2月9日の日経平均先物SQ日を抜けたことで、大幅な調整を余儀なくされた日本株もようやく戻り歩調となりつつあります。米国株の1,000ドル超の暴落にも108円台で耐えたドル円は、当然110円方向へ動き出したかと思いきや、なんと昨年の安値の107円を突き抜け、2月16日にはとうとう105円の半ばを付けるに至りました。

ドル円だけでなく、その他の通貨も軒並み円高となっています。いったい、なぜ、こんな不可解なタイミングで突如として円高になってきたのでしょうか。過去の動きならば、SQめがけて、225とともに円高になり、その後、一緒に反発するのが普通だったのに・・。

今回の円高の正体ですが、私はずばり、リスクオフではないか、と見ています。

ちぐはぐなマーケット

2月16日の日本の株式市場は前日のNYダウの高騰を受けて、250円以上も高くなりました。SQ通過までは、非常に不安定で、前場高くても後場に大きく売り込まれる、と言うことが頻発しましたが、それもようやく落ち着いてきたように見えます。実際、底打ちしたと考えるマーケット参加者も多いようです。

さて、当ブログは、まだ日経平均が15,000円だった2016年秋頃から一貫して、強気を通してきました。ドル円に関してはも、今年120円に戻るだろうと予測してきました。しかし、残念ながら、今の方針は弱気に転じています。ただ、長期的には円安トレンドが崩れたとまでは思っておらず、あくまで中期目線となります。

なぜ、中期目線を弱気に転じたかと言うと、今のマーケットはあまりにわからないことが多く、統一感のない、ちぐはぐな動きをしていると思うからです。その象徴が円相場です。2月16日の日経平均は255円以上高くなっていますが、その中ドル円相場は105円50銭でした。「なんじゃ、こりゃあ」と私は思いましたが、どうでしょうか。

確かに最近の日経平均株価は円高耐性がついてきており、24,000円まで駆け上がる過程でも大きな円安を必要としませんでした。しかし、105円と言う水準は輸出企業の想定為替レートを大きく下回るものです。これを無視して大きく騰がる日経平均株価と言うのは、いささか変ではないでしょうか。

これは恐らく、マーケットの需給関係が大きく崩れ始めている兆候だと私は考えます。そのことを推考するため、直近のマーケットに起きたことを順番に見ていきたいと思います。

 

金利が上昇した

今回のマーケットの混乱ですが、米国長期金利の上昇が発端、犯人扱いされています。しかし、これはかなり疑問です。債券はバブル状態であり、その崩壊は2016年の秋頃から始まっている様は繰り返しお伝えしてきた通りであり、最近ではその認識も十分一般化しており、米国長期金はいずれ3%を目指すと言われていました。実際、混乱の直前に2.8%まで上昇したわけですが、予想していた動きが起きただけです。それが、NYダウの665ドル安、二度の1,000ドル超安を引き起こすでしょうか。

現在、米国長期金利は2.9%まで来ていますが、ダウは連騰で戻り基調です。金利の上昇はあくまで自然的な動きであり、確かに株価にはマイナスですが、この程度では暴落を引き起こす要因にはなりにくいと考えられます。

 

世界的な株価の暴落

ダウの突然の665ドル安、その後の二度の1,000ドル超安、日経平均は2月6日に一時1,600円となるなど、まさに暴落の様そうとなりました。昨今、異常な強さを見せてきた世界の株式市場において、これは不穏とも言える驚くべき動きだったと解釈すべきではないでしょうか。

実際、外国人投資家は過去1か月で、日本株を現物先物合わせて、5兆円を売り越しているようです。これはいったい・・?

 

円高

株の暴落に合わせて、毎度のリスクオフの円高と言うことで、大きく円が買われました。投機筋のポジションは、これまで大幅に円売りに偏っており、このポジションをクローズした、と考えるのは妥当でしょう。しかし、今回注目すべきは、この動きがSQで収束しなかったことです。日銀人事も緩和縮小を懸念を払しょくするような所謂リフレ寄り、政府よりでした。これは円安要因のはずです。にも拘らず・・。

海外投資家はリスクオフの動きを継続している可能性が考えられるということです。

 

原油安

焦点:足元の原油安、底打ちはいつか

~ ロイター ~

そして、もう一つ注目すべきは、原油先物が安くなって来ていることです。ドル安の際は原油は騰がりやすいとされてきましたが、現在はそんなことも無視されています。3週間前と言えば、株式市場が暴落になる少し前と言うことになりますね。

他の資源価格も同様に下がって来ているようです。これらは典型的なリスクオフの時の動きとなります。

 

中国市場の異変

すべて売り、中国市場の風向き一気に変わる-人民元も株も大幅下落

~ ブルームバーグ ~

そして、更に今のマーケットに不気味さを加えているのが、中国市場の異変です。そのタイミングはやはり、今回の混乱の時期と重なっています。

 

まとめ

これらをまとめますと、海外投資家はリスクポジションを粛々と閉じており、その動きはまだ終わっていない、と推測されるということになります。そして、彼らは何かの情報を掴んで確信的に売って来ている、ということが十分に推理できます。

株式市場のみが反発に向かっているのは、異常値をつけていた空売りが溜まりに溜まっており、その買戻しが起きていると思われます。株式市場はただ単純に短期的な需給要因で、反発しているだけであり、底打ちしたと考えるのは危険と捉えていた方がいいと思います。

日経平均が24,000に向かう過程で、売りっぱなしだった個人投資家がここで大きく動いているようで、頼もしい限りですが、海外投資家がこのような動きを見せている中では、その抵抗にも限界があるでしょう。彼らは上値は絶対に買いませんしね。

ドル円は、中期的に100円を目指す可能性が高くなったと思います。当ブログはイギリスのEU離脱ショックの際、99円を付けたドル円に対し、その直後に長期円安時代の円高局面は底打ちした、と宣言させていただきました。

実際、これは当たりました。これは当ブログの実績としては誇れるものとして考えさせていただいておりますが、焦点はここを割って来るか、と言うところになるでしょう。

そして、最後に世界的にマーケットを暴落に追い込んだ材料とはなんなのでしょうか。一般的にはVIXショック、と言われています。しかし、私はそれにも懐疑的です。その本当の理由のヒントは、中国株の動向にあるような気がしています。

当ブログでは、元々、今年このような動きが出ることを十分予測していました。今年は2015年に近い相場になると。ただ、タイミングを見誤ってしまった。225に関しては、随分安いところで調整が始まってしまったな、と・・。

2015年の日経平均株価とドル円は、高値からそれぞれ20%、10円程度の調整に見舞われました。その本当の理由は米中対立に端を発した、欧州、中国発の悪材料でした。今年もこれである可能性が高い、と私は見ています。