4月14日、米財務省は、半期に一度の為替報告を発表しましたが、その内容に特別新しいものはなかったようです。しかし、相も変わらず日本は監視対象で、円安ドル高で株高を作り出したい安倍政権としては頭の痛い問題でしょう。これを織り込んでか、ドル円相場は108円半ばまで円高がすすみ、日経平均も年初来安値を更新してしまいました。

当ブログでは予てより、2017年のドル円の高値は135円! 日経平均は24,000円! などと予想させていただいておりました。そして、4月には120円ではないかと・・。その根拠は、トランプの経済政策ではなく、日米の金融政策のギャップでした。

トランプのマーケットに対する影響力は言うほどではなく、昨今の株高の主因はグレート・ローテーションだと。当ブログではこれを一貫して主張しており、正当性があった! と今でも思っているのですが、一部に於いて考えを改めました。というのも、世界を見渡しても、日本株は一番と言ってもいいほど、トランプラリーの様相が強いのではないか、と思い始めたのです。

アメリカはドル安を求めている

今回の為替報告に関するニュースを見ていると、トランプ政権はドル安志向である、という解説がなされています。確かにトランプ大統領は選挙前からドル高による弊害でアメリカの製造業が衰退しており、その是正を行うと度々発言していました。

また、これは共和党内でも共有されているようです。アメリカがドル安を志向する以上、大幅な円安ドル高が進む可能性は低い、と考えるのは普通と思います。

昨年のドル円が100円割れまで円高ドル安に進んだことは記憶に新しいですが、これは海外勢短期筋が史上空前の円買いに傾くなどした結果でした。比べて各通貨に対するドル安という側面では、あくまで調整というレベルで、それほどではないものでした。

 

円安ドル高の条件

私が今年、大幅な円安ドル高を予想した根拠は、金融政策のスタンスの差だと先程書きました。通貨安競争は終わりを告げ、やがて通貨高競争がはじまる、そう記させていただき、状況的にはこれは的確だろうと思っています。アメリカだけではなく、ECBも引き締めを匂わせ始め、EU離脱で大幅はポンド安になっているイングランド銀行も、利上げを示唆し始めています。

そんな中、日銀は依然、大規模すぎる金融緩和継続で、金利をゼロパーセントに固定するイールドカーブコントロールという政策を続けています。

このギャップから、ドル高とともに円売りが進むと予想していたのです。しかし、実際は違いました。米国債売りと連動し、ドル高はかなり進みましたが、円売りは思ったほど進展しなかったのです。去年の時点ですでにドル買いは行き過ぎ状態になっていましたから、調整があるのは必然でした。さらに、地政学リスクもあり、現在は円の独歩高という状況になっています。

なぜ円がこんなに買われるのか、という理由については、色々あり、ここでは特別な分析をしませんが、とにかく今は、金融政策という部分では円売りにはならないという事実があります。

アメリカがドル安を求めている、金融政策でも円売りにはならない、そう考えますと、今後ドル円が大幅に下がるかどうかはともかくとして、大幅に上昇する可能性はなさそうに思います。

しかし、その割には今年は円安ドル高を予想される方が多かったようですが、その根拠となっていたのが、アメリカの税制改革で、その目玉とも言えるのが、「国境税調整」です。

参考 コラム:トランプ氏の「国境税」と「国境調整」の違いは

国境税調整実現ならドル安は必要ない

オバマケアの代替法案が撤回され、一気にトランプ政策の実現性に不透明感が漂ってきました。法人税の減税や国境税を柱とする税制改革への期待から相場は大きく上昇、所謂トランプラリーと呼ばれるものです。

しかし、私は昨今の株高の主因は債券バブルの崩壊による、グレート・ローテショーンだとしつこく主張してきました。その証拠に、期待のそがれたNYダウは対してさがらないではないかと。

期待がまだ残っているからだ、そういう方もいますが、トランプラリーは完全終了したと思います。それに一番大きく呼応したのが、実は日本市場です。なぜかと言いますと、為替にドル高期待がなくなり、大きく円高ドル安に動いたからです。トランプの税制改革が実現されれば、経済に効くのかよく分かりませんが、はっきりとしていることは、強烈なドル高を招くということだからです。

カリスマ株式評論家の山本伸さんは、これを根拠にドル円140円との予想をされていました。ちなみに国境税という言葉を始めて伝えたのも山本先生らしいですよ。

トランプ政権の目的はアメリカ製造業の貿易不均衡の是正です。そのための手段としては、今はドル安を志向するしかないのです。しかし、もし仮に国境税調整が実現されれば、その必要性は全くなります。「日本は不当に通貨を・・」などとは二度と言わなくなるでしょう。

 

国境税調整は日本株の救世主?

国境税調整が導入されれば、大幅なドル高になる、そうなれば当然、日経平均株価も大きく上昇します。ですから、トランプ政権の税制改革の行く末を、アメリカ以上に日本の投資家は気にしなければならないようです。では、実際の実現性はどうなのでしょう?

これは正直分からない、と言わざるを得ません。最近は共和党議会とトランプ政権の内紛が取りざたされ、実現性は相当低く、可能性は残ってもかなり先送りされるというのが、、最近の見方のようです。

しかし、国境税調整は、そもそもトランプ政権の考えたものではなく、共和党の作ったもののようです。また、先程の参考のロイターの記事を読んでもらえば分かるのですが、元々トランプの主張していた「国境税」と共和党の「国境税調整」は違うようです。ここでも対立があったようですが、トランプのブレーンのスティーブ・バノンさんが解任され、トランプはここ最近は議会寄りになってきたようにも見えます。

もし、税制改革の実現に明るい兆しが見えるのであるならば、ドル円が今年大幅上昇する可能性はまだ残っているということになります。

逆にその可能性が閉ざされれば、大幅上昇の材料はまったくなくなってしまい、アメリカはドル高牽制を続けなければならない事態に追い込まれます。FRBが利上げの加速を示唆していることから、昨年のような大幅な円高という可能性は低いと思っていますが、アメリカがドル安志向を続ける以上はそのリスクも残ります。

以上のことから、今後の日本株は本土、アメリカ株以上に、トランプに運命を大きく左右されそうという奇妙な現実が広がっているということではないでしょうか。逆相関ならまだ分かるのですが、順相関でアメリカ以上という・・。トランプラリーの調整を唯一まともにしているのも、日本株です。そういう意味で日本は世界一素直なトランプ相場なのです。

ファースト・リテイリングの社長の柳井さんが、「国境税が施行されたらアメリカから撤退する」といってニュースになっていましたが、私達日本の投資家はむしろ、トランプがんばれと応援した方がいいのかもしれません(笑)。