今月24日のドイツ連邦議会選挙において、メルケル首相の勝利がほぼ確実視されています。このメルケル4選の意味するところをご存知でしたでしょうか。実はこれ、私たちにとって、非常に重要です。
今日これから、たったの10分間この記事を読んでいただくだけで、今世界の真ん中でいったい何が起きているのか? ということがばっちり分かっちゃいます。なぜトランプ政権は、世界中から批判を浴びても「アメリカ・ファースト」をごり押しし続けているの?とか、トランプさんとメルケルさんはなぜ仲が悪いの?とか、トランプさんはどうしてプーチンさんに優しいの?とか、なぜ、イギリスのメイ首相は中国を差し置いて真っ先に日本に来たの?とか。
はたまた、なぜ森友、加計学園で急落した安倍政権の支持率は急回復したのか? そして、最近では一番気になる、なぜ北朝鮮の挑発は過激になり、核開発は急に進歩したの? なんて、ことまで。実は、全く関係ないように見えるこれら、一本の線で全て繋がっているのです。
目次
トランプ政権は中国と戦うために作られた政権である
さて、メルケルさんの話に行く前に、今回のお話の大前提となるこちらからです。この単純明快で重大な事実、当ブロブを訪れている方にとっては既に常識なのですが、一般的にはそうじゃありませんね。今、初めて当ブログを訪れた方は、まずこれを理解することから始めなければなりません。
「トランプ大統領は貧乏人に支持されただけのおかしな奴」、そんな程度の認識しかなければ、それは直ちに改める必要があります。お前に言われても、という方は、こちらをご覧ください。
人事を見ても、トランプは、「対中強硬派」に重要なポストを与えている
このようにトランプは、「中国と対決するための政権をつくった」といえる
~ ダイヤモンドオンライン ~
筆者の北野幸伯さんは、非常に信頼のおける、その道一流のアナリストの方ですので、どうぞご安心ください。そして、この記事の中に冒頭で挙げた「トランプがプーチンに優しい理由」も書いてありますね。これであなたは、ほとんどの日本人が知らない国際政治上の重大な事実を、既に二つも知ったことになります。
メルケルの「どん底」はアメリカが作った
さて、今回の記事のメインのメルケルさんの話がやっと始まります。彼女の勝利は現在は盤石と見られていますが、2015年に結構まずい時があり、そこから見事に復活してきているのです。その詳しい記事はこちら。
~ ロイター ~
なぜ、そうなったかというと、難民問題ですよね。メルケルさんは、国境を開放して難民を無制限に受け入れる、なんておっしゃった。これに怒った国民からしっぺ返しを食らったんですね。これが表向きの理由で、もちろんそうなのですが、実はこの時期にドイツ、メルケルに対して強烈な圧力をかけている国がありました。それがアメリカです。
2015年のギリシャ危機の際、ギリシャに緊縮財政をせまるドイツに対し、FRB前議長のバーナンキさんは、「ドイツはやりすぎだ!」と世界中に吹聴しました。ドイツはEUの富を独り占めにし、問題の元凶だと・・。また、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題がありましたが、これを暴露したのもアメリカなのです。
そして、極めつけは11月に起きたパリのテロ事件です。これで難民積極受け入れ姿勢のメルケルさんは窮地に追い込まれたというわけです。まあ、このタイミングでこの事件が起きたというのは、十万分の一の偶然でしょう。
そして、2016年にはドイツ銀行問題が騒がれました。米司法省が1.4兆円という法外な和解金を要求したのです。
「死刑判決」を受けたドイツ銀行。1.4兆円では済まない絶望の訴訟リスト
これは「ドイツ銀行 対 米国金融当局」の問題から、「ドイツ政府 対 米国政府」の外交問題になるでしょう
~ MONEY VOICE ~
なんでアメリカはドイツに圧力をかけていたの?
