日経平均が予想以上に強い動きを見せていますね。日銀のETF買いが年間6兆円と言うことなんですから、これは相当なインパクトです。初期のアベノミクスで日経平均が倍になったときの買いが15兆円ですから日経平均が下がる余地が無くなるというのも、当然かもしれません。

しかし、私は今の日経平均の強い動きが7月の日銀の追加緩和以降に始まったとは考えておりません。記事にも下のfacebookページにも度々書いておりましたが、世界を見渡しても、日本株を含めて株式市場がかなり強いという状態は、前からすでにそこにあったのです。低金利すぎる国債から株式へ資金が流れてきているのではないかと書いてきました。日銀の追加緩和は異常な強さの主因ではないと思います。

その異常さの中でも、一番はアメリカ株です。当ブログではそれをずっと「変」と表現してきたのです。そして、その理由はFRBが利上げ出来ないからで、そうなればアメリカ株はバブル化すると3か月前から予想してきました。

 

FRBは居眠り?

好調だった米雇用統計の裏に隠れているものとは?FRBが堅持している超緩和的金利政策の功罪、今後の債券と株式市場の見通しについて解説!

昨日下でもご紹介した広瀬隆雄さんの記事です。広瀬さんはアメリカ経済の好調さとそれに対する金利が低すぎること、そしてさっさと利上げするべきだとおっしゃっています。

この危機感を、ジャネット・イエレンとFRBのメンバーが共有しているか? というと……あまり緊張感は伝わって来ません。

もっと言えば、FRBのやっていることは、居眠り運転に近いということです

そして、こうFRBを批判されています。広瀬さんのおっしゃることは確かにその通りだと思います。しかし、当ブログを続けて読んでいただいた方なら分かっていただけると思うのですが、FRBに緊張感がなく、やっていることは居眠り運転に近いと言うところは少し違っているように思います。

 

眠らされたFRB

「今のアメリカの経済状態では金利は低すぎる」

広瀬さんには失礼ながら、このことは当ブログでは半年も前からしつこいくらいにお伝えしてきたことです。そして、それを教えてくれたのは、なによりFRBのイエレン議長なのです。彼女のこの重大な言葉には続きがあります。

「マーケットの先回りで利上げしなければバブル化してしまう。そうなれば急激な利上げに動かざるを得なくなり、実体経済を失速させてしまうリスクが大きくなる」

2015年の12月にFRBが9年半ぶりの利上げに動いたとき、市場関係者の大半はこう言いました。

「利上げはまだ早い」

しかし、これこそがイエレンの言う先回りの利上げだったのです。市場関係者が「いまだ!」と言ってからでは遅いと彼女は主張しているわけです。

しかし、今は市場関係者にも「遅い!」と言われるほどですから、そこから見る限り、実際かなり遅すぎるということでしょう。これはいったいなぜなのか・・? 世界中の関係者が「まだ早いと」合唱する中、投資家の全幅の信頼をバックに非常に難度の高い先回りでの利上げの開始を見事に成功させたイエレンなのに・・。これは不思議です。

 

推論 トランプ阻止説

前回もお伝えしておりますが、この理由として、意外と説得力があるかなと思っているのが、「トランプ阻止」説です。これはどうにかトランプ大統領を阻止したいと考えている金融界がドル安に誘導しているという説です。利上げはドル高要因なので、FRBとは別の意志が存在するというのです。

以前には、原油安を抑えるための「ドル安の世界合意」と言うのが、各メディアで大きく言われましたが、今は原油はそれなりに落ち着いています。それに、注目すべきは今は「ドル安」と言うよりも「円高」です。ドルが各通貨に対してまんべんなくドル安になっていると言うよりは、極端に円高ドル安になっています。

トランプ氏は中国と日本を為替操作国として強く批判しています。実際に円に対してドル高が進めば、彼の思惑通り、支持基盤である製造業を支えるブルーカラー層の支持が彼に傾くことが想定されます。ここに、金融界が危機感を抱いても決して不思議ではありません。これは別に陰謀論と言う風に考えなくても、単に世界中の投資家が円安にには持っていきたくないと考えているだけ、でも成立するのかもしれません。

