気が付くと相場はとてもおとなしい動きとなっていますね。米中貿易協議の進展期待がその理由のようです。強硬派のボルトン補佐官の解任がトランプの対中姿勢の融和を生むのでは?と言う声もあるようです。

でもね、これは関係ありません。トランプ政権の対中戦略にとって、ボルトンは邪魔だから解任されただけです。

ボルトンが解任され、米朝関係、米イラン、米露関係は改善する可能性があります。ただ、米中対立は先鋭化するのです。

なぜなら、トランプ政権の根幹がまさにそれで、関係改善はそのための手段だからです。そして、対立軸の中でもハイテク領域での勝利は至上命題、決定的な意味を持つのです。

本当にアメリカ有利なのか

先日ファーウェイが、google抜きのスマホを発表しましたね。アメリカの制裁を受けた彼らは、そうならざるを得ませんでした。これをもって日本のメディアはファーウェイの早々の敗北を予測したようなのですが・・。

ファーウェイ新型スマホで明らかになった「脱アメリカ戦略」の本気度

先日、近未来のアメリカと中国の「ハイテクのカーテン」(米中分断)を予測するような発表があった。米中を代表するスマートフォンの秋の新作発表会である。

(中略)

この日のファーウェイの発表を受けて、日米欧のメディアは、Googleの機能を外した(外された)ことによって、「ファーウェイの勢いは止まるだろう」と、辛辣な報道が目立った。

(中略)

一方、中国メディアの報道は、「これまでの10年はアップルの時代だったが、これからの10年はファーウェイの時代である」といった肯定的な記事が多い。その根拠は、来たる5G時代により対応しているのはファーウェイであること、世界のスマホ市場でアップルは右肩下がりになっているがファーウェイは右肩上がりになっていることなどだ。

現代ビジネス

さて、こちらの記事を読んで、皆様は日本と中国のメディアのどちらに同意されるでしょうか? 私は不本意ながら、中国メディアの見方に同調せざるを得ない・・。論理的な根拠と言うよりは感覚ですね。

筆者の方も私と同じように感じられているようですが、少なくとも日本のメディアが言うようには簡単には行かないでしょう。

感覚以外の根拠を示すならば、それはアメリカ側の行動です。googleの提供を止めるだけで勝てるならば、彼らはそれしかしないはずです。しかし、実際はそうではありません。

だからEUを破壊する

逆にアメリカ市場からは、ファーウェイは事実上、締め出された格好だ。そんな中で、「3つ目の巨大市場」であるEUこそが、アメリカとの雌雄を決する「主戦場」になると、ファーウェイは見込んでいるのである。

(中略)

EUは今年の年末までに、ファーウェイを5G通信網に取り込むかについて、EUとしての結論を出すとしている。だが、EU各国の首脳や関係者の発言からは、「安くて高性能のファーウェイ製品を使いたい」というのがホンネのように見える。

「ファーウェイは危険だから使うな!」アメリカは世界各国に圧力をかけたものの結果は芳しくないようです。巨大市場のEUは親中で、日本のようにアメリカの言うことを無条件に聞き入れることはありません。

だから、トランプ政権はEU破壊戦略を取っているのです。これはテレビメディアなどでは、ほとんど報道されることはありませんが、事実として間違いありません。

敵が多すぎるトランプ政権

ピーター・ナバロ補佐官を中心としたトランプ政権の対中戦略は、非常に合理的だとは思いますが、何より悪いのは彼らには敵が多すぎることです。

先日のサウジアラビアの石油施設への攻撃ですが、これもトランプ政権の戦略の足かせとなっているようです。

トランプを嘲笑うサウジ石油施設空爆の黒幕は本当にイランなのか

9月17日から国連総会が開かれる。トランプは、これにあわせてロウハニ大統領と首脳会談し、和解への一歩を踏み出そうとしていた。ところが、14日のサウジ攻撃ですべてがぶち壊しになった。イランとの和解を願っていたトランプも、強い姿勢を見せる必要に迫られた。

まぐまぐニュース

トランプ氏は一貫性がないとよく言われますよね? でも、私に言わせれば全くそんなことはないです。彼がやろうとしているのは、「中国に勝つためのこと」、ただそれだけなのです。

