ネット空間では、高市政権への夢が気持ち悪い熱量で語られ続けておりますね。高市首相が、故安倍晋三氏の遺志を継ぐ徹底的なリアリストであるならば、そんな子供たちの夢を叶えようとすることはないでしょう。
しかし、実際のところ、子供に夢を諦めさせるというのは、かなりの難度の高い仕事になることでしょう。
夢 VS 現実
「積極財政で、日本大復活」
その古びたスローガンは戦争へ続く道である、と私は考えますが、とりあえず、それはいったん置いておいて、これに対するメディアの論調を見てみましょう。
高市早苗内閣が始動した。閣僚人事にはどのような狙いが込められているのか。ジャーナリストの須田慎一郎氏は「注目すべきは、経済財政担当大臣に積極財政議連の顧問を務める城内実氏が就いたことだ。これは緊縮財政を旗印に掲げる財務省と全面対決する姿勢を明確にした人事だ」という――。
ついに”緊縮”財務省との全面戦争が始まった…”安倍首相の側近”だった高市内閣のキーパーソンの名前 presidentONLINE
ついに悪の財務省に、正義の高市政権が、全面戦争を挑むという記事なのですが、呆れるほどに低レベルな内容であると感じますが、どうやらこれを喜ぶ大人たちが、多くいらっしゃるというのが、日本国民の現実なのです。
城内氏のもう一つの顔は、「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の顧問であることだ。この議員連盟は、自民党内に設けられたものであり、通称「積極財政議連」と呼ばれ、かつては「安倍別動隊」と目されていた議員グループだ。
この議連の立ち上げにあたっては、安倍晋三元首相の強い意向が働いていた。そのため、安倍元首相はこの議連の会合にもたびたび顔を出していたという経緯がある。
これまで何度もお伝えしてきたとおり、旧安倍政権は「積極財政」を、積極的に行うことは、決してありませんでした。
結果としてアベノミクスは量的緩和策だけに頼る「一本足打法」となってしまった。明確に時期を区切るのは難しいが、中後期のアベノミクスは量的緩和策そのものだったと考えてよいだろう。
検証アベノミクス:経済政策として不十分だった真因 nippon.com
アベノミクスとは、単なる金融緩和。
財政支出を拡大しているという印象はなく、緊縮財政で知られた2000年代の小泉純一郎政権と似通っている。
(中略)
以上、財政データを虚心坦懐にながめると、第2次安倍政権での財政は、派手な経済対策とは裏腹に節約傾向であったことが確認できる。それが偶然の産物だったのか、行政機構の知恵によるものだったのかは、データからはわからない。
「第2の矢」は放たれていたのか?-財政データに見る「アベノミクス」〈政策データウォッチ(33)〉 東京財団
安倍政権、それ以前の政権も含めて、日本政治は「現実」を追求してきたということでしょう。しかし「子供たちの夢」は、SNSを中心に日に日にふくらまされており、それに対する現政権の対応は、以前より厄介なものになる可能性が高いでしょう。
幼いヒト
さて、これらを前置きとして、今回の本題は「なぜ我々は、これほどまで夢見がちになったのか?」です。
夢見がちなこと自体は、悪くないのかもしれませんが、夢と現実の区別がつかなくなってしまったとしたら、少々、いや、大分よくないのではないでしょうか。
私に言わせると、それがヒトなのです。
赤ちゃんは、夢と現実とを、まだ区別ができません。そして、見ているものが何なのか、の認識もできません。
第32回 赤ちゃんは、その世界なりの夢を見る 日刊イトイ新聞
夢と現実の区別がつかないのは、幼さの特徴であるということは言えそうですよね。人が、他の動物たちよりも未熟な状態で生まれてくることを知っている方も多いでしょう。私たちは、動物に比べて幼い期間がとても長いのです。
実は他の類人猿に比べると、人類は巨大化した脳を持っているので、この状態で無事出産するためには、赤ちゃんの脳が小さいうちに、つまり未成熟なうちに産む以外、方法がなかったのです。移動はおろか、食事など、生命の維持に関するすべてにおいて、長い間養育者に依存しなければ生きていけない赤ちゃん。しかしその一方で、外界の様々な刺激を取り入れる準備ができている感覚器官をもち、優れた学習能力を備えた新しい脳(大脳)を備えて生まれてきます。
この人間特有の特徴が人類進歩のカギを握っているといえます。
【心理学部】『人はなぜ未成熟な状態で生まれてくるの?』 関西国際大学
最も有名な歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏は「人間は、虚構をみんなで信じることで進歩した」と言ってましたね。ともすると、やはり人は幼いので、進歩したと言えそうではありませんか?
