3月14日イギリス議会は、EU離脱の延期を申請する動議を可決しました。株式市場はこれを好感し、一段高、売り込まれていたポンドも9カ月振りの高値近辺になっています。

その前日にイギリス議会は、「合意なき離脱」を拒否する動議を可決していました。市場関係者の中には、「合意なき離脱」の可能性は、もうなくなったと書いている人もいました。

しかし、これに関して、当ブログでは、事態を甘く見過ぎていると警告を発しなければならないでしょう。今まで散々書いてきた通り、むしろ恐ろしい現実が、確実に差し迫って来ているようです。

離脱の延期は合意できるのか

先程も書いた通り、イギリスは離脱の延期をEUに申請することを決定しました。まず、一つの事実として、これが承認されるにはEU加盟国すべての承認が必要になるのですが、果たして、これは本当に承認されるのでしょうか? 

「そりゃあ、誰だって世界的な大混乱を生み出した張本人になるのは、真っ平だから結局承認するでしょう」

この楽観論は一見説得力があるように思えます。しかし、ここに落とし穴が潜んでいるのです。

EU、英の離脱延期安易に認めず 長期延長論も

延長には混迷打開の明確な道筋が必要として、EUは安易に認めないとの構えを強めており、離脱戦略の再考を英国に迫る可能性もある。強硬姿勢が「合意なき離脱」を招く可能性は否めず、難しい議論となりそうだ。

産経新聞

EUが承認しそうな延期は、あくまで一年以上の長期です。EUからすると、あわよくば「このまま離脱がなくなってしまえ」と思っているはずなので、これは当然ですね。

しかし、イギリス側が求めているのは、3カ月のごく短期の延期なのです。しかも、大差で否決された政府案の可決が前提という訳の分からない内容です。ご存知の通り、政府案は2度大差で否決されていますので、20日に実施されると言われている3回目の採決でも否決の可能性がとても高いです。

その場合でも、イギリスは3カ月の延期を申請すると言われていますが、これに対してEU側は「意味が分からん!」と言っているのです。

そりゃあ、そうですよね。私にも全く分かりませんし、私がEU高官ならキレますよ。「おまえらは地獄行き」、トゥスクEU大統領は、そのいら立ちをこう表現しましたが、気持ちは分かります。

「2年半で何もできなかったのに、今更3カ月延期して何が出来るんだ」

というEUの言い分は至極真っ当です。じゃあ、イギリス側が長期の延期を申請する可能性はあるかと言うと、それもなさそうなのです。

英EU離脱の長期延期は「壊滅的」=北アイルランドDUP議員

DUPのギャビン・ロビンソン議員はBBCラジオに対し、「合意が得られる見通しが立たないまま長期にわたり離脱が延期され、北アイルランドも欧州議会選に参加を余儀なくされれば、2016年の国民投票で離脱に賛成した国民にとり壊滅的な事態となる」と述べた。

ロイター

民主主義の原則に背くことになる、と言う極めて立派な大義名分が、そこにそびえたっているのです。

こうしてみてきますと、あれ? これって、「合意なき離脱」を避ける道ってあんまり見通せなくない? ええ、そうなんすよ、と言うのが当ブログの見解です。

誰も望まず、図らず、偶発的に「合意なき離脱」に至る

それが当ブログの昨年8月からの予測だったのですが、それに近付いているようにしか私には思えないのです。

「合意なき離脱」でどうなるのか

さて、では「合意なき離脱」に至った場合、どうなるのかを、見ていきましょう。

混迷深める英国のEU離脱 「リーマン級」打撃に現実味…日本も政策総動員で備えを

筆者は、かつての本コラムで、英国のEU離脱は、世界経済にリーマン・ショック級の影響を与える可能性があると書いている。その当時は「合意ある離脱」が前提であり、英国政府の予測ではGDPに与える悪影響は、3・6~6・0%であった。今は、「合意なき離脱」を覚悟せざるを得ない状態であり、そのインパクトは2倍程度だろう。であれば、まさに、リーマン・ショック級になるのは避けられない。

ZAKZAK by 夕刊フジ

こちらの筆者は、あの高橋洋一教授です。彼は危機を煽るようなことを言う人物ではないことは皆さんもご存知でしょう?

