5月4日の取引でNYダウは、332ドル高となり、米中通商協議への懸念から下げたところから、700ドル近くも反発しました。24,000ドルを下回ると、すかさず買いが入ってくる印象です。日本株の方も、CME日経平均先物は、22,450円となっており、一時は2万円台前半をつけたことから察するに、株式市場は悪材料を大部分織り込んだ、と考えることに特段の違和感はないように思えます。
となると、当然、今後上へ向かうと見ていいようにも思えるのですが、残念ながら、当ブログは依然、弱気を改善出来ておりません。と言いますのも、昨今の相場は、あまりに「政治リスクが高すぎる」と言う一言に尽きるからです。
「政治は経済を超える」、こんな言葉があるそうなのですが、今がまさにそのような時ではないでしょうか。
株式アナリストは事態の深刻さを理解していない
3月23日に日経平均株価は一時的に、20,500円台まで売られましたが、その理由となったのが、中国への米通商法301条の適用の表明でした。発表があると事前に知れ渡っていたのに、いざ表明されてから暴落すると言う奇妙さでしたが、この日を底に株式市場は反発しました。
私も短期的にさすがにやりすぎだろうとは思いましたが、現在の水準まで戻ってくとは予想していませんでした。冒頭に書いたとおり、このような動きを見る分に、通常ならば、この悪材料はすでに織り込まれた、と見るべきなのは、分かります。しかし、今回はそうは行かないと私は睨んでいます。
と言いますのは、経済アナリストの多くは、この通商問題に関して、トランプ政権の中間選挙対策だという見方を示しているからです。これが、市場関係者の捉え方の代表だとすると危険だ、と思わざるを得ません。素人の私が偉そうに言うのもなんですが、この見方は間違っています。
私では説得力に欠けるでしょうから、参考記事を載せておきます。
オピニオン:「トランプ保護主義」は中間選挙後に先鋭化か=安井明彦氏
米中貿易摩擦についても、トランプ大統領の中間選挙対策と考えるのは本質を見誤っている。
中国は、経済面では1970―90年代の日本の再来であると同時に、安全保障面では冷戦時代のソ連の再来だ。こうした認識は、米政権だけでなく、米議会にも浸透しており、中間選挙に前後して変わるようなものではない。言い換えれば、米国の余裕喪失と中国の台頭は、トランプ大統領であろうがなかろうが、進行していた事態だ
~ ロイター ~
そう、これは米ソ冷戦に次ぐ、安全保障上の深刻な事態なのです。投資家はまず、このことを真剣に受け止める必要があります。
貿易摩擦の解消に向け、北京で2日間にわたって行われた米中通商協議は4日、互いが大幅な譲歩を要求して譲らず、大きな成果を上げられないまま物別れに終わった。問題決着まで、米中両国がお互いに数百億ドル規模の輸出品に関税を課す可能性が高まった
~ THE WALL STREET JOURNAL ~
ですから、当然、こうなります。「お互いに経済合理性を無視した結論に至るはずがない」、もし、こんな幻想を抱いているならば、それは早々にあっさりと崩れさることになるでしょう。
トランプ政権のもう一つの顔
株式市場の大きな悪材料になりうるもう一つの事項は、トランプ政権には対ドイツ(EU)戦略という側面があるという点です。昨年から、当ブログでは度々そのことをお伝えしてきましたが、専門家でそのことを指摘している方を見たことがありません。しかし、この記事を読む限り、やはりそれはあっていたのではないか、と思われます。
コラム:揺らぐドイツ繁栄の方程式、景気後退サイン点灯か=田中理氏
米国政府は今後も対米黒字削減に向けてEU、中でもドイツに対する圧力を強めていくことが予想され、輸入制限が発動すればEU側も報復措置で対抗する構えを示唆している
~ ロイター ~
これも大きな不安材料だと言えるでしょう。
日本の特殊懸念材料
そして、更に私には日本特有の結構な材料が潜んでいる、と睨んでいることがあります。
私は前回の記事の中で、こう書きました。日本には今後ある試練が訪れるでしょう、と。これは日本人全員にということですが、投資家にとっては、それ以上かもしれません。