ヒトは、教育する唯一の動物なのです。このことは他の生物と決定的な違いをもたらします。というのも、ヒト以外の生物は、次世代に情報を伝える際に、遺伝子に頼るしかないのに対して、ヒトはそれ以外の手段、つまり文化を形成し教育するという選択できるからです。このように考えることで、教育とはヒトがヒトであることを証明するものと考えられてきました。ヒトの特徴を考える議論として特に有名なのは、脳の大きさに着目する研究です。スイスの生物学者であるアドルフ・ポルトマン(1897-1982)は、ヒトの脳は近縁の霊長類と比べても約3倍の重さがあることを発見しました。また、ウマやキリンなど他の哺乳類が生後間もなく自立し駆けることができるようになるのに対して、ヒトは生後しばらくの間、自力で生きていくことができないこと、親に保護されながら、時間をかけて発育していくことを指摘し、そのような無能な状態で生まれてくることを「生理的早産」と呼びました。
教育学をかじる(2)―教育とは何か―: 2.「人間とは何か」という問いからアプローチする 九州大学付属図書館
そう、私たちは、本能による「現実」よりも、後天的な教育による「夢(ハラリ曰くの虚構)」を、認識として重視するようになったのです。そして、そこには「早産」が、理由として大きく関わっていたのです。
更に、ヒトが早産になったわけを追ってみます。
それでは、ヒトはなぜ生存に関わる基本的な能力を母親の胎内で獲得してから生まれるのではなく、生理的早産するのでしょうか。この答えは2つ考えられています。一つは、ヒトは二足歩行をするようになり、骨盤が小さくなったことで、胎児の体が産道を通れるうちに出産せざるを得なくなってしまったというものです。
またもう一つは、種の保存を目的に野生のなかで獲物を求めて生きるというシンプルな暮らしをするヒト以外の動物と異なり、ヒトはその能力の産物でもある文明社会に適応して生きていかなくてはなりません。そのため、胎児は出産後に新たな知識・行動を柔軟に習得できるように、他の運動機能などは未発達な状態でも、まずは脳を優先的に発達させて生まれてくるといわれています。
文明社会のせいで早産になった、はなくね?
これは、順番が逆でしょう。ハラリの言うように、みんなが早産で幼いので、虚構を信じ、文明社会が発展したと考えたほうがよさそうに思えます。
なので、1番目の「ヒトは二足歩行になり、早産になった」という説を採用しましょう。
直立二足歩行のヒト
ところで、なぜヒトは直立二足歩行に進化したのでしょうか? これが意外にも、はっきりわかっていないのですね。
Q どうして直立二足歩行するようになったのかな。
A いろいろな説があって、決定的なものはない。ただ、馬場先生によると、物を運ぶようになったからという「運搬説」が有力なんだ。人間でいうと中腰のような前かがみの格好で重い物を長く運ぶのはバランスが悪くて大変。だけど直立して運ぶのはそれよりも楽だからね。
人類、なぜ直立二足歩行に進化したの? 「プレゼント仮説」も 日本経済新聞
運搬説は、違っている気がするなあ。これもいつもの通り、原因と結果が逆じゃないですか? 二足歩行になった結果、物を運ぶようになったわけであって、物を運ぶために二足歩行に進化したといわれても、はあ?って感じじゃないです?・・・・
でね、今回たまたま、気づいてしまったんです。
二足歩行の謎が解けないのは、人類は誕生してからこれまで、一貫して進歩してきたという思い込みが原因なんじゃないかってね。
二足歩行は新しい移動方法ではなく、 新たな環境における旧来の移動方法だったのだ。言い換えれ ば、「人類進化の行進図」は方向が逆だったのかもしれない。人類はナックルウォークしていた祖先から進化して二足歩行するようになったのではない。逆に、ナックルウォークする現生類人猿の ほうが、二足歩行していた (少なくとも、時々は)祖先から進化したのだ。
『直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足』 ジェレミー・デシルヴァ
二足歩行は、人類の進化の象徴だ、とだれもが考えているでしょう。でも、それ本当ですか?
