国際政治において、2019年はどんな年だったでしょう? 私がこう問われたならば、「保守的なグループ」が「軍産複合体」、「エスタブリッシュメント層」、「グローバリスト」との戦いに勝利を掴んだことが決定的になった年だったと答えるでしょう。

このことが私たちの未来に与える影響は大きく、いいことか悪いことかで考えれば、それは間違いなくいい方向だということになるでしょう。

あなたが30年後の支配者に中国を選ぶという場合を除いては。

「ディープステート」ってなに?

まずはこの記事をお読みいただければと思います。

米国、ディープステートとメディアが結託し戦争誘発…NYタイムズが認めて波紋

ディープステートについてはこれまで、「いかがわしい陰謀論の産物で、実際には存在しない」という見方をされてきた。ところが最近、米国の権威ある新聞ニューヨーク・タイムズがディープステートの存在をほとんど認める記事を掲載し、話題となっている。記事は10月23日付で、『トランプの「ディープステート」に対する戦争は不利な状況』というタイトル。ピーター・ベーカー記者ら5人の共同執筆となっている。

business JOurnal

「ディープステート」、国家に従わない官僚集団とは冒頭に書いた通り軍需産業と政府機関の複合体のことです。他にもトランプとの対立軸として言われる「エスタブリッシュメント層」「グローバリスト」は言葉の意味は違いますが、同じものを指すと考えていいでしょう。

いかがわしい陰謀論とされてきたとありますが、そんなことを言っているのは、そっち側であるメディアだけで、この話自体周知の事実で今更感のある話です。

ただ、やはり今回、そっち側である大手メディアが認めたという事実は大きいでしょう。

トランプ氏はロシアと友好関係を取り戻そうとした。これに対し情報機関や軍、国務省などのディープステートは猛反対した。トランプ氏はアフガニスタン駐留米軍を撤退させようとした。一方、ディープステートは強く抵抗した。トランプ氏はシリア内戦における米国の役割を過激派組織「イスラム国(IS)」の打倒に絞ろうとした。これに対しディープステートはアサド政権を転覆するよう主張した。

 いずれのケースもトランプ氏が軍の利用を抑制し、戦争のリスクを最小限に抑えようとしたのに対し、ディープステートはむしろ戦争を誘発・拡大させようとしている。

このような暴露がされること自体、トランプがこの戦いに勝利したことを物語っています。

アフガニスタン戦争の大儀はでっち上げ

他に軍産複合体が敗れた証拠となりそうなニュースが出てきています。

2001年から続き、「米国史上最長の戦争」と言われるアフガニスタンでの戦闘をめぐり、米政府内の内部文書が明らかになった。文書では、政府高官らが戦況の厳しさを赤裸々に認めており、「米政府が対外的にウソをつき続けていた証拠だ」という声も出ている。

朝日新聞

アフガニスタン戦争は明らかな失敗だったのに、政府はうまく行っているように見せかけていた、こんなことも暴露され始めています。これも情報源が大手メディアということが重要でしょう。

さらに気になるのは、こちらです。

両政権でアフガニスタン担当の特別代表を務めたジェームズ・ドビンズ氏も「我々は暴力が絶えない国家に平和をもたらそうとして侵攻したが、アフガニスタンでは明らかに失敗した」と語っている。

ほう、平和のために一生懸命やったのに失敗してしまった、それならまだ情状酌量の余地もありそうなものですね。

でも、アフガニスタン戦争の開戦理由はそもそもアメリカのでっちあげと言うのも、実は有名な話です。客観的に見て、それはほとんど否定のしようがないことも多くの人が知っています。

このように、911以前のアメリカの対アフガン政策についてはいくつかの説が報じられているものの、いずれの説を採ったとしても、アメリカは911のテロ攻撃への「対策」や「報復」としてアフガニスタンを攻撃したのではなく、以前から大規模な攻撃をやるつもりだったところに、ちょうどよく911が起きたと考えるのが妥当だ、ということになる。

田中宇の国際ニュース解説

これはまさに私の言う「十万分の一の偶然作戦」、織田信長も開いた口が塞がらない「鳴かぬなら鳴いたことにしてしまえホトトギス作戦」です。

つまり、アフガニスタン戦争は間違いなくアメリカ政府による陰謀なのです。さすがにここまでは大手メディアも認めないでしょうが。しかし、トランプは大統領選挙初めの頃には実際にこれを公に語っていたらしいですね。

イラク戦争の大儀もでっち上げ

イラク戦争も同様にアメリカ政府によるでっち上げです。

政府によるメディアを利用した情報操作といえば、頭に浮かぶのは、2003年に始まったイラク戦争である。

 イラク戦争開戦の根拠とされたのは、イラクのフセイン政権が大量破壊兵器を保有しているという主張だった。 開戦に先立ち、当時ニューヨーク・タイムズのジュディス・ミラー記者は、この主張を肯定する多くの記事を執筆した。

(中略)

同日、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ライス大統領補佐官がそれぞれ違うテレビ番組に出演し「フセインが大量破壊兵器を保有しているのは間違いない」と強調。3人はそろって、「証拠」としてミラー記者が書いたニューヨーク・タイムズの記事に言及した。

