さて、今回はちょっと違った角度から、「資本主義」とそれに次ぐ新時代の到来を考えてみたいと思います。現代資本主義のとても分かり安い悪しき例が、サッカー界の最高峰にあります。現代サッカー界に目を向ければ、誰でも簡単に、資本主義の行きつく先が分かってしまいます。

Jリーグプレミア化は愚策

先に結論から書きますと、これは失敗に終わるでしょう。理由は、時代の流れと逆行しているからです。

現在はJリーグが試合の放映権を一括管理し、契約金を各クラブに配分する。配分金は同じカテゴリー内均一で、人気クラブとそうでないクラブの格差が生まれにくい。共存共栄の方針で運営してきたが、Jリーグは来年で30周年を迎え、競争へと舵(かじ)を切っていく方針。プレミア構想では、クラブが独自に放映権を管理する案なども検討される見通しだ。

Jリーグ、プレミア化 最上位リーグ新設、外国人枠撤廃など検討「推進チーム」たち上げ スポーツ報知

この失敗の良い先生となっているのが、スペインの「リーガ・エスパニョーラ」です。

カタール王族のオーナーをバックに大量補強を行ったマラガを除き、景気の良い話題が聞こえてこない今オフのスペイン。

 この状況を見る限り、バルセロナ、レアル・マドリーの2強とその他18チームの格差拡大は着実に進行していると言える。

 2強が他の追随を許さぬハイレベルな優勝争いを繰り広げる傍ら、他の18チームはCLダイレクト出場権が得られる3位を頂点とする「オトラ・リーガ」(別のリーグ)を繰り広げる。2011-2012シーズンのリーガ・エスパニョーラも、例年通りのシナリオに沿って進んでいくことは間違いなさそうだ。

バルサとレアルでリーガが破滅する!?「2強18弱」の歪んだ経済バランス。 Nunberweb 

この記事は少々古いですが、2014年~20年のリーガの優勝チームは、「レアル・マドリード」か「バルセロナ」です。3位まで見ると「アトレティコ・マドリード」を入れて、3チームがぐるぐる回っているだけです。

2014年~20年の間にそれ以外のチームが3位以上になっていないのです。全然、面白くなくない? 私はこの状態を「新・八百長」と名付けることにしました(笑)。

そう、いつしかプロサッカーの最高峰は、「新・八百長リーグ」になってしまったのです。

「新・八百長主義」の行方

その理由が、こちらです。

「誰かがリーガの放映権を一括で管理、販売しなければならない。リーガの放映権収入がリーグアンを下回るなんてあり得ない。ワールドカップとユーロ、そしてチャンピオンズリーグの王者である国のリーグの収入がプレミアリーグの半分に満たないなんてあってはならないことだ。もし放映権収入が6億ユーロから12億ユーロに増えれば、たとえバルサとマドリーに大半の額が渡ったとしても他クラブがより多くの利益を得られるはずだ」

そうそう、金持ちクラブがより豊かになることで、中間クラブが豊かになり、全体がより豊かになる・・あれ? どっかで聞いたことあるような・・

ただ、たとえ総収入が増えたとしても、現行の不平等な分配方法が変わらない限り着々と資金力を増していく2強が国内のタイトルを独占し続けることに変わりはない。

 そしてその傍らで、貧しいクラブはさらに貧しくなっていく。今オフにはセグンダB(3部相当)に所属する10クラブが財政難による強制降格を強いられ、そのうちの数クラブは消滅に至った。1部、2部でも破産法の適用によって負債の帳消しと降格、消滅を逃れるクラブが続出し、結果として給料未払いに苦しむ選手が相次いでいる。

富裕クラブがより豊かになる一方で、貧しいクラブはより貧しくなっていく・・あれ、あれ・・・やっぱり、すっげえ、どこかで聞いた気が・・

「バルサとマドリーの支配はあらゆる分野に至っている。スペインサッカー界の総資産の30%、選手への投資額の51%、リーグ収入の52%、テレビ放映権収入の50%、マーケティング収入の60%……我々はモンスターを作り出してしまった。もはやこのリーガを戦う意味などない」(ガイ教授)

私たちの住んでる世界そのものですやん!

