民が取り残されているといった状況ではないかと、推察します。

しかし、このロシア疑惑、実は私たち、日本にとっても、結構大きな問題をはらんでいるのです。

 

肝はトランプ政権の親ロシア政策

トランプ政権は、ロシアとの関係を改善する親ロシア政策を進めようとしている、この重大な事実を果たして一体どれだけの人が知っているでしょうか。

日本のニュースではまず流れることはありません。NHKでも、ロシアに優しいトランプさんには、「不可解」などと言う解説がされています。まるで、結託を疑わせるような伝え方です。しかし、これにはやましいことは、何もありません。列記とした地政学上の重大な戦略なのです。

トランプの反中は「本物」、異常なプーチン愛は「戦略」だ

「最大の敵に勝つために、その他の敵と和解する」

これが常に米国の戦略の根底にある。だから、米国が「中国に勝つために、ロシアと和解する」のは必然なのだ

~ ダイヤモンドオンライン ~

どうでしょう。「不可解だ」などと言う解説は、申し訳ないが、ただ不勉強なだけとしか言いようがありません。

 

ティラーソンはなぜ解任されるのか

そして、こちらの北野幸伯さんの記事に出てくる、親ロシア政策の象徴とされるティラーソンさん。

トランプ「親ロシアの象徴」は、国務長官に指名されたレックス・ティラーソンだろう

「プーチンの親友」ともいわれる人物が、米国の国務長官を務めるのだ

彼にも最近になって、解任の話が出てきています。そして、現在、疑惑の渦中のフリンさんもロシア寄りの人物です。そして、つい何か月か前に解任された首席補佐官のバノンさんもロシアとの関係改善を模索していた一人です。

あれ? なんか、変ですね。ロシアとの関係改善の努力した政権の大物が次々と失脚になっています。これは偶然でしょうか。

 

ロシアと関係を改善したくない勢力

なぜ、親ロシア派の人は次々と失脚するのか、その答えは簡単で、所謂その抵抗勢力の力が絶大だからですね。それがなにか、と言うと、「軍産複合体」と呼ばれるものです。

1961年1月、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が退任演説において、軍産複合体の存在を指摘し、それが国家・社会に過剰な影響力を行使する可能性、議会・政府の政治的・経済的・軍事的な決定に影響を与える可能性を告発したことにより、一般的に認識されるようになった

~ ウィキペディア ~

つまり、軍産複合体は、トランプにロシアとの関係を改善されては困るわけです。

大波乱か? ヒラリー候補が「軍産複合体」に見放され落選する可能性

米国の軍産複合体は、米ロが手を組んで停戦、和平へと進むことを望んでいません。常に敵対関係の中で、紛争を続けることが彼らの利益になります

~ マネーボイス ~

ですから、トランプの親ロシア政策を徹底的に邪魔しています。

 

軍産系幹部が次々と

親ロシア派の幹部が次々と辞めさせられる一方、その後任には軍産系の人物が送り込まれてきます。フリンさんの後釜は、マクマスターさん。この人はシリアへのミサイル発射やアフガンへの増派をめぐって、バノンさんと激しく激突。

バノンさんは、ロシアとの関係が悪化することから、シリアへのミサイルに反対。また、アフガンからの撤退を推進していました。しかし、結局敗れ解任されてしまいました。アメリカ政治における軍産複合体の力は絶大です。

ティラーソンさんの後任は、CIAのポンペオ長官だと伝えられています。CIAやFBIは軍傘下です。政権の中枢にまた一人、軍産系の幹部が増えることになります。

 

トランプ自身の失脚はあるのか

トランプさんやバノンさんはよく、「日々戦いだ」と言うようなことを発言していましたが、それはこのことを言っている可能性が高いです。ですから、トランプさん本人に対しても、弾劾か?などという情報が流れたりします。しかし、それはないのではないか、と私は思っています。

なぜかと言いますと、斎藤さんの記事の通り、軍産は先の大統領選挙でヒラリーを見放し、トランプを助けたからです。それを如実に表わしていたのが、FBIのコミー長官の一連の動きです。彼は選挙直前にメール問題を蒸し返して、ヒラリーを挫く決定打を放ちました。

しかし、その後にロシア絡みでトランプの敵として再び登場。どっちつかずの思わせぶり、その優柔不断ぶりには私も戸惑いましたが、今思えば、これは軍産の思惑を象徴しているような気がします。

つまり、「トランプは確かに必要だが、ロシアとだけは仲良くなってくれるな!」それが彼らの要求ではないでしょうか。ちなみに、ヒラリーが見放された理由は親中だったからと言われています。

どうしてロシア疑惑がまずいのか

さて、ここまでで、ロシア疑惑の本当が概ね分かったと思います。最後にどうして、ロシア疑惑が我々にとって、非常にまずいと考えられるのでしょうか。

それは、最初にご紹介した北野幸伯さんの記事に戻るとわかります。これは実に名記事ですね。

トランプは、「中国と対決するための政権をつくった」といえる

トランプ外交の基軸は、「ロシアと和解し、中国を叩く」になるだろう

トランプがロシアと和解しようとしているのは、彼がプーチンを好きだからではなく、中国と対決するため、なのです。昨今の情勢を見てみても、トランプ政権は中国に対して強硬姿勢を鮮明にしてきています。北朝鮮危機は、そのための口実になっているとみていいです(私は、危機はそのためにアメリカが作っているのではないか?とすら思っていますが・・)。

そもそも、北朝鮮を支援しているのは、ロシアと中国だと言われていますが、アメリカは中国だけを露骨に制裁強化しています。この事実だけ取ってみても、制裁の目的が、北朝鮮の核開発を抑えるためではないことを証明していると言ってもいいくらいです。

中国と対決するための合理的な、親ロシア戦略がアメリカ内部から邪魔されています。しかも、その力がとても強く、勝てそうもない。これは確かにまずいですね。下手をすると、北朝鮮を挟んで、中ロ VS 米(英)日韓 の世界大戦の構図になりかねません。

私たちの地政学上、中国を孤立させ、戦わずして勝つ必要があるのです。下手したら、私たちの生活にすら影響があるかもしれない「ロシア疑惑」。もちろん、私たちに出来ることは何一つありませんが、とりあえず本当を知っておくことだけでも出来ればと思います。

あと一つ、言えることはこの手のことに関して、テレビニュースはまったく当てになりません。こういっては何ですが、日本のメディアも結構アメリカ軍産傘下です・・。注意して見ていると、分かる瞬間がありますが、プロパガンダがぽろぽろ流れてきます。テレビニュースはそれそのものを信じるのではなく、こう伝えていた、という程度の認識に留めるのがいいかと・・。