 

ドル円の不思議な値動き

これを裏付けるかは分かりませんが、年初からのドル円の動きはあまりに弱いです。リーマンショック並みに下がったきりで、ほとんど反発がありません。日経平均がこれだけ強い動きを続けても、101円の前半となっています。史上最高値を更新するアメリカ株の動向から考えても、これはさすがに弱すぎるのではないでしょうか。この相当な円高圧力は、購買力平価や貿易黒字だけで説明できるものなのでしょうか?

 

封じられた利上げ

広瀬さんの見解と違い、私はFRBは今の状態に相当な危機感を抱いていると推察しています。諦めに近い心境もあるかもしれません。だって、トランプが勝てばイエレンは首になってしまうかも知れないのですから、しょうがないでしょう。過去記事を読んで頂ければありがたいのですが、明らかにFRBの意志ではなく利上げを封じられた状態に近いと思います。議事録と声明文に大きな見解の乖離が生じたり、利上げをすべしと言うメンバーの見解をイエレン議長がちゃぶ台返しするなど不可思議な状態が続いています。

「今後数か月以内に利上げの可能性」

講演でこう告げたイエレンの言葉は彼女の本心の吐露だと私は確信に近い感覚を持っています。

 

恐るべき静かな株高

では、今後を考えてみます。利上げは12月まで出来ないとすると、株価はさらにバブル化すると単純に考えることが出来ます。しかし、一般的には株価に対しては、かなり悲観的な見解が多いです。アメリカの株価が史上最高値を更新しても高揚感のようなものが全然なく、著名投資家は警告を鳴らすばかりです。これは何故なのでしょうか。

それは株価の動きそのもののせいではないでしょうか。一向に下がらない今の米株の動きは明らかに「変」なのです。だから、そんな異常に対しては、腕のある投資家ほどかえって慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。それは過去にはない異次元の動きだからです。「仕方ないからダウを買っておこう」実際、投資家はこんな気持ちで株を買っているかもしれません。

 

ドル円

対してドル円は11月までは対して上がれないと単純に予想できます。しかし、下がりすぎ水準からは大きく下がれもしない。遅すぎる利上げの理由が大統領選挙にあるならば、その後は一気に上昇する可能性があるかもしれません。そして、遅すぎる利上げは更なる利上げ要因となります。12月で果たして利上げは間に合うのでしょうか? 断続的な利上げが必要に? 私はそれでもイエレン先生ならばうまくやるだろうと思っています。

そして、もう一つここにドル高要因が加わるとすれば、日本のヘリマネ的政策です。黒田総裁が最後の核弾頭を躊躇なくぶっぱなしてしまう可能性も否定はできません。そして、最後にもしドル円反転の見通しのきっかけになる物があるとすれば、それは豪ドル円の反転ではないかと書いてきました。半年前に円高に転じた豪ドル円は米ドル円よりも先に反転するのではないか、と。

偶然かもわかりませんが、直近2年のチャートを重ねてみると、ここに来て下落がなだらかになりつつあった豪ドル円がとうとうチャート上で米ドルを突き抜け上昇に転じているようにも見えるのですが・・これはやはり幻なのでしょうか・・。

201608_豪ドル円ドル円

全てはアメリカ大統領選挙

どちらにしろ、全ての鍵は大統領選挙が握るのは間違いありません。今日「トランプ撤退か?」なんて記事が出ていましたが、そんなことが起これば反転は大きく早まる可能性があるでしょう。私はないと思っていますが、逆にトランプ大統領誕生となれば、ドル円の調整は更に長引くでしょう。しかし、それでも異常な円高ドル安はさすがにいったん終わりを告げると思っているのですが、どうでしょうか。

今回はちょっと過去記事のまとめのような感じになってしまいましたね。