なぜ彼が、イランやロシアと積極的に和解しようとするのかと言ったら、端的に言うと余裕がないからです。すべてを敵に回していたら、勝てないからです。

でも、現実にはこのように邪魔され、一向に和解させてもらえない。さて、実際にこの事件の黒幕は誰なんでしょう? 記事に答えは書いてありませんが、ボルトンを支援していたとみられる旧ネオコン勢力と考えるのが、妥当なところでしょう。

嘘が多すぎるアメリカ

また、アメリカが嘘つきであることが世界中の人々に大々的にバレつつあることもアメリカが優位性を失う大きなリスクだと私は考えています。

今回の件もイランがやったとアメリカは断定したと言います。しかし・・

トランプには、イランと和解する準備があった
だが、今回のサウジ攻撃で、すべてがぶち壊しになった

なぜイランがこのようなことをするのか、普通に考えたら意味わかんないですね。

これは北野先生の言う通りですね。彼らの嘘は実に荒い。そして、イランの政府報道官はこんなことを言っていました。

イラン外務省報道官、「アメリカの最大限の圧力行使は、最大限の虚言に偏向」

ムーサヴィー報道官は15日日曜、「アメリカの政府関係者による無意味で盲目的な見解表明や疑惑の提示は、外交の枠組みでは理解不能であり、全く意味を成さない」とし、「国際関係においては、敵対行為ですら最低限の基準や論理的な枠組みがあるものだが、アメリカの政府関係者は、この最低限の基準すらわきまえていない」と語っています。

Parstoday

私は思わず「いいね!」をつけてしまいそうになりましたが、どうでしょうか・・? 「こんなに嘘ばかりついていたら、そのうち誰からも信用されなくなるよ」って親友のアメリカ君にアドバイスしたらいいですかね・・。

アメリカの嘘は「中国に勝たねばならない」という大義より前に、彼らに従う気が失せます。

日本人が思っているほど、もうアメリカは強くない

先日こんなニュースを目にしました。

英ケンブリッジ大などが米国と中国の政治的影響力について日本を含む23カ国で2~3月に世論調査を行ったところ、「米国がより強力なのが望ましい」ものの、20年後は「中国が米国を上回る」と予想する声が大半の国で優勢を占めた。

「米国の力が中国より強い方が望ましい」との回答は、中東3カ国と中国を除く19カ国で多数派となった。米国を選ぶ割合が特に高かったのが、ナイジェリア(73%)や日本(72%)だった。

中日新聞

日本のようにアメリカを愛している国はどうか分かりませんが、世界ではアメリカの強さは、もはや常識ではないようです。20年後には中国が上回る、日本人の7割が恐れるその未来は確実に近づいて来ているようです。

冒頭の日本メディアの予測はやはり甘すぎるのではないでしょうか。

「どうするんだ!」と言われたら、大半の日本人は「トランプがんばれ!」と必死に応援するしかありません。

最後に余談ですが、私の好きな会社の一つであるAMDの躍進のニュースがありました。

AMDがCPUでインテルを大逆転、シェア6割乗せ

長い年月にわたってインテルの後塵を拝していたAMDのCPUが、7月に入って大躍進している。全国の家電量販店・ECショップからPOSデータを集計した「BCNランキング」によると、週次販売数シェアでAMDは、7月第2週(8~14日)で67.4%を記録、5月第1週(6~12日)の36.8%に比べてほぼ倍増させた。直近の7月第4週(22~28日)では、60.2%とやや落ち着きを見せているものの、ライバルのインテルに20ポイント以上の大差をつけている。

(中略)

これまでインテルはCPU単体市場でも圧倒的なシェアを誇ってきた。それだけに今回、AMDが大きく逆転したのは大きな出来事だ。

BCN

長らくCPU界の巨人と言われ、市場を支配していたインテルが、新興のAMDにシェアで逆転を許したのです。それまでインテルは、覇権企業の政治力をふんだんに駆使、純粋な性能以外にもあらゆる手段を使ってAMDを封じ込めてきました。

しかし、2016年の12月に満を持して発表されたAMDの新CPU、「Ryzen」の圧倒的な性能の前に、とうとう陥落。ただ高いだけのインテル製CPUは「存在価値なし」と評されるまでになってしまいました。

私がこの例で何を言いたいかと言うと、「追い上げる勢力は殿様より強い!」と言うことです。それは世の常だと思うのです。

念のために書いておきますが、私は中国に勝ってほしいと思っているわけではありませんし、もちろん彼らも沢山の弱点を抱えているでしょう。ただそんな未来も心の片隅に置いておかなければいけない、と思っているだけなのです。