私の危惧をそのまま表してくれている記事を見つけたので、ご紹介です。
~ zakzak ~
「今、韓国では金正恩が大人気だ」ってほんとかよ! と言う突込みはさておき、これを週刊誌記事として馬鹿にしてはいけません。筆者の方は著作の評判も素晴らしい一流の方。注目すべきは後半部分です。
「統一朝鮮」は、日本を「民族にとって共通の敵」とすることで結びつきを強め、かつてない反日攻勢を展開するだろう
統一朝鮮では「一国二制度」を経て、やがて大統領選を実施する計画だが、北のほとんどが金正恩を支持し、南の何割かが金正恩に投票すれば、金正恩大統領が誕生し、核のボタンを握ることになる
日本人の多くは米朝戦争が「起こらなかった」後のことを考えていない。しかし、日本を待ち受けているのは、悪夢のようなシナリオであることを今から覚悟し、来る時に備えておくべきだ
さて、この悪夢のようなシナリオ、奇しくも当ブログが去年から再三伝えてきた内容と酷似していますね。
米朝戦争なんて、アメリカが作り出したフィクションだ、一貫してそう主張してきました。未だに交渉決裂で戦争だ、なんておっしゃっている方がいますが、前主席補佐官のバノンさんも言っていた通り、そんなことはさっさと「忘れていい」のです。
本当に心配すべきは、筆者の呉さんがおっしゃるこの「悪夢のようなシナリオ」です。いったいなんだと思います? その推理は意外なほど簡単だと個人的には思っています。それは、なぜか。当ブログには、答えを導き出せる仮説があるからです。
「全てのシナリオライターは米国である」
私の中ではこうでない、と考えないことは、もはや不可能な状況になっています。当ブログはこれを「十万分の一の偶然作戦」と呼んでいます。『十万分の一の偶然』とは、松本清張の小説です。非常に面白いですよ。
どういうことかと言いますと、アメリカに有利な十万分の一の?偶然が次々と起こる、ということです。そのまんまですね(笑)。彼らが、歴史上そのような戦略を多用していることは、ちょっと勉強すればすぐに分かることです。
つい最近でも、イラク戦争とかね・・。
そして、最も重大な事実は、この「悪夢のようなシナリオ」、長期的には、日本に対してではなく、中国にとって最もそうだ、と言える点なのです。
原因と結果を逆に考える
ですから、予測したければ、原因と結果を逆に考えればいいのです。日本に求められている結果は何か、前回の記事で指摘した通り、それは「核の持ち込み」だと私は思います。これだけで、その原因、「悪夢のシナリオ」の理由がほとんど分かってしまうでしょう? では、もっと具体的に推理してみましょう。
日朝が戦争になることはありません。なぜなら、米国のターゲットはあくまで中国であり、日朝は両方とも大事な同盟国だからです。お互いを傷つけあうのは得策ではありません。となると金正恩新統一大統領に与えられた任務は、日本に対する「脅し」だということです。
となると、私の中では、もう答えはあれ、しか思い浮かびませんけどね。
まとめ
とりとめのない話となりましたが、強引にまとめますと、やはり今は「株を買える時ではない!」ということかと思います。グレートローテーションは強烈で、あれだけの悪材料を消化し、今の水準にある株式市場は、やはり相当強いのだなと思えます。しかし、それ以上に、今は政治リスクが強烈すぎます。
しかも、これまでで一巡したとは到底言えず、これから更なる事態に発展していく可能性が十二分に想像できます。例え、私の話が信じられなかったとしても、「中間選挙対策だから貿易戦争がそのうち引っ込む」なんて、意味不明すぎる解説を信じてはいけません。
目の前に迫った安全保障の脅威は本物であり、今は、株価チャートを眺めて、先行きを占っている場合ではないのです。少なくとも、あなたが長期投資家であるならば。
日本を待ち受けているのは、悪夢のようなシナリオであることを今から覚悟し、来る時に備えておくべきだ
呉さんのこの言葉は、今後、投資家にとって、非常に重大な示唆となることでしょう。最後に題名にした買える時はいつなのか、という答えなのですが、不本意ながら、「当面は難しい」と言う答えしか今は見いだせない、残念な状況と言うしかないのです・・。