6月15日のFOMCにて、アメリカ準備聖堂理事会、FRBは今年2度目の利上げを決定しました。このこと自体は十分予想されていたことだったのですが、FRBの今年の意向の方針とイエレン議長の会見は、想定よりもタカ派的と捉えられ、サプライズだったと伝えられています。
しかし、不思議なことにマーケットの反応は、ほぼ無風といった具合で、解釈に苦しむ状況となりました。これに対して言われていることは、「市場関係者はFRBの方針に対して懐疑的であり、世界経済は想定通りに堅調には推移しないのではないか」、と考えていると言うものです。
それに対し、当ブログではイエレン議長率いるFRBの先見性は非常に優れており、素直に彼らの方針を信じればいいのではないか、ということを再三主張してきました。
目次
イエレン議長の会見要旨
まずは、今回のFOMCでのイエレン議長の会見要旨を確認してみましょう。
~ 日本経済新聞 ~
私なりに重要だと思う部分でさらに要約すると、
- 労働市場は逼迫しており、インフレはいずれ上昇する
- 最近の経済指標の低調は、携帯電話使用料金の大幅引き下げなど特殊要因
- トランプ政権の経済政策の遅れは、景気の動向には大きく影響していない
- 急激な利上げによる景気後退のリスクを避けるため、先回りで利上げする
ということになるのかな、と思います。市場関係者がFRBはその言葉通りには金利を引き上げることが出来ないのではないか、と考える原因が2と3ですね。彼らは最近の経済指標の低調さ、トランプ政権の経済政策の遅れから、FRBの想定通りに景気は拡大しないのではないか、と見ているようです。
それに対し、イエレンさんは、
雇用は順調に伸び、緩めの金融政策の下で徐々に利上げを実施して政策を中立に向けている現在、景気は順調に拡大しているとみる
とおっしゃっていますね。さて、イエレンさんと市場関係者、果たして正しいのはどちらなのでしょうか。
FRBは専門家集団だが、イエレン議長は・・
「FRB」とはどういった組織なのか、ということは私がここで説明するようなことではないでしょうから割愛しますが、確認しておきたいのは、FRBの金融政策の方向性を決定するメンバーはP.h.Dという博士号を取得した高度な専門家達であるという点です。極めて高名な経済学者である方が多いとのことです。
そんな中でも、現在のイエレン議長には、こんな評価があります。
イエレン氏は正確に景気を予測する能力を持っている。FRBは経済成長率、インフレ率、失業率を予想して政策を決定しなければならない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の分析によれば、同氏は09―13年の経済について、現在のFRB当局者の誰よりも正確に予測していた。
経済学界の最高の頭脳がそろったプロ中のプロ集団、FRB、そんな中でもイエレン議長は更に飛びぬけて経済を予測する能力が高かったというのです。
さて、私がなにを言いたいかと言いますと、そんなイエレンさんが「経済は堅調に推移し、緩やかなインフレが進む」と想定しているのですから、素直に信じればいいじゃん!ってことです。なぜ、市場関係者は彼女らを疑うのでしょうか? 自分達の方が優れているから?
