あなたは何を頼りに生きていますか? と問われたら「自分の感覚です」と誰もが答えるでしょう。それ以外の答えの人っていますでしょうか? いないだろうと言う前提で話を進めますが、ここ最近これを「科学」に統一しようと言う圧力が社会的に強まっているように思います。

しかし、これは非常に愚かな行為です。なぜなら、私が聞いたところによると、科学は何も知らない、らしいのですから。 

科学とは?

ところで「科学とは何か」と言うと、ここ最近は「自然科学」のことを指すようです。

自然現象を対象とする科学。自然界において本質的に重要な現象を見出し,現象の把握に有効な概念を確立し,現象を支配する法則を発見する。

「自然科学」 コトバンク

自然の法則を発見するのが、科学だということですね。私たちが自然に生かされている以上、その決まりを知ることは、決定的に重要な意味を持つでしょう。つまり、科学を知れば、私たちは上手に生きられるという訳ですね。

じゃあ、みんなで科学を徹底的に学べば、ハッピーな人生を送れるじゃん!

S先生の無知

しかし、私の期待を裏切り、先生はこうおっしゃったのです。私は「ほとんど何も知りません」と。

出口治明(以下、出口):先日、宇宙物理学者の吉田直紀先生と対談をさせていただきました。観測技術やAIの飛躍的進歩によって、宇宙の謎は秒進分歩で解明されているそうですが、それでも吉田先生は、「人間の英知で解明できたのは、全体の17%くらい」だとおっしゃっていました。

更科功(以下、更科):「生物の進化」にしても、ほとんどわかっていません。

出口:現時点で、生物の謎はどれくらい解明されているのですか?

更科:たとえば「種の数」でいえば、おそらく1%にも満たないと思います。哺乳類のように、多くの人が関心を持ち、かつ目に見えるくらい大きなものはかなりわかっていると思いますが、そういう生物はほんの一部にすぎません。

出口:なるほど。では、進化理論についてはどうですか?

更科:進化理論に関しても、わかっていないことがたくさんあります。わかっているのは、せいぜい、10%くらいではないでしょうか。

生物の謎は「何パーセント」明らかになったのか? ダイヤモンド・オンライン

「なんで先生が何も知らないんだ!」とキレましょうか。しかし、最先端科学である量子論は、その怒りを見事に萎えさせてくれます。

しかし、量子論が描像する世界を「解釈」することにおいては、これまで物理学者たちは散々に頭を悩ませてきた。これまで量子論に関して、物理学者たちがどんな発言をしてきたのか、本書からいくつか引用してみよう。

アインシュタインは後年、次のように述べた。「この理論のことを考えていると、すばらしく頭の良い偏執症患者が、支離滅裂な考えを寄せ集めて作った妄想体型のように思われるのです」

ノーベル賞を受賞したアメリカの物理学者、マレー・ゲルマンは、そんな状況を指して次のように述べた。量子力学は、「真に理解している者はひとりもいないにもかかわらず、使い方だけはわかっているという、謎めいて混乱した学問領域である」

量子論にはじめて出会った時にショックを受けない者に、量子論を理解できたはずがない(ニールス・ボーア)

現在、物理学はまたしても滅茶苦茶だ。ともかくわたしには難し過ぎて、自分が映画の喜劇役者かなにかで、物理学のことなど聞いたこともないというのならよかったのにと思う(ヴォルフガング・パウリ)

これらの発言をしている物理学者たちは、歴史に名を残す見事な業績を持つ人たちばかりである。そんな彼らが、量子論という最も成功した理論に対して、こういう反応を示しているのだ。

さらに凄いことに、これまた偉大な物理学者であるリチャード・ファインマンはこう発言している。

「こんなことがあっていいのか?」と考え続けるのはやめなさい―やめられるのならば。その問いへの答えは、誰も知らないのだから

物理学というのは、「現実はどうなっているのか」という問いに対して、実験や理論によって答えようとする学問だ。しかしファインマンは、「量子論を解釈するのは止めよう」と言っているのだ。もはやこの発言など、物理学者による敗北宣言としか思えないだろう。

天才科学者の誰もが「ぶっちゃけよく理解していない」、それが量子力学である 本がすき。

科学では、宇宙の法則を理解することは出来ません! そう、実は人類は既に自然を科学で理解することを諦めていたようです。

代わり?にテクノロジーを進歩させた

ですから、私たちはその代わりに、それをごまかすために?テクノロジーを進歩させることに特化したのです、きっと。

量子論(「量子力学」とも表記されるが、ここでは「量子論」で統一する)は、アインシュタインが生み出した一般相対性理論と並んで、20世紀物理学の到達点であると言われている。少なくとも、量子論がなければ、テレビやパソコンなどは生まれなかった。量子論は、現実を「計算」することにおいて最も成功した理論の一つと言っていいだろう。

科学(テクノロジー)とは、目的の最短最大成就の方法のこと

と私は、このブログで定義させていただてきました。その目的とは人間の欲望によるところが大きく、ゆえにその発展の勢いは凄まじく、その進化は無分別に賞賛されてきました。

しかし、人類は今岐路に立たされたようです。

私たちは人類史上初めて、テクノロジーを進化ではなく退化、止める方向に舵を切らなければならない時を迎えているのではないでしょうか。

アメリカ・マサチューセッツ州の州都ボストンが、2020年6月24日に「当局による顔認証技術の使用を禁止する条例」を可決しました。また、同日にカリフォルニア州サンタクルーズ郡最大の都市サンタクルーズ市も同様の条例を可決したと報じられています。

アメリカの大都市が相次いで顔認証システムを禁止に Gigazine

これまでも例えば、SF作家が警告を発することはあっても、私たちが日常生活において、実際にその使用を禁じる判断をするのは、画期的なことだと思います。

それは我々人類にとって革命的であるとさえ言えると思います。私たちの文明は、今、間違いなくターニングポイントを迎えています。

もちろんこれまで通り、欲望を最大成就したい勢力は、テクノロジーを最大限に活用して、その達成を目論んでいます。

今も、善良な市民にテクノロジー=サイエンスと混同させ、思想の統一を試みていますね。テクノロジーを「真実」の確定に用いれば、答えを一つにすることが出来ますからね。

今話題のPCRはサイエンスではなく、テクノロジーです。ただの機械ですよ、みなさん!

テクノロジーに自分がどう生きるか、その答えを預けちゃうなんて、ダメダメ!

しかし、その愚かな試みは、概ね失敗に終わっているようです。世界の人たちは、その嘘を見破っています。

月はそこにあるのか

科学を否定している? 馬鹿なこと言わないでください。自然は科学では分かりません、と私に教えてくれたのは「量子論」であり、アインシュタインやニールス・ボーアなのですから。

これが“異次元”なのは、アインシュタインによる、「あなたが見ていない時、月は存在しないとでも言うのか」という批判で理解できるだろう。コペンハーゲン解釈はまさに、「あなたが見ていない時、月は存在しない」という主張をしているのだ。

天才科学者の誰もが「ぶっちゃけよく理解していない」、それが量子力学である 本がすき。

科学には「月がそこにあるのか」すら、分からないのです。決めるのはあなたで、科学でもなければ、ましてや誰かではありません。

科学を信奉して生きても、私たちはハッピーになれないのです。それが、科学が教えてくれることではないでしょうか。