コラム:フランス大統領選、真の勝者は「異端の経済政策」

~ ロイター ~

投資家にとって、今年の一大イベントとも言えるフランス大統領選挙が、とうとう今週末の4月23日に迫ってまいりました。この不透明感を織り込んでなのか、日経平均株価は、18,500さえ回復できない弱弱しい状態が続いています。世界を見ても、欧州株は強くて、ユーロは騰がらないというちぐはぐな動きが続いています。

いったい、投資家は現状をどう見ているのでしょうか。私は、欧州株やNYダウは参考にならないと思っています。なぜなら、昨今の世界の株式市場は、リスクオフ要因に非常に鈍感になってきており、昨年のイギリスのEU離脱を問う選挙間際でも、NY株は一向に下がらないという異様な状態だったからです。

今を推し量るのならば、まだそれほど鈍感になっていない日本株を、そしてユーロを参考にすべきではないかと私は思います。

さて、当ブログでは予てから、このフランス大統領選は要警戒、欧州の現政権は今年の選挙で敗れるのではないか、とお伝えしてきました。そして、その理由は、米国がEUの解体を推進しているからだ! と。なんだ単なる陰謀論か、そう思った方は少々甘いかもしれません。

なぜなら、EUの大統領が、「トランプ政権はEUの脅威だ」と実際に語っているからです。

 

世論調査

フランスでの最近の世論調査を見ていると、EU残留派である「中道のマクロン氏の圧勝」だと伝わっておりました。イギリスのEU離脱選挙やアメリカ大統領選挙で起こった「まさか!」があるので、世論調査は信用できない、などと言われるのですが、本当にそうでしょうか?

そもそも、イギリスの国民投票とアメリカ大統領選の世論調査では、直前まで拮抗していると伝えられていました。それを見た我々は、希望的観測で、「まさかEU離脱はないだろう」「まさかトランプは勝たないだろう」と思いこんでいたにすぎません。しかし、実際は違った。この二つのまさかはそういうまさかで、別に世論調査が大きく間違っていたわけではなく、圧倒的な有利が覆ったわけでもないのです。

そこから考えても、今回の「まさか」は起こりづらいだろう、私自身もそう思い始めていたのですが、不可思議なことにこの直前になって、投資家にとって再び不穏な情勢となりつつあることが一部で伝わってきています。

 

突如現れた急進左派のメランション氏

反EUの筆頭として以前より、伝えられていたのが、極右と言われるルペン氏です。ルペン氏は一時の勢いを失い、最初の選挙では勝つかもしれないが、決選投票では大差で敗れる、どこを見てもそのように伝えられていたと思います。

しかし、本当にここ最近になってですが、急進左派のメランション氏が急激に支持率を伸ばし始めているというのです。そして、この方はルペンに負けず劣らずの反EU、反NATO

フランス大統領選3位に急浮上、左翼党メランションの脅威

一方、メランションの忠実な支持層は、ほぼ彼の指示通りに動く。たとえ決選投票への進出を逃しても、自分の支持者をマクロンに投票させるか、ルペンに投票させないか、或いは何もしないかを、自由に操ることができる。その意味で、恐ろしい候補だ。

~ ニューズウィーク 日本版 ~

その結果、もし仮に26日でルペンとメランションが1、2位となった場合、決選投票を待たずして、反EUの政権が誕生することが決まってしまうということになります。

なぜ、 たった一か月前には名前すら目にしなかった人が、急激な支持率上昇により、EUにとっての脅威となっているのか? そのことだけでも異様な不可解さを感じます。

彼の支持率の高さはいったい、どこからきているのでしょうか。彼の人気の理由はその演説のうまさだと言われています。

メランションはあの男に似ている?

EUの緊縮策に反対、EU条件の再交渉、急進左派、はてどこかで聞いたような・・。2015年夏、世界の株式市場を震撼させたギリシャのチプラス首相、彼はどことなくそれに似ていないでしょうか。EUの緊縮財政に終止符を打つ! そんな格好いい公約を掲げて国民のヒーローとなったチプラスは見事に選挙で勝利します。

そして、首相となった彼は、ドイツのメルケルと全面対決します。結果は完全敗北。彼はドイツの要求を丸飲みするという裏切り行為に出たのです。人格を疑ってしまうような愚行ですが、この後に更におかしなことが起こりました。

「ドイツはEUの富を独り占め手にしている」、なぜかギリシャに同情する国際世論が叫ばれ、これをきっかけにEUのボスとも言えるメルケルの支持率が急落し始めたのです。その後に、VWの排ガス規制問題やドイツ銀行の問題、パリでのテロ事件などを受けて、彼女の支持率は下降の一途をたどります。そして、今年の選挙も安泰ではない、と言われるまでになってしまいました。

世界の模範とも言われたドイツ、そしてその中心で高い支持率を維持していたメルケル、この変わりようはいったいどういう訳でしょうか・・。メルケル凋落のきっかけを作ったとも言える、ギリシャのチプラス。メランションはどことなく彼に似ているような気がします。

 

なぜか、EU離脱をひた走るイギリスのメイ首相

一昨日、イギリスのメイ首相がEU離脱の信を問う総選挙を行うと発表しました。離脱に反対する野党側を抑える意図があるようなのですが、彼女はなぜ、鬼の形相でこんなにもEU離脱を急いでいるのでしょうか・・? そのモティベーションが全然わかりません。メイさんは親トランプです。そして、この記事にこう書いてあります。

トランプ政権は「EUの脅威」

トランプ「異例の招待」に英国民猛反発でエリザベス女王の戸惑い

ざっと、羅列してしまいましたが、なんだか流れが変だ、とは感じないでしょうか。私にはどう考えても不可解としか思えない大きなものを感じますが、いかがでしょうか。

マクロンが敗れたら株価はどうなる?

では実際、EU持続派のマクロンが敗れることになった場合、どうなるのでしょうか。その先行きの参考になるとすれば、それはやはり昨年のEU離脱選挙ではないでしょうか。この時、世界の株式市場は残留を織り込んで上昇に向かっていました。しかし、カウンターで離脱を食らい、相当のショック安状態になりました。日経平均の先物では、ストップ安、サーキットブレーカーが発動しました。世界の投資家は総悲観状態に陥りました。

しかし、同時にここでドル円と日経平均は大きな底値をつけたのです。ちなみに当ブログでは、その二週間後くらいにここが底である!とお伝えし、見事に当てることが出来ました。今年はすでに外れています(笑)。

今回、もしルペンやメランションが勝利した場合、イギリスの選挙時と同じような動きになるのではないか、と想定しています。そこまでいかないまでも、そのミニ版といった動きになるのではないでしょうか。そして、悲観状態が広がる中、株価は上昇に転じるのではないのか。

中道のマクロンが勝利した場合はきっと、急騰して19,000円を回復する場面があるのではないでしょうか。

以上、こんな記事を信じる人はあまりいないでしょうが(笑)、私は意外と真面目です。当ブログでは引き続き、ユーロには強い警戒が必要との見方を維持します。