まあ、多分、市場関係者と呼ばれる人たちは、経済の先行きについてなんて、そんなに真剣に考えていないと思います。彼らの目的は経済の先行きを見通すことではなく、マーケットの世界で勝ち抜くことです。それには裏の裏を勘ぐるくらいの姿勢が必要なのでしょう。
市場関係者と見解が異なることについて、イエレンさんはこう答えています。
市場が独立した考えを持つことは大切で、我々も市場関係者が経済成長の証拠をどのように解釈するかを理解しようとしている。なので、市場と我々の予測に差があることは悪いことではない
完璧なお答えです。
これは余談ですが、日本のFRBに該当する機関は日本銀行ですね。FRBは金融の超プロ集団ですが、では我らが日銀はどうかというと、残念ながら決してそんなことはないようですね。黒田総裁は東大ですが、法学部出身です・・。本当かどうか知りませんが、安倍政権は日銀総裁を選ぶ際、事前に情報をリークさせ、マーケットの反応が一番良かった黒田さんを指名した、との噂がありました。
日銀は政府の子会社みたいなもので、政権にとって都合のいい人物が委員に次々と送り込まれてきます。ちなみにFRBは米政府の機関ではなく、100パーセント、民間の銀行です。
インフレに気が付き始めた各国中央銀行
FRB以外の世界各国の中央銀行に目を向けても、最近はインフレへの対応を強めてきている印象があります。6月12日、カナダの中央銀行のウィルキンス上級副総裁が利上げに積極的な発言を行い、カナダドルが急騰しました。また、つい先日、イングランド銀行でも、利上げを主張するメンバーが増加していたことをきっかけに、英ポンドが急騰しました。
通貨安競争は終わり、通貨高競争へ
当ブログでは、昨年の半ばから、「通貨安競争は終わりを告げ、やがて通貨高競争がやってくる」と予想してきました。通貨高競争が始まったかはまだ分かりませんが、世界を見渡せば少なくとも、「通貨安競争は終わった!」、と宣言してしまっていいのではないか、という状況になっています。
なぜ彼らが通貨を安くすることを止めたのかというと、それはインフレを警戒し始めたから、という意外に理由はないと思います。
微妙な立場のECB
アメリカとともに、世界のトレンドに重大な影響を持っているのが、ヨーロッパ中央銀行です。そのECBでも金融緩和の縮小議論が盛んに取り上げられるようになっています。ユーロ加盟国の中で最も景気のいいドイツのメルケル首相は、「ユーロは安すぎる」と最近度々発言し、周囲を驚かせています。
貿易黒字を理由に非難を強めるアメリカをけん制するため、という見方もありますが、私はそれよりも、早期の金融政策の転換をECBに迫るものではないか、と解釈しています。
ECBのドラギ総裁は、、マーケットの世界ではもはや伝説の男と言っていいほどの人物ですから、当然先見性は相当優れているはずです。しかし、彼の立場が微妙なのは、ユーロ国の中で経済がよくない国も、政策決定の根拠にしなければならないということです。例えドイツにインフレの兆候があっても、彼らの都合だけで、緩和縮小に積極的になるわけにいかないのです。
私は、ECBが世界経済のインフレ動向に相当の影響力をもっている、と考えています。特にドラギ総裁のマーケットへの影響力は計り知れません。彼が「テーパリングを開始する」と言明すれば、インフレ動向は大きく動き出すと思っています。なぜなら、大規模な金融緩和を継続している限り、膨大な資金は国債に閉じ込められたままだからです。それはデフレ要因です。
昨年の秋から始まった世界的な、国債価格の下落、金利の上昇は、ECB、ドラギさんが緩和の限界を認めた辺りから始まってきたことは何度もお伝えしてきた通りです。トランプがその理由ではありません。
取り残される日本
世界各国の中央銀行は利上げの方向へ舵を切り始めています。では、日本はどうなのでしょうか。日本はまだまだその方向へ進むことはないことが、16日の金融政策決定会合で示されました。ただ、経済欄では、日銀が緩和を縮小するのではないか、という観測記事を目にする機会が増えてきているようです。
ちょっと前には、「日銀の金融緩和の出口に関する議論は、時期尚早から説明重視へ変更」という記事が出て、国債が急落するという事態が発生しましたね。
この金融緩和の出口なのですが、断言していいと思いますが、これはないです。どう考えても、日銀の金融緩和にまともな出口はないです。
当ブログでは、今後大幅な円安局面がやってくると予想しておりますが、その根拠となるのは、この世界各国と日本との金融政策のかい離です。通貨高競争に日本は取り残されていくのです。メインシナリオはこれで、トランプではありません。
世界経済の先を知るイエレンさんについていこう
少し話がそれてしまいましたが、何が言いたかったというと、世界最高のアナリストである、ジャネット・イエレンさんによれば、今後世界経済は順調に推移し、インフレの世界がやってくる可能性は非常に高いということです。
もちろん、経済の先行きを100パーセント正確に予想することなど不可能です。イエレンさんと言えど、当然間違うこともあるでしょう。
しかし、少なくとも我々素人投資家は、素直にそれを信じて付いていけばいいのではないか、と思います。彼女はきっと天才です。彼女の就任以来の実績が、それを如実に表しているではないですか。