さて、当ブログでは予てより、EUという組織は人間的な感情を無視した組織なので、いずれ必ず崩壊に向かうだろうという見解を述べさせて頂いておりました。しかし、当初、それは10年後とか、そのもっと先とか、という程度のお話として書いたつもりでした。少なくとも、ECBのドラギ総裁の任期中には、ユーロは無くならないだろうと。

しかし、それがなんと今年にもやってくる可能性がにわかに高まりつつある情勢なので、記事にしてみたいと思いました。そして、そのEUの解体に邁進しているのが、連日ニュースを騒がしているアメリカのトランプ大統領ではないか、という見解があるのですから、なかなか驚きではないでしょうか。

 

明らかな懸念を感じ始めたEU首脳

参考記事:トランプ政権閣僚による欧州PR訪問、対米懸念払しょくできず

トランプ氏は英国のEU離脱を賞賛した上で、他の加盟国による離脱が続くとの見方を示しており、米国が伝統的な欧州政策を放棄してEUの解体を積極的に促進するのではないかとの懸念がEU内では高まっている

~ Newsweek 日本版 ~

当ブログでは、トランプ氏が大統領選挙に当選した昨年末くらいから、下部のfacebookページなどでトランプ大統領の言動は、「ほとんどがドイツと中国を攻撃する内容になっている」とお伝えしてきました。そして、今年一発目の記事でトランプ大統領とは、アメリカの対ドイツ、その先の対中国家戦略なのではないか、という仮説を唱えさせていただきました。

当時はそのような見解を目にすることはまだほとんどなく、私としても慎重に書いたつもりなのですが、それから1カ月半もたった昨今、EUの首脳陣がその懸念を公に表明するまでの事態になってきています。

事実、EUのトゥスク大統領はEUへの脅威にトランプ政権を挙げています。

しかし、なぜトゥスク大統領はトランプ政権をEUの脅威と言っているのでしょうか。もちろん、トランプが「EUはアメリカの敵だ」と直接的に訴えているわけではありません。しかし、過去記事でもお伝えしています通り、トランプの移民に対する規制の政策や、これまでの言動の多くは欧州現政権の移民受け入れ政策に反対の意志をもっている、EU諸国の国民への強烈な鼓舞のメッセージになっているのです。

世界のリーダーたる世界一の大国アメリカで、トランプという右派思想持った人物が国民による選挙で大統領に選出されたという事実自体が、象徴的な出来事として、何より彼らの大いなる勇気となっているのです。

「アメリカファースト」、トランプはそう言いますが、報道を見る限り、その支持率は低く、思惑はあまり成功していないようです。ですが、それもそのはず、彼の言動、政策はむしろ、「アンチ現欧州リベラル政権、欧州国民ファースト」なのです。テレビ報道などでは、トランプを善悪論で語っていることが多いのですが、この辺の事情を全く理解していないと言えるでしょう。日本のテレビ報道はいくらなんでも呑気すぎます。

我々や欧州はきっとオバマさんの優しさに慣れてしまって、「アメリカは本当は怖い国だ」ということを忘れてしまっていたのかもしれませんね。

 

やはり最大ターゲットはドイツ

私はこの情勢から見て、今年の欧州選挙では現リベラル政権は軒並み敗退するとみています。実際、フランスでは、EU離脱を掲げる右派政権、国民戦線のルペン党首の支持率がトップになっていると報じられています。

私はこの辺は通過点で、アメリカの最大の思惑はドイツのメルケル首相の敗北にあると思っています。当ブログでは予てから「メルケルを追い込む風がある」とお伝えしてきたわけですが、それは2015年の夏にすでに始まっています。

反メルケル的な国際世論がロイターやブルームバーグなど、海外大手ニュースサイトから伝わるようになったのは、2015年7月のギリシャ事件以降でした。FRBの前議長のバーナンキさんが、「ドイツはユーロ安の恩恵を独り占めにしている!」と語るなど、明らかに風向きが変わったのを感じました。株で言うと、メルケル支持のトレンドが天井を打ち、明確に下落トレンドに変わったのです。

それまで、ドイツと言えば、反原発にいち早く動くなど、世界の模範的な国家として扱われていて、メルケル首相は鉄の女と呼ばれ、そのリーダーシップは圧倒的、国民の支持率も非常に高いとされていました。

それが、以来、支持率は急転直下、今度の選挙でも苦戦が強いられる展開になっています。メルケル危うしです。そして、そのメルケル没落のきっかけを作ったともいえる、ギリシャ問題ですが、その問題児のギリシャが巨大な債務を抱えていることを知りながら、最終的にユーロに滑り込むように加入させたのは、ゴールドマン・サックスだと言われています。

参考記事:そもそもなぜギリシャはユーロに加盟できたのか?

それがなぜユーロに加盟できたのであろうか? 実はそこには世界的な投資銀行であるゴールドマン・サックスの活躍があった。

ちなみに、チプラスという人物も非常に怪しく、当時、とても一人、一国の思惑で動いていたとは思えません。一人の人格と捉えた場合、彼の行動は普通には説明できません。

後、これはどうかわかりませんが、先にEU離脱を決めたイギリスですが、前首相のキャメロンは親中で、中国主導のアジアインフラ投資銀行に参加するな! とアメリカは強く要請していたそうなのですが、それを無視して結局参加しました。

その後、選挙で敗れたキャメロンは失脚し、新たに出てきたメイ首相は親トランプという・・。これは・・なんか変ですよね・・。

 

メルケルの敗北で、EUの崩壊は一気に現実味を帯びる

もし、2017年秋のドイツの総選挙でメルケルが敗北し、右派政権が誕生するとなると、もはやEUは風前の灯となることが想像されます。報道を見ている限り、今の時点でその可能性を否定することが難しくなってきています。もし仮に勝ったとしても、ほかの欧州政権が右派に代わっていたら、ドイツの弱体化は免れません。

 

EUの解体で予想されること

マーケット的にはこれは相応の混乱材料となることが当然の様に想定されます。そして、私は金融政策的にはユーロは上昇ではないか、と思って来たのですが、これは高いとか安いとかの次元ではなく、無くなっちゃうかもしれません。

だから、当ブログでは「メルケルさん、態度を改めなさい」と再三警告してきたではないですか。私のブログ読んでないんでしょうかね(笑)。

とは言え、EUの解体が実際に決まったとしても、巷で言われるリーマンショック級の下落につながるか、と言われるとそうはならない、と私は思っています。EUの崩壊というと、言葉のイメージ的にはやばい感じがしますが、実際ある日突然に、ガラガラと音を立てて崩れ始めるわけではありません。賢明な欧州各国は、きっと長い年月をかけて、混乱を最小限にすることを念頭に妥協点を探りながら慎重に進めるでしょう。

それにEUなんて、どう考えても不自然なおかしな組織です。それが元の自然な国家に戻るだけだと考えれば、なにも恐れるようなことではないのです。それよりも昨今のマーケットに起きてきているグレート・ローテーションの方が強烈で、EUの崩壊があっても、結局株は高くなる! と私は思っています。

しかし、ユーロに関しては、どうなるか全くわかりません。売りならいいような気もしますが、手出し無用としておいた方が無難ではないでしょうか。