今回の危機の特徴の1つは、低所得者層が不釣り合いに大きな打撃を受けたことだ。連邦工科大学チューリヒ校景気調査機関(KOF)の調査によると、月収が4千フラン未満の世帯はパンデミック中に収入が20%減ったのに対し、月収1万6千フランを超える世帯では8%減にとどまった。また貯蓄や雇用の確保への負担も、低所得者層でより顕著だ。

同時に、高所得者層はより裕福になっている。2004年から2017年までの期間に、1千万フラン以上の資産を持つ富裕層(全納税者の約0.3%)が所有する富がスイスの富全体に占める割合は、19.5%から32%に上昇した。税務当局と経済誌「ビランツ(Bilanz)」のデータを用いて、スイス公共放送(SRF)が算出した。

コロナで膨らむ債務、広がる格差 SWI

これが「新自由主義」ならぬ「新八百長主義」です。

男性労働者の実質賃金は現在、1970年代前半と同じ水準だ。その一方で、ごく少数の富裕層の収入は激増している。人口の「1パーセント」にも満たない、0.何パーセントかの大金持ちたちだ。これは努力や能力の差でも、市場原理の作用でもない。意図的な政策決定の結果だ。

『誰が世界を支配しているのか?』 ノーム・チョムスキー

「新時代」は訪れた

しかし、安心しましょう。こそっとお教えしますと、世界はすでに新時代に突入したのです。みんな、まだ気が付いていない、特ダネですよ、これ。

いつ? 起点は、2021年1月、アメリカ大統領選です。良い奴も悪い奴もいったん置いておいて、私たちは全員で協力して、それまでの世界最強勢力を倒したのです。

ニュートン・キングリッチ元下院議長はAIPACを「地球上で最も力を持つ利益団体」と呼んだ。

『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 Ⅰ』

地球最強のアメリカ・イスラエル公共問題委員会の代理人が、トランプでした。これは、新時代の幕開けに相応しい出来事です。

ですから、待望の新時代は、支配層の望んだ「新八百長時代」ではありません。

共存共栄の方針で運営してきた

Jリーグ、プレミア化 最上位リーグ新設、外国人枠撤廃など検討「推進チーム」たち上げ スポーツ報知

それは奇しくも、古くから日本に存在する「共存共栄」の精神を主にするものになりそうです。

強い者は生き残れない

最強のロビー勢力に支援されたトランプは、なぜ負けたのでしょうか。それは、最強だからです。彼らは、強いが故に誰とも共存することが出来ないのです。それが2020年の大統領選で、「最強の」彼らが敗れた理由です。

生物史が私たちに教えていることは、気の遠くなる長い年月、生命(遺伝子)というバトンを渡し続けて生物は、決して「強い者」ではないという事実である。今、この惑星に生き残っているのは、「環境の変化に対応して生き残ってきた者たち」だった。この本を書く動機は、環境変動が進化に対してどのようにかかわっているかを少しでも明らかにしたかったからだ。そして、「いかに環境の変化に対応するか」でもっとも有効な方法のひとつが、「他者と共存すること」なのである。

『強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論』 吉村仁

私たちは長い年月の旅を経て、現実にようやく気が付いたようです。現代資本主義の支配者たちは、いまだに単なる夢見がちな若輩者です。

一人勝ちは自然の法則に反していた

恐竜の滅んだ真のワケ?

恐竜はなぜ滅んだのでしょうか? 隕石の衝突による気候変動? いや、単に強すぎて共存できなかったから、と考えたらどうでしょうか?

かつて地球上の全生物の頂点に立っていた恐竜。その恐竜が滅んだ理由は一般的に「隕石の衝突」だとされるが、生物学者の稲垣栄洋氏によれば、「そもそも、生物史においては強者が滅び、弱者が生き残るということが繰り返されてきた」という。

最強の恐竜が滅び「弱者」が生き残った理由とは? THE21Online

そして、強すぎる「資本主義」は既にやりすぎてしまったため、世界のトレンドから急速に嫌われつつあります。

今時、強欲は流行らない。世は共感の時代を迎えたのだ。

『共感の時代へ』 フランス・ドゥ・ヴァール

Jリーグのプレミア化は、失敗に終わるでしょう。なぜなら、その方法は、既に時代遅れだからです。