更に恐ろしい事態が

さて、これだけでも十分恐ろしいのですが、その先には更に私たちを震撼させる未来が待っているかもしれません。こちらの記事をご覧ください。

迫りくる巨大リスクに身構える

問題は、ドイツ銀行が保有するこのデリバティブ残高が、控えめに見ても空前の約5500兆円もあるということです。デリバティブ残高の5500兆円とはどれぐらいの大きさかといえば、ドイツの年間のGDPが約400兆円ですから、ドイツのGDPの約14倍の規模です。

(中略)

もし、イギリスが合意なき離脱となると、連鎖的にどこかの国・企業が破たんし、CDSを発動することになって、その結果ドイツ銀行の破たんにつながる可能性があるということです。
この結果、リーマンショック級あるいはそれ以上の混乱がおきる可能性があります。

マイナビニュース

どうです、これ? 「合意なき離脱」が起きると、CDS(社債や国債の信用リスクへの保険の役割を果たす金融商品)の支払い義務がドイツ銀行に発生する可能性が高く、元々危ないと言われていたドイツ銀行がつぶれる可能性があるのです。

「えー! いやいや、でも、流石にそんなことは起こさせないでしょ?」そう考えるのは普通だと思います。しかし、今回はそうもいかないかもしれません。なぜなら、この危機を起こすことに強い動機を抱えた超大国が存在するからです。

なぜこんなことが起こると言えるのか

それがアメリカです。なぜアメリカがドイツ銀行を潰しにかかるのかと言うと、米中覇権戦争に直結しているからです。

中国と蜜月なドイツ制裁に動くトランプ政権

フォルクス・ワーゲンの排気ガス不正問題は、ドイツ最大の工作機械メーカーであるボッシュも関わっている。そして、ボッシュのメインバンクもドイツ銀行であり、最大の取引先もこれまた中国なのだ。先に述べたように、アメリカが中国の工業発展を止めたければ、ここを狙い撃ちにすればいい。

『これからヤバイ米中貿易戦争』 渡邉哲也

30年後の覇権をかけた中国との経済戦争の勝利が至上命題のアメリカは、どんな手を使ってでも中国経済を崩壊に導くでしょう。

そのためには、ドイツが邪魔なのです。中国経済とドイツ経済は一蓮托生であり、今更の方向転換も容易ではありません。

【コラム】華為禁止迫る米国に欧州は冷ややか

米国のソンドランド駐欧州連合(EU)大使は華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)など中国メーカーの通信機器を欧州各国のネットワークで使用することを禁止するよう促した。1月末のブリュッセルでの会議で、「価格や品質についての決定ではない。悪役にあなたの国の通信システムをコントロールさせることを許すかどうかの決定だ」と迫った。

  だがドイツが同大使の助言を受け入れる公算は小さい。そして他のEU諸国は恐らく、欧州最大の通信機器市場が示すだろう先例に従うことになる。

ブルームバーグ

つまり、アメリカが中国経済、強いては中国共産党の息の根を止めようと考えた時、ドイツ、EUごとやらなければならないのです。

海外投資家の手口が示唆するもの

そして、もう一つの重大な事実は、海外投資家は昨年日本株に対し、「リーマン・ショック」を超える売りを出したと言うことです。そして、今年に入ってからも、彼らは先物を大量に買い越す一方、現物株を売り続けると言う不審な売買を続けています。

海外投資家は何かを知っている、それは世界的なインサイダーである可能性が極めて高いと私は確信しています。

やはり、2019年中に何かが起こるのです。

もし、こんなことが現実となったとしたら、人々はこう叫ぶでしょう。

「どうしてこんな愚かなことが起きたんだ! とても信じられない!」

しかし、実際これは、殺るか、殺られるかであり、本質的に金儲けの話ではありません。

何が起きても不思議ではありません。しかも、それは差し迫っている、私は今、そう強く感じているのです。