世界的な株高から取り残される日本株

日本株の動きが冴えません。年初からの世界的な株価の暴落の主因と思われる産油国の売りが収まり、NYダウは年初来高値を更新、史上最高値に再び迫るほどに好調なのに、日本株は年末の高値から2,000円も安いままです。

「アベノミクスはもう崩壊した」

「外国人投資家は失望している」

「円高が加速し、日本株は暴落する」

そんな声も多く聞こえてくるようになりました。

GPIFが期末の成績を上げるために大幅な買い越しを続けても、一向にさえない動きを続ける日本株に流石に私も不安になってしまいます。

日本株がここまでさえない理由は何でしょうか。これは非常に分かりやすく、円高、ドル安が進んでいるからです。ドル円は普通に見ていたら、まったく上がりそうもありません・・。そんな悲観の中、日本株に関する、ある一つ事実に気が付いたのです。もしかすると、アベノミクス相場においては、世界の株高から取り残されることは、むしろいつものこと、だったかもしれません。

リスクオンのドル安

まず、「ドル」に関して、ロイターに気になる記事が出ていたので、ご紹介です。

焦点:ドル高是正で「G20協調」の思惑、市場混乱の収束で増幅

先日のG20で各国当局がドル安に誘導することで、秘密裏に合意していたと言うのです。真偽のほどは定かではないのですが、確かにG20後、各国通貨が申し合わせたようにドルに対して上昇する動きになっているようです。

円も例外ではなく、日経平均株価が14,800円台まで売り込まれた2月の11日の水準の110円台の高値を、つい先日更新するほどの円高となりました。

しかし、そんな中、NYダウは騰勢を強め、高値を更新する動きになっています。つまり、今回はリスクオフの円高ではなく、「リスクオンのドル安」と言うわけです。

日本株はその影響でまったく世界的な株高についていけず、完全に取り残されています。もし、世界の流れが恒久的に今までの「リスクオンのドル高」から「リスクオンのドル安」に転換してしまっていたとしたら、日本株の上昇は今後、あきらめざるを得ないと言えるでしょう。

昨年のドラギと黒田の失態の理由

確かに、直近のドル高に対するけん制発言が、アメリカ当局から多く聞かれるようになっていましたし、FRBのイエレン議長からも、そのような発言がついに飛び出しました。そして、ロイターの記事です。

このような事実をまとめて考えると、昨年、日銀の黒田総裁が「125円以上の円安にはなりそうにない」と発言し、円安と株高を自ら止めてしまった意味と、昨年末のECBの金融緩和が市場の期待に届かず、暴落のきっかけとなった理由が、やはりつながって来るのではないでしょうか。

あくまで推測に過ぎませんが、全ては「ドル高」に対する配慮、もしくは米からの圧力だった可能性がある、と言えるのではないでしょうか。

 

当時の日本政府が120円以上の円安を恐れていたことは明白で、安倍首相の経済ブレーンの浜田内閣官房参与も、しきりに「120円以上の円安は必要ない」と発言していました。その理由の解説として、「中小企業が円安で苦しみ、選挙に影響するのを避けるため」というものが多く見られましたが、私は全く合点がいきませんでした。

なぜなら、円安=株高であり、円安を止めることは株高を阻止することでもあるからです。アベノミクスの根幹である「株高」を「中小企業への配慮」と言う理由で自ら止めるなんてことがあると思いますか?

 

それは中小企業へのではなく、アメリカへの配慮だった可能性がかなり高いと考えられるのではないでしょうか。ちなみに浜田参与はアメリカの利上げ開始後に「130円の円安は日本にプラス」と発言を覆しています。

 

FRBは本当はドル安を恐れている?

世界のリーダーのアメリカがドル安を本当に求め始めたのだとしたら、投資家はそれについていかざるを得ず、これまでの円安トレンドは完全に終焉し、これか ら怒涛の円高がやって来るでしょう。しかし、アメリカ経済は本当に「ドル安」を心底求めているのでしょうか? 私はそうは思えません。

なぜなら、ソースはあまり定かではないのですが、FRB議長のイエレン議長が以前に講演で、

「今はたまたまドル高がインフレを抑制しているが、ひとたびドル安に動けば、インフレは加速する恐れがある。FRBはその先回りで利上げをしないと、極端な利上げをしなければならなくなる」

とおっしゃっていたそうです。

確かにこの言葉通り、ドル安ととも、NYダウはあっという間に、史上最高値を再び更新しそうな勢いとなっています。

 

