懸念された7月13日の日経平均先物のSQ日も思ったほどの波乱とならず、無事通過、その後一週間で日経平均株価は800円近い上昇となり、23,000円を伺う位置につけました。これを受けて、市場関係者の間にも安堵が広がり、再び強気の声が増えてきました。

株価下落の最大の原因だった米中貿易摩擦はすでに織り込んだ、そんな見方も多くなっているようです。

 

株価下落の理由

2月、NYダウが665ドル安を付けて以降、世界の株式市場は大きく下落、日経平均株価も4,000円弱売られるなど、散々な状況となりました。225の大幅な下落の理由は毎度、外国人投資家の売りなわけですが、今回は先物売りが史上最大となるなど、異様な状況でした。

私はこれを見て、なにか大きな金融危機が隠れているに違いない、とビビッてしまったのですが、ここまでの動きを見る限り、これは取り越し苦労だったと言わなくてはならないでしょう。

2月2日以降のダウの暴落は、ムニューシン財務長官の「ドル安容認発言」に端を発し、3月23日の米中商法301条の発表で底をつけ、その後、ここまで買い戻しが優勢になっています。売りを仕掛けた筋が、「米中貿易戦争」を材料にしていたことは明らかです。

「米中貿易戦争」だけでここまで売られることには、私も違和感がありましたので、現在の反発にもある程度納得がいくところになります。

私が恐れた、「それ以上の何かの材料」を海外勢が掴んでいるという私の読みは外れたことになります。とは言え、それでも個別株はメタメタに売られましたので、少しはお役に立てたかもしれません・・。

 

強気ではない理由

貿易摩擦ネタでは、これ以上下がらない、であるなら、多くのアナリスト同様に、今後は強気に転換するのかと言うと、私の場合はそうではありません。その理由はこれです。

中国からの輸入5000億ドルに関税の用意=トランプ大統領

~ ロイター ~

「なんだ、結局、貿易戦争かいっ!」と突っ込みが入りそうですが、私が注目するのは、こちらの方です。

そのような多額の関税を課すと株式市場がおそらく下落するのでは、との質問に対し大統領は「そうなるなら、なるだろう。私は政治のために行っているわけではない」と述べた

このトランプさんの発言、実に重要だと思っています。

多くの強気のアナリストは、アメリカが仕掛けた貿易戦争は、「11月の中間選挙へのアピールでプロレス」という見方を根拠にしています。しかし、再三書いています通り、これは現状認識を完全に誤っています

トランプさんは、選挙など関係なく、株式市場が暴落しようと、

「中国を本気で潰しに行く」と言っているのです。

多くのアナリスト達は誤った認識の上で強気を語っているので、当然信用できないということになります。

トランプさんは今年に入り、本当のことを口にする機会が増えています。昨年は、前主席補佐官のバノンさんが本当のことを話し、トランプさんが激怒すると言うパターンでしたが・・。本当のことを語れる状況になった、と言うことはより強硬に動いてくるサインと取れるのではないでしょうか。

今後は、投資家はトランプさんの発言を気まぐれだなどと、些末に扱わず、その本質を捉え、最大限注視していった方がいいでしょう。トランプ発言は、これまで以上に相場にとっても、重大なファクターとなって来るでしょう。

 

通貨高なのか、通貨安なのか

ここ最近の動きの中でもう一つ気になるのは、円安が進んできたことですね。金融政策の方向性からドル高が進むのは、自然だと思います。対中戦略と言う点においても、元安による輸出入に対するメリットよりも、資本流失懸念の方がデメリットが大きいのでは?と思います。

しかし、トランプ政権が、今後どちらの戦略を採用するのか、分かりません。彼らの発言を聞いていても、当初から今一はっきりとしません。しかし、最近になって、トランプさんがFRBの利上げに不満を述べるなど、再びドル安への志向を強めているように思えます。そして、こんな記事が。

通貨戦争の様相、米財務長官がトランプ大統領に続き中国を名指し批判

1日当たり5兆1000億ドル(約573兆円)が取引される外為市場で最も優秀な為替ストラテジストの一部が通貨戦争が始まったとの見方を示した

~ ブルームバーグ ~

これも日本株にとって、要警戒な内容となるでしょう。私は今年の3月につけたドル円104円が今年の底と判断するには時期尚早だと思っています。

これからの予測は困難

さて、それを踏まえて年後半を予測してみたいと思いますが、答えはこうです。さっぱり分からない(笑)。

恐らくですが、貿易戦争のネタでは、これ以上大きく下がることは考えにくいです。NY市場を見ていれば、株の需給は強烈なほど良好です。

しかし、一度、国際情勢に目を向ければ、「これ以上の事態」が起こらないと言える状況ではありません。最近のトランプさんは、中国だけではなく、率直に「敵」と発言するなど、EUに対しても圧力を強化しています。

これまで書いてきた「それ以上の何か」と予想されること、「中国経済の崩壊」、「EUの崩壊」、「ドイツ銀行危機」、「原油安ショック」、「新興国ショック」など、思いつくことはいくつかもありますが、そのどれもが、そんなこと起こらないでしょう、とは言えない状況になっています。

何が起きても不思議ではない、今はそんな状況かもしません。

なぜなら、米国は本気で中国を潰しに行くからです。

それを覚悟した上で強気になれるなら、買っていいと思います。しかし、私はその覚悟はもてません。だから買いませんし、例え上に行ったとしても、後悔はありません。

しかし、米中対立は出来レースであり中間選挙までに収束する、こんな見方に誘われて買ってしまっては、必ず後悔する時がやって来るでしょう。

半面、昨今のマーケットにおけるグレート・ローテーションは強烈で、空売りもお勧めできません。残念ながら、やはり今は、様子見しか手がないように私は思いますが、いかがでしょうか。