今年一度も感じられなかった強さ

日本株が突如として買われ始めました。先日のドーハ会議での産油国の増産凍結の話し合いが決裂に終わり、そして非常に残念な九州での地震のこともあり、600円超の下落となった日経平均株価ですが、本日は一転して598円高となり、一日でそのほとんどを取り戻してしまいました。しかも、現在の夜間でも200円以上高くなっており、これは今年に入ってから、世界のマーケットと比べて、弱弱しいにも程があった日本株に対しては感じることのなかった強さとなっています。

公的年金の買いが入っているとも言われておりますが、それだけでここまでの強さを発揮できるとも思えず、やはり外国人投資家が姿勢を変化させてきたと考える方が自然でしょう。事実、先週の売買動向で今年初めて、彼らが買い越しに転じてきたそうです。

このような、急激な変化に驚いた方も多いのではないでしょうか。私もその一人ですが、何せ、今年に入ってからの日経平均株価の世界のマーケットでの一人負け具合は酷く、さらなる下落を予想する声の説得力が非常に高くなっていたのです。

そんな中、日本株だけ下落は「アベノミクス相場」のいつものこと?

こんな記事を書かせていただいたのですが、要約しますと、日本株だけ世界のマーケットから置き去りにされるのは、今年だけではなく実は毎度のことで、日本株はいつも世界の株高局面の一服前に急速に買われてきたと言う事実がある、と言うことになります。

今回も、ダウが18,000ドルとなり、史上最高値更新間近で、そろそろ株高も一服しそうな気配になってきました。そんな中、突如始まった日本株の理由なき暴騰は、そのいつもの動きがまた始まってきたとも感じられるのですが、どうでしょうか?

 

「いつも」なら最低でも直近安値から25%程度の上昇

nikkei225-NYDow2

こちらの参考画像ですが、日経225とNYダウのチャートを重ねた物です。丸で囲った部分がそんな動きに当たりますが、アベノミクス開始前の株価が長期低迷していた民主党政権時代にさえそれは見られ、少なくとも25パーセント程度の急な上昇が起こっています。

そして、もっとも大きいのはアベノミクスの開始によるもので、その上昇率は、85パーセントにもなりますが、それも世界的な株高の中、日本株だけが取り残され、NYダウとのかい離が異常なほど開く中で起こったことでした。

 

日経平均の今年の高値予想は1万8千円程度が”常識”だが・・

色々な専門家の方のご意見を伺ってみると、参院選に向け高値が期待できるものの、今後の日経平均株価の高値予想は、1万8千円程度と言うものが多いようで、それが相場関係者の現在の常識的な考えとも言えそうです。しかし、もし、過去十年の”そんな”動きが、今回も同じように起こるなら、直近の安値から最低でも25パーセント程度は上昇するのが普通、と言うことになりそうです。

それを今回に当てはめると、直近安値の15,500円から25パーセント上昇として、19,400円程度となります。それは最低でも、と言うことです。もし、18,000円程度までの上昇にとどまるならば、それはむしろかなり異常であるとも言えそうです。

 

全てはドル円次第

しかし、なぜ、過去十年の間にそんな動きが頻発したのでしょうか? それはやはりドル円の動きが大きくカギを握っていそうです。ドル安政策をとるアメリカのドル安が、ダウの上昇ともに一休憩し、それにつれ円高が一服、反動で円安に動いた局面で日本株が買われているということです。

NYダウの上昇は、世界のマーケットの上昇につながる可能性があるものです。とすれば、円高によりいつも世界から日本株だけが取り残される理由と言うのも説明がつくのではないでしょうか。そして、ダウの上昇の一服で抜けた資金の一部がおこぼれ的に日本株に向かう形になっていた可能性もあるのではないでしょうか。

今回も、世界的なドル安への誘導により、世界のマーケットは安定に向かいました。まさに今までと同様の形と言えるかもしれません。

 

「いつもの違い」は政策

そんな過去十年の”日本株のいつもの動き”の最低は25パーセント、最高で85パーセント、その違いを生んだものは何でしょうか。それはやはり、政策ではないでしょうか。最低だった25%は民主党政権時代に政策への期待が皆無の中で、そして、最高の85%はアベノミクスの開始による期待が最高潮の中での出来事でした。

では、今回はどうでしょう? 消費増税に関して、伊勢志摩サミット前に出されると言う財政政策、そして日銀の金融政策決定会合、それはこれらの政策が投資家の期待を上回るかどうかで、その上昇率は決まってくると言うことでしょう。前回、アベノミクスは失敗ではないか、という記事を書きましたが、例え失敗であったとしても、25%の上昇、19,400円がむしろ普通、と言うことです。

 

いつもが続くのか・・、そしてその先の注意すべき点

もちろん、過去十年で日本株に特徴的だった「そんないつものそんな動き」が、専門家の方々の常識に反してこれから起こるのか? それともやっぱり、日本株は今まで以上にダメで、今までになかった程度の上昇で終わり、下落に向かうのか? それはどっちか分かりませんが、これからの相場をそんな風に見てみるのも、一つ面白いのではないでしょうか。

そして、最後に一つ注意すべきは、世界のマーケットの上昇は、日本株の暴騰を最後に、日本株の暴落をスタートに、調整局面入りしているのもいつものこと、と言うことかもしれませんね。