イギリスの中央銀行にあたるイングランド銀行のカーニー総裁が、昨日追加緩和を示唆したと言うことで、イギリスの株価指数、FTSEは、なんと年初来高値を更新しました。NYダウもこれを受けてほぼ高値に戻っており、EU離脱もどこ吹く風、と言う状況になっています。当ブログでは、「イギリスのEU離脱でもダウはほとんど下げない」としてきましたので、これは的中!とさせていただきます。後から振り返れば、角度は急ですがチャート的にはいい押し目程度にしか下げてないですよね。
しかし、これに比べてだいぶ戻りが鈍いのは日経平均株価です。急落のうちの半分程度しか戻っておりません。この原因は何かというと、もちろん円高なのです。円は更なる下落も心配されており、80円台か? なんて声もあったりしますが、この円高が今年中にも再び円安方向へ転換するのかも? と言うお話を今回は書いてみたいと思います。お話しですから、フィクションですよ(笑)。
目次
FRBの利下げはあるの?
本題の前にアメリカ株の動向から見ていきたいと思います。何度も書いてきておりますが、とにかく注目すべきはダウの圧倒的な強さです。著名な投資家やアナリストの方から下がるという言葉を何度も聞いたのですが、一向に下がる気配がありません。イギリスのEU離脱と言う大悪材料でもあれっぽちしか下げないのですから、もう下がらないと考えてもよさそうなものです。
そのダウの高値を支えていると思われるのが、ドル安です。FRBが利上げ見通しを引き下げているため、ドル安が進み株価を支えていると考えられます。そんな中、イギリスのEU離脱に対する経済への影響から、逆に「利下げ」を期待する声も出てきていると言う状況です。私も7月の利上げに関しては99パーセントなく、その後もしばらくないだろうと思うのですが、しかし、それにしても利下げはいくら何でも行き過ぎではないでしょうか。
天才、イエレンの発言を軽視すべきではない
私がそう考える根拠は、イエレン議長のお言葉にあります。当ブログでは早期からイエレン議長は相当凄い人ではないかと言うことをお伝えしてきましたが、最近その考えが強くなっています。なぜなら、アメリカ株がこうなることは、彼女の発言を拾っていけば予言されていたと感じるからです。
アメリカの経済指標があまりよくないことは気になりますが、この状態で利下げなどしてしまえば、リミッターが外れて米株は暴騰してしまうリスクが大きいのではないでしょうか。
「今後数か月以内に利上げの可能性」という議長の言葉を軽視すべきではありません。例え実行に至らなかったとしても、それは彼女の意志に他ならないからです。イエレンはその発言、顔つき、そしてマーケットの反応から、私にはとても凡人とは思えないのです。そんな先生が、「利上げしなければバブル化する」と言っているのですから(実際にこう明言しているわけではなく、私の解釈ですが)、実際に利上げ出来ていないのだから、これからバブル化すると言う考えは普通ということになるのです。
イエレン議長を評した第三者の厳しい目を載せておきましょう。
「サンフランシスコ連銀総裁時代は、2008年の金融危機の数年前から不動産市場のリスクについてたびたび警鐘を鳴らしていた」
毎度の吉田恒さんの解説です。『世紀の空売り-世界経済の破綻に賭けた男たち』の中でも、所謂サブプライムローンに関して、当時関係者が誰もその実態を掴んでいなかったことが克明に描かれておりますが、イエレン先生はその危機の表面化の数年前からリスクを把握し、利上げを主張していたそうです。
他者をねじ伏せる力でなく、他人に耳を傾け、どうしたらその意見を尊重できるのかを理解しており、コンセンサスの獲得方法を知っている人物が必要なのだ。 OECDの経済政策委員会の委員長だったころ、私はイエレン氏が米国を代表し、いかに効果的に周囲に尊敬されているのかを目の当たりにした。その後、彼女 は名声を博し、今日では、世界中の中央銀行総裁たちから多大なる尊敬を受けている
この記事に書いてあることは、私が言いたかったイエレン評をほとんど表しています。事実イエレンは就任以来、マーケット、投資家に対して見事にこの通りのことを実践しております。このことは非常に重要なことだと私は考えます。そして、これは凡庸な人間にはとても容易に真似できることではないはずです。
今後を決める重大要素はやはり米大統領選挙
EU離脱ショックからは世界の株価は回復基調が続いており、多少の円安に戻ることが予想されます。しかし、同時にリスクオンのドル安ですから、105円は超えるかもしれませんが、110円を超えるような動きはとても難しいでしょう。そして更なる先はどうなるかと想像してみると、なんといってもアメリカ大統領選挙が控えています。
特に共和党のトランプ候補は極端なドル安政策を取ることを標榜しており、これを織り込みに入ると、先日の安値を割れる可能性もあるのではないでしょうか。そしてトランプ大統領実現となると、95円程度まで行っても不思議ではありません。
イギリスのEU離脱はトランプ氏にどう影響する?
大統領選挙を読むことは不可能なのですが、私はイギリスの離脱がトランプ氏に不利になる可能性はあるのかなと思っています。この結果の結果によって、アメリカ人が少し冷静になる可能性はあるでしょう。事実スペインの極右政権はイギリスの選挙後に失速したと聞きます。
もし、仮にトランプ氏の勢いが大きく失速したとしたらどうでしょう。それは米ドルに対してすでに下がりすぎの状態の円には戻りのきっかけとなるのではないでしょうか。
今年の今後の楽観シナリオ ドル円すでに底打ちも・・?
そして、以前から円安の後の円高局面は過去には1年~2年続くのが普通だったと言うことをお伝えしてきました。2015年の8月からドル円の円高が始まっていると見ても、大統領選挙の終わる11月にはすでに一年以上が経過していることになります。そして秋口には、政府主導の経済対策+日銀緩和のセット技の噂もあります。
そして、FRBは大統領選挙が終わったあとには、利上げに動く可能性もあるでしょう。利上げが無くなったと考えるのは、イエレンを甘く見すぎではなないでしょうか。これらをまとめて考えれば、円高は今年中に転換してもおかしくないとなるわけです。そして、大統領選挙の情勢によってはと言う条件付きですが、ドル円は先日の瞬間的な100円割れで底を打ち、同時に日経平均株価も底を打っている可能性もあるのではないか、と考えるのは少々楽観的過ぎるでしょうか?
もし、円安への手がかりがあるとすれば、それは豪ドル円の動きではないでしょうか。米ドル円よりも半年先に円高に移行した豪ドルは先に円安に転換するとも考えられるからです。
対して悪いシナリオは今、多く言われているアメリカ経済のリセッションによるダウの大幅な下落です。著名投資家やゴールドマン・サックスなどが声高に叫んでいます。強すぎるダウがこれから大幅に調整するのか、それとも結局下がらずにFRBの懸念通りこのまま騰勢を続けるのかと言うことが、今年の今後の大きな鍵を握っていることは間違いなさそうです。
そして、今回のイングランド銀行の動きに象徴されるように、各国の経済政策は競争するように総動員となる可能性が高まっています。そんな中で株価がそれに逆らって暴落するようなことがあるのか、というところは注目すべき点ではないでしょうか。
私は上だと思ってますが、利上げがないんだから上昇!ってシンプルな予測ですが、いかがでしょうか・・?