米国のCPIが、30年振りの高水準となりました。
労働省が10日に発表した10月のCPIは前年同月比で6.2%上昇し、1990年11月以来最大の伸びとなった。
米インフレ加速、30年ぶり高水準 バイデン氏「真正面から」対処約束 AFP
これは驚くことではありません。1年半前から、そうなることは当たり前ですよと書いてきましたし、当ブログに於ける予想遍歴において、これほど容易だったものは他にないと言えます。
今回、実はシンプルで簡単な経済の本質を、誰でも理解できるように書くということに挑戦してみたいと思います。しかし、それは経済学を知る人からすれば、異端なものとなるでしょう。
そしてこの記事は、嘗て当ブログの経済予測の先生にもなっていた稀代の経済学者、ジャネット・イエレン米財務長官への挑戦状でもあります。
奇妙な現実
世界的にインフレ進行が鮮明になってきましたが、特異な状況はそのこと自体ではなく、インフレ率の上昇が国際政治、経済上の長年の目標とされてきたにも関わず、達成を喜ぶ場面を誰一人目撃していないということです。
「周りを見渡すと、ガソリンからパンまであらゆるものが高くなっている」とバイデン氏は述べ、「賃金は上がっているものの、われわれはまだ課題に直面しており、これに立ち向かわなければならない。真正面から取り組む必要がある」と続けた。
それまで目標にしてきたことが、達成直後に問題に変わってしまうことって世の中にあるんでしょうか?
素敵な伴侶を見つけて、幸せな結婚生活を営むことが人生の目標だったのに、理想のお相手との結婚の次の日から、それが問題に変わってしまったというくらいの、とっても奇妙な話です・・・すいません、例えが下手すぎました。
まあ、とにかく、これはとってもおかしな現実なのです。
経済の理解に必要なもの
経済的な問題は難しくて素人にはよくわからない。そのような声を聞くことがあります。しかし、安心してください。経済の理解は、決して難しくありません。それにプロと呼ばれる人でも、その本質は全く分かっていません。
1年半前に、こんなことをしたら過度のインフレになってしまうって警告した専門家って、どのくらいいました? あんまり、見かけませんでしたよね。冒頭に書いた通り私にとって、これはかなり容易な予想でした。そうでなければ「当たり前」なんて表現は、使いません。
正しい経済を理解するのに必要なのは、頭の良し悪しや知識の量ではなく、ある種の覚悟です。
白川方明・前日本銀行総裁は8日のオンラインセミナーで、主要先進国の中央銀行がゼロ金利制約に直面する中、主流派経済学とその金融政策の処方箋の有効性に疑問が浮上しつつあるとの認識を示した。
主流派経済学の金融政策、有効性に疑問符=白川前日銀総裁 ロイター
主流経済学は間違い、何ならデマだよねって言う現実を受け入れる心構えです。それがあれば、経済は誰にでも理解出来ますし、予測は誰にでも可能です。
なぜ専門家がまったく予測出来ないかと言うと、間違った理屈を誰よりも固く信じ込んでいるからです。
シンプルな経済論
経済を理解するには、まず「経済とは何か?」を知りましょう。
日本語の「経済」は英語の “economy”の訳語となっているが、このeconomyという語は古典ギリシャ語の οικονομία(家政術)に由来する。οικος は家を意味し、νομος は規則・管理を意味する。従って、economy の本来の意味は家庭のやりくりにおける財の扱い方であるが、近代になってこれを国家統治の単位にまで拡張し、以前の意味と区別して政治経済学(political economy)という名称が登場する(この名称は後にアルフレッド・マーシャルによって economics と改められた。)。
「経済」 ウィキペディア
家庭のやりくり財の扱い方、この家庭って生活のことでしょうから、経済って、要は生活のやりくりのことなんですよね。生活に必要な財とは、本来は衣食住の蓄えですよね。このやりくりの最も単純な形態が、自給自足ですね。衣食住を全て一家庭で完結する。決して不可能ではありませんが、昔の人は、きっとこう考えたのでしょう。
3家庭集まって、衣、食、住、それぞれ分担した方が効率的、楽だよねって。そこから、もっと家庭を集めて、こう言うことになったんです。
「私は、皮の扱いが得意だから、靴を作る!」「じゃあ、俺は靴紐!」
これが、現代の経済システムですね。靴紐だけってズルくね? そうそう、こうすると、ズルする奴が必ず出てくるんですわ。実際、何か作ってくれればまだましで、「靴を発明したの俺です。靴を作るには俺の許可が必要です」とか言うやつが出てくるんですよ。
こいつが真の厄介者です。
まあとにかく、こうやって、経済が発展していきました。
経済悪化の原因
では、この経済システムが悪化するときって、どんな時でしょう。自給自足の場合はどうでしょう。経済の悪化は、家族が病気や怪我した時、災害が起きた時に限定されそうですよね。
次に分業システムの場合、経済の悪化にもう一つ、要因が加わります。それが紛争です。各家庭間で喧嘩が発生すると、分業がうまく回らなくなります。
あいつらが「靴のフォーマット利用料を上げます」とか言い出すと、喧嘩になり、経済が悪化します。
これが現代の高効率経済システムが、抱えたリスクです。分業になればなるほど、ハイリターンになるかもしれませんが、そこには必ずハイリスクが付いて回るのです。
そしてもう一つ言えることは、災害、紛争による労働力の低下、基本的にこれ以外の理由で、経済が短期間に悪化するようなことはありません。
物価は関係ない
