お母さんと一緒
10月14日、サッカー、日本代表の試合で再び奇妙な「大逆転劇」が起こりました。
後藤「明らかにバランスを崩していた。とにかく、あんなミスはあり得ない。2点目はオウンゴールだし。公式記録では中村敬斗のゴールだけど」
大住「中村のシュートは、枠には飛んでいるんだよね」
後藤「セリエAだったら、絶対にオウンゴールと判定されるよね。とにかく、ブラジルの守備がダメだった」
サッカー批評web
カタールW杯でも取り上げましたけど、今回は専門家に解説されるまでもないほどに一見であり得ない内容で、日本の「大逆転劇」が、プレゼントされたものであることは、確実でしょう。
日本スゲー
その内容は、W杯にくらべても「なんだこりゃ」というほどにひどく、実際これはなんなのでしょうか。その目的は、流れからすると、ナショナリズムの煽動にあるのでは? と推察しました。
当時、橋爪大三郎・東京工業大教授(現名誉教授)に、ナショナリズムとの関係について取材し、記事にした。いわく「W杯が象徴するのは戦争。戦争には、国民が一致団結し、一体感と連帯感を享受する作用があり、高揚感をもたらす」。「それを武器を使わず味わえるのがW杯。お祭りの高揚感だ」とばっさりだった(毎日新聞02年6月24日夕刊)。
「日本が一つに!」W杯報道の耐えがたい“同調圧力” 毎日新聞
面白いのは、日本のライバルである韓国は、10月10日に5-0でブラジルに敗れていたことなんですね。つまり、日本スゲー!
21世紀に入ってから「世界が尊敬する日本」「本当はスゴイ日本の文化」など、「日本スゴイ」を紹介するテレビ番組や書籍が増えました。外国人に日本の文化の素晴らしさを語らせる、あるいは世界で活躍する日本人を紹介する。「日本スゴイ」を紹介した後、番組に出演したタレントが「日本人であることを誇りに思いました」とコメントすることもあります。
日本は再び戦争をする国になるのですか。 通販生活
これはおかしなことです。日本人といっても、総理大臣から痴漢までさまざまです。大谷翔平選手がメジャーリーグで活躍しているのは大谷選手がスゴイからであって、日本人全員がスゴイわけではありません。
実は、こういった言説は、1930年代にもブームになりました。昭和恐慌で経済が不安定になり、満洲事変で大陸への侵略が本格化した頃と重なります。
ついに恐慌突入か?
一部を紹介しよう。第1の危機は1930年代。大恐慌が発生して第2次世界大戦に突入し、世界史上、最悪の悲劇的な時代となった。
危機の原因は(1)国際金融システムを支える制度が硬直的だった、(2)米国から欧州に向かう資金の流れが逆流した、(3)各国が自国第一主義に立って国際的なリーダーが不在だった、の3点。
この100年の経済・金融危機のパターンと教訓を明らかにする本 日本経済新聞
これまで金融危機の発生を予測し、ことごとく外しておりますが、突如として発生した「新サブプライム危機」は、非常に気になりますね。政治的にだけではなく、相場観的にも、危険な匂いがしています。金銀の歴史的な暴騰、そして、ビットコインの暴落・・
実際、暴落直後には「不公平な市場には参加したくない」との声も聞かれ、ビットコインへの興味を失いつつある投資家もいる。
ビットコイン暴落にSNSで「トランプ一族のインサイダー疑惑」が拡散、撤退を検討する投資家も、相場はどう動く? JBPRESS
「公平な市場」なるものの存在を存じ上げませんので、当ブログは投資を、新規参入者には全くおすすめしません。
戦争を止められない人々
そんな不吉な予想が当たるかどうかは、ともかく、それにしてもなぜ、人類は、戦争を止められないのですかね?
悪いとわかっているのに止められないってことは、人類は、「戦争依存症」ってことでしょうか。
私はかつては、そう考えていました。戦争は、人間の本能なのだと。しかし、どうやら、それは違うようなのですね。戦争の本能が人に組み込まれているわけではなく、戦争に導かれてしまう、本能が人にはあるということのようなのです。
大手広告代理店「電央堂」の就職試験を勝ちあがった大学生8名。彼らに課された最終選考の課題は、政府チームとレジスタンスチームに4人ずつで分かれ、宣伝によって仮想国家の国民を戦争に導けるかどうかを競うゲームだった。
「プロパガンダゲーム」 ドラマイズム
その本能を刺激してやれば、人々を戦争に導くことは簡単、というわけですね。その真犯人が、広告代理店かどうかは知りませんが、ナチスの例で実際、それは実証されていると考えていいでしょう。人々のどのような本能が、戦争に利用されるのかというと、こちらの記事に書いてありました。
春井 早期完了とは、親の価値観をそのまま取り入れて、それを自分として生きるという状態です。本当の自分と向き合わずに、他者の考えを取り入れてそこに同一化して生きてしまうんですね。
まき 「ママがそう言うならそうなんだろう」的な案件ですねわかります。それと法外がどうして関係あるんですか?
春井 一度そういう風に生きる癖がついてしまうと、どんどん更に大きなもの、偉大なものと同一化したくなってくるんです。これは自分の自己肯定感を上げるためです。宮台さんも、自己肯定感には2種類あると言っていて、このような自己肯定感を「崇高なものとの同一化による自己肯定感」と呼んでいます。
まき そっか、その「崇高なもの」っていうのが法律とか、新海監督が言ってた「社会的正しさ」「ポリティカル・コレクトネス」ってことなんですね。そういうものに同一化しちゃうと、本当の自分が隠れて見えなくなっちゃって、偽りの人生を生きるしかなくなるんですかね。じゃあ、国とか政府とか、政治的思想とかっていうのもそうですか?