ヒトは多くの動物に対して、強烈な劣等感を持っている。それは、走るのが遅いからだ。直立二足歩行の最大の欠点は、走るのが遅いことなのだ。これは、自然界で生きていくには致命的な欠点だ。ヒトの100メートル走の世界記録は、2009年にウサイン・ボルトが出した9秒58である。将来、ヒトはこの記録を大幅に短縮し、ついには9秒を切る日が来るかもしれない、という意見がある。ただし、それはヒトが四つ足で走れば、の話だ。ヒトの四足走行100メートルのギネス世界記録(そういうものがあるのだ)は、2008年には18秒58だったが、2015年には15秒71にまで短縮された。7年で3秒も短縮されたということは、まだ四足歩行についてはフォームなどの研究が進んでいないことを示している。ということは、これからまだまだ記録が短縮されるということだ。そして、この調子で記録が短縮されていけば、ついには9秒を切る可能性があるというのである。ちなみに、現在の世界記録保持者は日本人の、いとうけんいち、である。将来、ヒトが四足歩行で100メートルを9秒以内で走れるようになるかどうかは、わからない。しかし、ヒトが四足歩行でもかなり速く走れることは確かだろう。ヒトのように、直立二足歩行に適応した体を持つ生物でさえ、四足歩行でこんなに速く走れるのだ。
人類は「四足歩行」でも案外速い!? ダイヤモンドオンライン
こう考えたら、なぞは解けませんか? 人類は、四足歩行ができなくなった、と。
初期の人類は、歩くときには直立二足歩行をしたが、走るときには相変わらず四つ足だった可能性もある。もっとも、初期の人類が四つ足で走っていた証拠はないので、これは想像にすぎないけれど。
なぜ、我々は四足歩行ができなくなったのか、答えはもうお分かりでしょう?
あなたは草原にいる。遠くからライオンが走ってくる。あなたは恐怖に震え、絶望するに違いない。ついに私の人生もここで終わるのか、と。
でも、もしもあなたがライオンより速く走れたら、どうだろう。ひょっとしたら、しばらくのあいだ、あなたはライオンのことを眺める余裕があるかもしれない。「おお、走ってくる、走ってくる。すごい牙をしてるなあ」とかいいながら。それからおもむろに、あなたは走り出す。ライオンの方に向かってだ。そして、ライオンがあなたに噛みつこうとすると、ひょいと体をかわす。そうしてライオンをおちょくってから、あなたは悠々と逃げていく。
そう、私たちは捕食者を失ったために、早く走る必要がなくなり、四足歩行を止めたのですよ、きっとね。
これは進化ですか? それとも退化?

