理由なき暴落 「ロボット・トレーディング」の暗躍

ECBと日銀の政策発動によって、ようやく落ち着きを見せ始めている金融市場ですが、年初からの世界の株価の暴落は凄まじいものでした。あの「リーマン・ショック」並みの暴落だということなのですが、昨年の夏もそうですが、理由がはっきりとわかりません。原油安、中国の景気減速懸念などにその一端はあるとしても、「リーマン・ショック」級の暴落が近い間に2度もやって来る理由としてはあまりに不可解ではないでしょうか。

昨年の夏と、今回の年初からのショックには名前すらついていません。なぜに、”理由”もないのに、そんなショックが起きるのかというと、その裏には「ロボット・トレーディング」の暗躍があると言われています。

人工知能を駆使したコンピューターによる超高速取引です。彼らが、昨今の常軌を逸した動きの主犯だということに疑いの余地はないのでしょう。

私はここに一抹の恐ろしさを感じ始めています。その点を今回は書いてみたいと思います。

 

世界経済の見通しはFRBにも分からない

米連邦準備制度理事会(FRB)のフィッシャー副議長は1日、最近の金融市場の混乱や中国をめぐる不透明感が米国経済にどの程度影響を及ぼすかの判断はあまりにも難しく、米金融政策当局者は次の行動を決められないとの見解を示した。

フィッシャーFRB副議長:世界に不透明感、次回の行動まだ不明

こんな記事がブルームバーグに出てました。以前の記事に、「利上げ後の世界経済の情勢なんて誰にだってわかりっこない」と書きましたが、これはまさにそういうことではないでしょうか。

経済とは理論で先行きを決められるものではなく、人が「この先景気がよくなる!」と思えばよくなるし、「これは悪くなるな・・」と感じればその通り、悪くなる。そういう性質のものではないでしょうか。

今は、世界経済が悪くなりそう・・とみんなが感じ始めている時であり、そんな”空気”を無視してFRBが利上げを断続的に行うことは考えられないと記してきました。FRBが利上げ出来ないことは株高要因です。やはり株価はバブルの方向へ向かっていると考えていいのだと私は思います。

イエレンの利上げの本当のワケ

投資家からの絶大な信頼をバックに9年半ぶりの利上げを成功させた我らが、「イエレン先生」ですが、彼女が利上げを断行した本当の理由は、本質的に無理な経済の先読みではなく、「利上げを行う!」という自らの言葉を裏切らないためだった可能性が高いのではないでしょうか。

それが即ち、マーケットに対してのイニシアティブの発揮につながり、そして投資家からの信頼の獲得という、世界経済のリーダーとして、なにより重要な要件を満たすと考えたのではないでしょうか。信頼が失われては、絶対にうまくいかないからです。

イエレン先生の最大の敵はロボット?

利上げ後の経済の先行きは誰にも分からないとすれば、それは投資家の不安となります。そして、漠然とした不安心理というその弱さに付け込んでくるのが、最新の人工知能、アルゴリズムを駆使した「ロボット・トレーディング」です。

心を持たない彼らの合理性だけの非情な取引は、人である投資家を委縮させ、実体経済にまで悪影響を与えかねない存在になりつつあります。

NYダウでも過去に何度か、「ロボット・トレーディング」が原因と思われる謎の暴落が起きており、それを「フラッシュクラッシュ(瞬間的な暴落)」と呼ぶそうですが、こんなことが頻繁に起きては、人は安心して投資できません。そして、投資が減退しては、経済も衰退します。

と言うことは、世界経済の先行きはすでに「ロボット」に握られ始めているということが言えないでしょうか。彼らが、マーケットを暴力的に荒らすことによって、回復途上にある世界経済の腰を折ってしまうということは十分に考えらるむしろ今後の最大のリスクと言ってもいい状態なのではないでしょうか。

事実、FRBは、ロボットのせいで、利上げを諦めざるを得ないかもしれないのです。

 

世界経済のリーダー、投資家の味方のイエレン先生の最大の敵は中国の景気減速ではなく、ロボットという合理性しか持たない非情な不気味な存在なのかもしれません。その戦いは私たちの未来を象徴した出来事と言ってもいいでしょう。

「ガンバレ! イエレン先生。ロボットなんかに負けないでください!」

と私は彼女を応援したいと思いますが、皆さんはどうでしょうか。