主流経済学では長らく、物価の下落は経済悪化の原因であると言う説明がなされてきました。これはデマの最たるものです。
当局者が対応すべき問題は、低インフレという現象そのものではなく、生産年齢人口の減少といった構造的な要因であると指摘し、「デフレや日銀の対応不足が日本経済の長期停滞を招いた」との、かつての欧米当局者やエコノミストの見方を批判した。
「デフレが経済停滞の理由ではない」と最近になって語り初めたのは、前日銀総裁の白川氏だけではありません。
まず、インフレと生産性向上の関係を検証する前に、海外の経済学者が出している論文を読んでみました。結論から言うと、インフレは経済成長率にプラスになる場合もあれば、マイナスの影響を与える場合もあり、時には中立の場合もあります。
要するに、インフレと経済成長率の関係は複雑すぎるとされているのです。コンセンサスがあるとすれば、「低いインフレ率は重要な要因だが、それ単体で経済成長を決定づけるほどの要因ではない」くらいです。
まとめると、経済成長率とインフレ率には、確かに相関関係があります。しかし統計分析の結果、その因果関係は不安定かつ極めて弱いことが証明されているということです。
歴史が暴く「インフレなら経済成長」という妄信 東洋経済オンライン
総じて物価が原因で、経済がよくなったり悪くなったりすることはない、ということです。これまでも書いて来た通り、物価の変動は原因ではなく、結果なのです。
客観的に検証すれば、インフレは健全な政策パッケージの結果であって、経済成長の原因ではありません。
インフレを目標にするということ自体が、愚の骨頂なのです。ですから、その達成を決して誰も喜ぶことはないのです。
なぜインフレになったか
そして、なぜ欧米諸国がなぜインフレになったのかは、この国が教えてくれます。
●国家が国民全員に一律にお金を配ったら、基本的には誰にも配らなかったのと同じだ。
●アメリカはコロナで全国民に一律現金を配ったが、あれは選挙のためだ。
●全国民に一律に現金を配ることができるほど中国の財政は潤沢ではない。1人あたり1,000元配ったら国家は一度に1.4兆元を支出しなければならず、国家財政が持たない。赤字が増え、国民が自分自身からお金を借りて自分自身にお金を配っているという状態になる。すなわち「羊毛は羊の体にしか生えない」のだ。
「羊毛は羊の体に生える」と「バラマキ」を戒める中国――日本の「成長と分配」は? YAHOO!ニュース
現金を空からバラ撒いたからです。空から降って来れば、それがなんであれ価値は当然下がります。ルイ・ヴィトンだろうと、美女だろうと同じです。
ですから給付金は100%、超超愚策です。日本政府はそれが分かっていて、なんとか超愚策くらいに留めようとしているように見えます。
一律給付に喜ぶのは、ただの馬鹿か、お金に目がくらんだかのどちらかですから、恥ずかしいので止めましょう。
しかし、なぜこうも給付、インフレ政策への圧力が強いのでしょうか。その理由は、ここに書いてありました。
QEは資産価格や不動産価格を押し上げ、住宅を購入する余裕のない低所得層や若年層を犠牲に、富裕層に利益をもたらしたとの批判的な見方もある。
同委員会のマイケル・フォーサイス委員長は、「今や国内総生産の40%に拡大したQEの規模と長期化は、徹底的な調査と説明責任を必要とする」と指摘。「しかしこれまで、英中銀に疑問の目が向けられることはほとんどなかった。今後は英中銀には一段の透明性が求められ、QEを適用する正当性や効果を示さなくてはならない」と続けた。
英中銀の資産購入、インフレ上昇や格差拡大のリスク-英上院が点検 ブルームバーグ
予測と心得
最後にここまで書いて来た根拠をもとに、改めてこれからの予測をしてみたいと思いますが、もちろん、いい感じにはなりません。
格差は更に拡大、スタグフレーション化が鮮明になるでしょう。
カネをばらまいて、消費を刺激するのは最も愚かな政策だ。
消費が減った分野があるが、それは行動を制限したからだ。だから、その制限を止めればいい。
いま必要な政策は何もしないこと ニューズウィーク日本版
ここ数年で経済が大きく悪化したのは、政府が何もしなかったからではなく、余計なことをしたからです。ましてや、ウィルスのせいなんかではありません。国民は政府に行動を求めるという、愚かなことを直ちにやめるべきです。
国民は、政府に何もさせるな!
それが、自分たちの生活を守る最善の方法だと認識すべきです。
これらの最低限必要なことを何もやらずに、無駄な過剰な制限だけかけている。
弱い者いじめだ。
強いものには歯向かえず、弱いもの、黙っているものには圧力をかけ、負担を強いる。
強いものに何もできないなら、すべて、何もするな。
世界に比べて、幸いなことに日本政府は、弱い物いじめを自ら積極的には行っていないようです。ありがちですが、ただいじめっこが強いため、同調しているに過ぎないのです。
私たちが、いじめっ子に抵抗するために何が必要でしょうか。
進化の過程では、支配的なリーダーがいる集団のほうが勝ち残る確率が高い。しかし問題が複雑になると、支配的な環境が悪影響を及ぼす場合がある。ここまで見てきたように、集合知には多様な視点や意見―反逆者のアイデア―が欠かせない。
『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』 マシュー・サイド
それは、異質なものを受け入れる勇気です。それが支配からの脱却をもたらします。
当ブログは、これからも反逆者ブログであり続けたいと思います。