ヒトっぽいカカポ
飛べなくなったオウム、絶滅危惧種のカカポのことを最近知りました。
南半球の楽園・ニュージーランドにしかいないこの鳥は、なんと飛べない、匂いが強い、人懐っこいという、ちょっと変わった特徴を持っています。しかも見た目はもふもふでとびきりかわいい。けれどその一方で、カカポは今、絶滅の危機に瀕している貴重な鳥でもあるのです。
絶滅危惧種カカポが人懐っこいって本当?その特徴と性格に迫る アニマルフロンティア
このカカポ、何がいいって、とっても人間っぽいんですよ。
何世代にもわたって捕食者の脅威を受けずに進化してきたため、警戒心というものがほとんど発達していません。その結果、人間を見ても逃げるどころか近寄ってくる個体もおり、その行動が「人懐っこい」と表現される所以です。
彼らの生きる世界には、長い間「捕食者」が存在しなかったため、翼は退化、花のような香りを発することや、オスが集まって、ステージで求愛ダンスを披露するという性質が、「捕食者」が侵入した現在の環境では仇となり、絶滅危惧種になってしまったのです。
大きな太ったオウムで、オスの成体で体長が60cmに達し、体重は3~4kgである。その大きさに対して小さな翼しか持っておらず、鳥が飛行するために必要な筋肉につながる竜骨突起が退化しているため、飛行能力は皆無に等しい。翼は、ジャンプの際にバランスをとったり、体を支えたり、木から跳び降りるときに落下を和らげるために使う程度である。他の陸上性の鳥と違い、エネルギーを蓄えるために、体の大半に脂肪を蓄積することが可能である。
「フクロウオウム」 ウィキペディア
彼らは脅威を感じると、逃げずに身を潜めるらしいのですが、その様子はまるで幼鳥であり、そして人間らしい。思い出したんですが、大学で生物学の授業の際にある学生が、
「なぜ、人は逃げなければならない恐怖の場面で、すくんで動けなくなるのか?」
という質問をしていました。すげーいい疑問だったと思いますが、その答えは、カカポが知っているかもしれませんね。
「地球で最も弱い動物」そう呼ばれるカカポですが、それってもしかすると、私たちも同じじゃないかなあ・・・
人類が自己家畜化の産物だと最初に唱えたのは18世紀末のドイツの人類学者ヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハだとされる。1795年にブルーメンバッハは「ヒトはほかのどんな動物よりはるかに家畜化され、最初の祖先から進化している」と記した。
(中略)
それに対して、1973年にノーベル医学生理学賞を受賞した動物学者コンラート・ローレンツは、1940年の論文「種固有の行動の家畜化が引き起こす無秩序」で、「文明の影響で人間は過度に家畜化されたせいで魅力に欠け、幼児退行して成長できなくなった」とまったく逆の主張をした。この著名な動物学者は、「高度に家畜化された集団」を自然の理想形の劣化版と考えたのだ。
「人類は暴力を抑制すると同時に、殺しを楽しむように進化した」 橘玲公式ブログ
果たして、進化か退化か、そのとらえ方は、皆様の価値観にお任せするとしましょう。
人類の化石にもこうした家畜化の特徴ははっきり現われている。ホモ・サピエンスはネアンデルタール人など先行する人類より小型で平面的な顔貌をし、男女の骨格のちがいが小さい。より興味深いのは頭蓋容量(脳の大きさ)で、過去200万年間の人類史で着実に増大してきたが、3万年ほど前に方向転換が生じて脳が小さくなりはじめた。現代人の脳は2万年前の古代人より10~30%も小さいという。
とはいえ、脳が縮小することで認知機能がかならずしも低下するわけではない。家畜化されたモルモットの脳は野生種の祖先より体重比で約14%小さいが、より早く迷路のゴールにたどり着き、関連性を習得し、逆転学習の成績が向上している。家畜化するとなぜ脳が小さくなるのかは不明だが、ヒトの脳が小さくなっているからといって「退化」しているわけではないようだ。
しかし、その変化は文明社会が理由ではない。その変化の起源は、そのはるか昔。人類が「捕食者」を失ったことが原因ではないでしょうか。
カカポに話を戻せば、天敵のいないパラダイスで、無防備に呑気に生きてきた彼らもまた、人間が持ち込んだイタチやネコのせいで絶滅の危機に瀕します。しかし、人間はそれをそのままにはしておきませんでした。一九世紀末という早い時期にカカポの救済に立ちあがったのは、学者ではなく、 「森の人」、リチャード・ヘンリー。ヘンリーは、当時の学者たちからは教養のない田舎者と軽蔑されていましたが、実際はだれよりもカカポに詳しく、それゆえにだれよりも早く保護の必要性に気づいていました。
「ネズミに支配された島」 ウィリアム・ソウルゼンバーグ
人類の危機に一早く気づき、「救出作戦」を展開する者の正体も、もしかすると「森の人」なのかもしれません。そういえば、ホモ・エレクトスって、直立の人って意味らしいんですよねえ・・
追記
ギネス記録が、2025年の9月に更新されてました。