FRBはこれ以上の株高を望んでいない

以前、イエレン先生(当ブログでは尊敬を込めてこう呼んでいる)が、

「株は高すぎる」

と発言して、高騰する株式市場に愛の鉄槌をくらわしたことがありましたが、アメリカ株は再びそのような状況に近づきつつあります。アメリカ経済は基本的に好調であり、状況が少し好転すれば、溢れるマネーにより、このようにすぐに資産高が訪れます。

しかし、これはインフレの加速につながる可能性を表すものであり、FRBはこれを食い止めることが最大の使命なのです。通貨安はその誘因です。アメリカは、これから、円安、ユーロ安によって経済を立ち直らせようとしている、日本とEU圏とは全然状況が違います。FRBが望んだのは、あくまで「行き過ぎたドル高の是正」程度で「ドル安」ではないのではないでしょうか。

その証拠に、直近彼らは6月の利上げを匂わせ始めました。これは「ドル安牽制」とも取れますがどうでしょう?

 

結局、日本株はドル円次第、大勢は円高予想

取り残される日本株の行方ですが、その後の読みは専門家の間でも非常に難しいようです。鍵を握るのは「ドル円」の動きであることは間違いありませんが、ではその肝心のドル円はこの先どうなるのでしょうか。

過去の例を見ると、ドル円の年間の高値と安値の差は20円程度となることが多かったようです。もし、1月に日銀がマイナス金利を導入した時点でつけた123円が今年の高値だとするならば、今後、103円程度までは円高になると言うことになります。

しかし、もし、今月の111円割れで今年の安値をつけていたとすると、高値は130円を超えるのが普通、と言うことになります。

このどちらかを予想するならば、今は圧倒的に前者が多い、と言うことになるでしょう。

 

アベノミクスの終焉? それとも?

もし、大勢の予想通りに、105円を下回る大幅な円高になった場合、日本株の暴落は避けられず、「アベノミクス」の失敗の烙印は確実なものとなるでしょう。現在は、その岐路の重大な局面かもしれません。

 

参考になるか分かりませんが、冒頭に書いた日本株に関する気づいた一事実をご紹介します。NYダウと日経平均株価の10年くらいのチャートを比べて見ると分かりやすいのですが、「日本株はいつも世界的な株高の一服前の最終局面で、極端に急速に買われている」ということです。

 

アベノミクスは2012年11月から開始し、日経平均株価は半年で約倍になっていますが、それは2009年のリーマンショック後、米のQEによる世界的な株価の回復局面の一服前で、長い間日本株だけが極端に割安に放置された中、起こったことでした。その後、FRBがQEの終了を告げたことにより、所謂「バーナンキショック」が起こり、世界のマーケットは大きく下落します。

また、昨年の初め、日経平均株価が17,000円くらいから突如として暴騰をはじめ、21,000円までかけあがった局面も、米の利上げ開始を控えた中で、オイルマネーの流入による世界的な株高の最終局面で起こったことです。それは日銀が黒田バズーカ第二弾を放った時の上昇率を遥かに上回る物でした。そして、その後に、「VWショック」「原油安ショック」による、世界的なマーケットの大混乱につながり、今に至るのです。

 

また、その間の2014年の初頭にもそのような動きがありました。ドル円がしばらく安値、101円近辺で膠着を続け、いよいよ、下へ突き抜けようかと言うタイミングがありました。その際も、株価は日本だけが暴落状態。

「アベノミクスは終わった」

「ドルは100円を割れ、大幅に下落する」

「外国人はアベノミクスを見限った」

そんな声が多く聞かれていたのです。

で、結局、どうなったかと言うと、ご存知の通り、それは静かに急速に上へ進みだし、その後、125円までの円安波動へ繋がり、日経平均株価も21,000円の高値へ進んだのです。

つまり、アベノミクス相場では、世界の株高からはいったん取り残されるものの、最期には急速に買われる、ということはいつものことだった、と言うことが言えるのではないでしょうか。

nikkei225-NYDow

こちらは日経平均の10年チャートにNYダウの10年チャートを重ねた物ですが、日経は後から急速に駆け上がって、ダウに追いついた途端に下落しているような形状なのが、とても面白いですね。

 

アベノミクスの審判は近い

原油相場の落ち着きによる、世界的な株高もそろそろ最終局面に移りつつある、と言えると思います。としますと、日本株は今回もアベノミクス相場のいつも通り、結局最後に急速に買われる、と言うことが起こるのでしょか? それとも、今回はとうとう、そんなことは起こらずに、日本株だけが奈落の底へ下落の一途を辿るのか?

私は前者だと思っていますが、結果が見えるのは半年以内と言う状況が迫ってきたのではないでしょうか。どちらにしろ、アベノミクスの審判の時は近いことは間違いないんじゃないでしょうか!