(中略)

しかし今では周知の事実だが、大量破壊兵器は結局、発見されなかった。

business JOURnal

これもアフガニスタン戦争と全く同じ理屈ですよね。

以前から大規模な攻撃をやるつもりだったところに、ちょうどよく911が起き、大量破壊兵器の誤報がやってきた、ということになります。 もう面倒くさいので、この話には私が結論をつけたいと思います。

911からの終わらないアフガニスタン戦争、イラク戦争はアメリカ政府による陰謀です。最大の動機は巨大銀行家の石油利権とドル覇権を守ること、支配下の軍需産業を巻き込み、協力の見返りに利益を与えたのです。

なぜトランプは勝てたのか

ではどうして、トランプは巨大権利機構である「軍産複合体」に勝利できたのでしょうか。「正義は最後に勝つ」からでしょうか。もちろん違いますよね。これも何度も書いたのですが、それは彼の支援勢力がそれを上回る力を持っているからですよね。

それが冒頭に書いた「保守的なグループ」で、その主体はイスラエルの保守強硬派です。彼らはその巨大な力でトランプを大統領に選んだと考えられます。

トランプが諜報界の親トランプ勢力を育てたのでなく、諜報界の中にトランプを権力の座に就かせたかった勢力が先にいて、それがトランプ政権を生み出したと考えた方が自然だ。つまりトランプ当選以前に、米(英)諜報界の内部は、トランプのような存在を生み出したい勢力(親トランプ系)と敵視したい勢力(反トランプ系)とに分裂して暗闘していた可能性が高い。

田中宇の国際ニュース解説

この暗闘があの奇妙な大統領選挙の理由だったのですね。これを象徴的に表していたのが、当時のFBI長官のコミー氏の優柔不断な態度です。

彼は大統領選挙直前にヒラリー・クリントン候補のメール問題再捜査を発表し、結果的にトランプに加担しました。しかし、選挙後になると今度はトランプの敵として再登場、結局トランプに解任されてしまいました。

「どっちつかずの優柔不断なやつだな」

と私は訝しんで見ていたのですが、彼は板挟みにあってどうにもならなかったのですね。

元を正せば軍需産業は「保守的なグループ」の支配下の者たちだったと考えられます。つまり、彼らは飼い犬に手をかまれた状態といっていいのです。

どうやって勝ったのか

では、「保守的なグループ」はどのような方法で彼らに勝利したのでしょうか。確実な事は言えませんが、私が決定的な意味を持ったと思っているのが、こちら。

米当局は24日、米航空宇宙機器大手ボーイング(Boeing)が2度の墜落事故を起こした737MAX型機に関する文書を新たにまとめ、規制当局と米議会に提出したと明らかにした。議会関係者は文書について、安全性の問題に対する同社の対応に関して「非常に憂慮すべき事態を指摘しているようだ」と述べている。

 議会関係者がAFPに送ったメールによると、ボーイングは23日の夜遅くに文書を議会職員宛てに送付。米連邦航空局(FAA)も同じものとみられる文書を、デニス・マレンバーグ(Dennis Muilenburg)最高経営責任者(CEO)の辞任発表からわずか数時間後の23日午後に受け取ったと認めた。

AFP

それがボーイング737MAXに関する一連の事件ですね。ボーイングは軍産複合体の中核企業、ここが当局に抑え込まれてしまっては、彼らはすでに死に体でしょう。

もうちょっと、深読みしてみると、この事故ってソフトウェアの不具合で起こっていますよね。しかも「勝手に機首を下げてしまうバグ」と言うとんでもないものです。

まるでコンピューターウィルスですが、これを仕掛けるなんて事が出来そうな諜報機関がこの世に一つだけあるんですよね。もし、そうだった場合、全ての辻褄は合うのですが・・。

何のために勝ったのか

それでは最後に、なぜトランプはこんな壮絶な戦いに自らの身を置かなければならなかったのでしょうか。それは先程も書いた通り、かれは「保守的なグループ」に明確な使命を与えられて大統領に就任しているからです。

米軍、世界規模で再編を検討か

米紙ニューヨーク・タイムズは24日、国防総省が西アフリカに駐留する米軍の大幅な削減・撤退を検討していると報じた。トランプ政権が大国間競争の相手と位置付ける中国、ロシアに対抗するための措置で、世界規模での米軍再編の第1段階となる可能性があるとしている。

東京新聞

この記事のロシアは余計です。冒頭の記事にも書いてありますが、トランプは今回、ロシアとは関係を改善しようとしています。これは中国を孤立化するための作戦です。

トランプの行動の全ては、対中国軍事作戦なのです。

これが彼の言う「アメリカ・ファースト」の真意です。そして、今世界で起きていることのすべてが、それとその派生に過ぎないと言っていいのです。

アメリカと特別な関係であるイギリスのEU離脱も同じ動機からです。内部の政敵をほぼ制圧した「保守的なグループ」は、これから本当の敵であるEUと中国共産党を破壊するための作戦を本格化するでしょう。

それが2020年以降に間違いなく起こることです。