『天気の子』の心理学的考察 みんなが感じた「違和感」の正体を探ってみた【ネタバレ注意】 ナゾロジー
はい、出ましたね。私が大嫌いな「正しい世界」。しかし、どうもですね。世間的には、これが大好き、というより、これを何より大事にして生きている人が、大多数みたいなんです。
実際につい最近、目の当たりにしましたよね。例のコロナ渦というやつで。私にとっては、あのパンデミック騒動中で、それが一番の驚きだったんです。
「え? なにこれ?」
みたいな。自分がそうじゃないんで。多分、ここのブログを読んでいる人たちもそうじゃない人たちなんでしょう。「正しい世界」の住民は、このブログには、たどり着きませんし、たどり着いたとしても、怒って出ていきますから。
ブラジル戦を鑑賞していた人が、テレ朝の試合中のテロップに「サッカー王国から歴史的勝利へ!!」という文字がずっと表示されていたことへの違和感を口にしていましたが、彼は「世界の正しさ」を信じているため、その勝利が初めから決まっていた、という考えに同意することはないでしょう。
戦争の作り方
さて、ヒトのどのような性質を利用すれば、広告代理店は、世界を戦争に導けるのでしょうか。彼らが用いるのは、おそらく「アイデンティティ・フュージョン」という現象です。
今回の予想は、わたしたちがオックスフォード大学で長年にわたって積み重ねてきた研究に基づいている。どんな理由であれば人は自らが所属する集団のために自発的に命をかけて戦うのか、という研究を、わたしは同僚たちと続けてきたのだ。この研究では多種多様なグループについてのデータを集めるために、インタビューや包括的な調査、心理学実験など、多くの手法を使った。調査対象は、例えば部族の戦士、武装勢力、テロリスト、近代的な兵士、宗教的原理主義者、暴力的なサッカーファンなど多岐にわたっている。研究でわかったのは、人生を変えるような体験や集団への所属を決定づけるような体験が、個々人のアイデンティティを「融合」することだった。
過激思想と闘うために「アイデンティティ融合」のメカニズムを知る──特集「THE WORLD IN 2025」 wired
人類は、人格を人と融合させる性質を持っており、これを利用することで、人々の思想を過激化することができる、ようです。
わたしたちの研究によると、「致死性のカクテル」をつくり出すためには、融合のほかに3つの材料が不可欠だとわかった。それは「グループ外からくる脅威」と「敵の悪魔化」、そして「平和的解決は存在しないという考え」だ。ガザ地区のような地域では日々、市民の犠牲が録画され、世界中にシェアされる。そうした恐怖を目の当たりにしている人たちの「融合」が進むのは当然の成り行きだ。もし、そうした人々が「平和的な解決は不可能だ」と考えるようになれば、暴力的な過激思想が立ち上がってくるだろう。
もう、これで「ヒトが戦争を止められない理由」のほとんどは、理解できたかと思います。そして、再び我々は戦争に導かれるであろうことも、容易に想像できるでしょう。
そして、たくさんの人間が、父、妹、妻が―おれにとって一番大切な人間が―どんなに大切で、どんなになつかしくても、これがどれほど恐ろしく、不自然に思えようと、おれは名誉の一瞬のために、人々に勝ち誇る一瞬のために、自分が知りもせず、知ることもない人間たちに愛されるために、まさにそういう人間たちに愛されるために、父や、妹や、妻を今すぐにでも引き換えにする。
『戦争と平和』 トルストイ
「正しい世界」の住民は、この欲求に逆らうことができないことは、歴史が証明しています。
ただ、余計に興味深いのは、ここ最近は「正しい世界」からの脱落を誘うかのような事象が増えていることです。SNSを含めた「正しい世界」は、馬鹿馬鹿しいほどに劣化し、一部の人は、それらを冷めた目で眺めていることでしょう。自分のことで恐縮ですが、私が、政治や芸能界やサッカー観戦そのものへの興味を失ってしまったことは、その典型かと思います。
さて、ちょっと長くなってしまうので、次回にしようと思うのですが、「アイデンティティ・フュージョン」なる不可思議な現象が、ヒトの世界では起こるのか?に迫ってみたいと思います。
私の勝手な考えでは、その起源はおどろくほど、古い可能性があります。
春井 早期完了とは、親の価値観をそのまま取り入れて、それを自分として生きるという状態です。本当の自分と向き合わずに、他者の考えを取り入れてそこに同一化して生きてしまうんですね。
まき 「ママがそう言うならそうなんだろう」的な案件ですねわかります。
『天気の子』の心理学的考察 みんなが感じた「違和感」の正体を探ってみた【ネタバレ注意】 ナゾロジー
「正しい世界」の大元はお母さん、やはりといいますか、ヒトはまるで幼児のような感覚のまま、国家などの社会的集団に甘えながら、生きていたのです。
ただセカイ系は、「お母さんと息子」という全能感をもったまま存在できる乳幼児期の世界に近いものがあるんですよね。
どうやら、ヒトはそのように進化した、みたいなのですが、では次回で・・