ところで、なぜアメリカはメルケルいじめを行っていたのでしょうか。その理由は、こちらの記事に書いてあります。
中国が「アメリカの金融覇権」に本気で挑み始めた! 世界のルールを決めるのは誰か
~ 現代ビジネス ~
AIIB、アジアインフラ投資銀行の設立。そして、EU諸国の経済を重視した親中姿勢、これがアメリカの脅威になっていたのですね。そして、米中対立の非常にリアリスティックな理由もここに書いてありますね。
アメリカが超大国であり続けるための最後の砦が金融覇権なのである
AIIBの設立において、中国は、基軸通貨ドルに挑戦する姿勢を鮮明にしました。アメリカはこれを絶対に容認できないのです。米中対立の本質とは、アメリカを支配する資本家と中国共産党の戦いだ、ということが言えるのです。トランプさんはそのような方々の支援を受けて、そのために当選したと考えるのは自然なこととなるでしょう。実際、トランプ政権の要人は、世界的な投資銀行、ゴールドマン・サックスの出身者だらけです。
極論しますと、トランプ政権は南シナ海や、まして日本を守るために中国と戦っているのではありません。彼らはドルを守るための戦いに挑んでいるのです。ですから、アメリカは本気です。そんな大きな目的をもって作られたトランプ政権を、決して甘く見てはならないのです。
国際政治における経済の比重が高まる中、リベラルな理想を掲げる欧州諸国ですらその外交姿勢において「マネー・ベースド・アプローチ(お金本位主義)」を強めている
そのような中、米国は中国と欧州との強い経済関係を断つ必要がありました。そのためには、ドイツ帝国と言われるEUのボス、メルケルを倒す必要があった、と考えられるのです。
親中のキャメロンは倒された
キャメロン英政権は昨年、「特別な関係」にあるアメリカの反対を押し切っていち早くAIIBへの参加を表明するなど親中路線へ一気に傾いた
アメリカの反対を押し切って、AIIBにいち早く参加したキャメロン首相は、EU離脱選挙で失脚しました。そして、新たに出てきたのは、親トランプのメイ首相。う~ん、これはどうにもアメリカに都合の良すぎる展開になっていますね。まあ、ここに深く突っ込むのは止めにしますが、この情勢から当ブログでは、米英は同盟国であり、当然日本もそのうちである、と書いてきました。
すると、8月末、メイ首相は突然日本を訪れ、国家安全保障会議に参加し、日英首脳会談で、安全保障協力に関する共同宣言をまとめることとなったのです。
一般的にはこの事実、かなり意外なこととして伝えられていました。中国を差し置いて、なぜ日本に来たのかと。しかし、当ブログは3月の時点で米英日は同盟国であると伝えていました。これらはテレビニュースを見ていただけでは、全く分からないことであったかもしれません。
失敗に終わった保護主義戦略 今後のカギはロシアか
米大統領選におけるドナルド・トランプ氏の勝利は、いずれも「安定の擁護者」としてのメルケル氏の魅力を高める結果となった
結果的にメルケルを助けた形のトランプさん。では、オバマさんと違って、彼は反メルケルではないのでしょうか。いえ、違います。彼はオバマ以上です。実際、ブレーンと言われ、先日解任された首席戦略官だったバノンさんは、EUに懐疑的な姿勢を見せていましたし、移民規制の政策の実現を目指していました。
EUのトゥスク大統領は、トランプ政権を脅威だとみなし、パリ協定を離脱したアメリカを見て、メルケルさんは「米英はもう頼りにならない」とまで言ってのけました。
欧州で巻き起こるはずだった”保護主義ブーム”はその担い手である、トランプさんが図らずもつぶしてしまう、という皮肉な結果となったのです。どうしてでしょうか。これは私の個人的な見解ですが、それはトランプという人物のタレント性の限界が理由ではないでしょうか。世の中にブームを巻き起こすのに必須の要素は何でしょうか。
それは、当人の人気、カリスマ性ですよね。つまり、トランプさんがジョージ・クルーニー並みのイケメンだったら(笑)、保護主義ブームに火が付いた可能性があるわけです。実際、欧州には十分その下地があります。
もし、そうなっていたと仮定すると、まず、6月のフランス大統領選で、ナショナリストで親トランプのル・ペンさんが勝つことになっていたでしょう。そして、当然メルケルも危うしだった可能性があります。これは絵空事ではなく、実際にその一歩手前くらいまでは行ってたわけです。
ここで、先程の記事を思い出してみてください。親中の欧州主要国の英独仏、これらすべての国が親米にひっくり返る可能性があったということです。もうお分かりだと思ますが、これらはすべて、中国を孤立させるためのアメリカの戦略です。トランプ政権の代名詞の保護主義には、こんな深いワケが隠されていたのです。
しかし、現実にはイギリスを引き込むのみに留まることが、ほぼ確実です。
われわれはグローバリゼーションの勝者だ。トランプ政権誕生に至ったような経済的要因は、この国にはまったく存在しない
当ブログは投資情報を一部扱っていることから、来られる方には投資家の方も多いと思います。投資家であるあなたと私は、グローバリストであるわけです。それなら、メルケルの勝利は歓迎でしょう。しかし、一方、それは日本人にとっては、不利な事態である、ということが言えるのです。
なぜって、仮にアメリカの思惑通り、「米英独仏日 VS 中」になっていたら、楽勝だったじゃないですか。中国共産党は、経済的に追い込まれ自滅、というシナリオすら描けたかもしれません。しかし、現実はそこまで甘くなかった。「米英日 VS 独仏中」、三国同盟同士という拮抗した状況になっています。
こうなると、やはり、情勢の鍵を握るのは、ロシアということになるでしょう。トランプ政権の新ロシア政策は果たしてうまく行くのでしょうか。我々はその当事者として、覚悟を持ってその先行きを見届けなければならない、その時期が迫っているということが言えると思います。
最後に
最後に冒頭で触れた疑問で、まだ書いていないことが二つあります。これについては、長くなってしまうので、過去記事に任せることにします。
なぜ森友、加計学園で急落した安倍政権の支持率は急回復したの?
その理由は、こちらの記事と後任の小野寺さんの活躍ぶりを見ればわかります。中国と戦うためには、稲田は不要で、安倍と小野寺が必要だったからです。
なぜ北朝鮮の挑発は過激になり、核開発は急に進歩したの?
中国と戦うために「北朝鮮危機」が必要だからです。