先日、9月度の雇用統計の発表があり、内容は少々低調だったということで、円高に動いていたようですが、これはそれほど材料視されない、前回同様そんな風に思っています。雇用統計は今後は為替の重要指標としての役目を終え、徐々にその存在価値は薄れていくのではないか思います。なぜなら、これから先のマーケットには雇用はもうあまり関係ないと思うからです。

それよりなにより、今年は何といってもアメリカ大統領選挙ではないかと、以前よりお伝えしてきましたが、それが近づくにつれ、やはりといった感じになってきたのではないでしょうか。そして、この週末の間にトランプ候補に不利なニュースが出てきたようです。もしかしたら、マーケットは事前にそれを掴んでいたからこそ、いち早く円安に動いてきていたのかもしれません。そして、マーケットに嫌われている彼は、選挙が近づいてきたこのタイミングで続々とこの手のニュースが出てくる可能性があるということなのでしょう。

トランプより重要なのは・・

「女性蔑視発言」を行っていた動画が出てきて、共和党内は大騒ぎになっているそうですね。しかし、こんなものを見なくても、残念ながらトランプ氏が米大統領に相応しい品格を持ち合わせていないことは明らかです。私も最初活字だけで見ていた時は、「おもしろそうじゃないか」なんて思っていたのですが、実際その姿を見ると、申し訳ないですが、だめだな・・と思いました。とてもリーダーとしての格を持ち合わせている人物には見えないのです。

そんな彼ですから、逆に例え大統領になっても、大したことはできないし、マーケットに対しても大した影響力はないと今は考えております。しかし、気になる点が一つだけあります。それは、現FRB議長のイエレンを議長の座から外すと公言していることです。これが実際実行されてしまうと、マーケットの混乱要因になる恐れがあります。トランプは大した人物ではないと思う訳ですが、対してイエレン議長は大した人物なのです。彼女を外せばイエレンショックが起こる可能性があると思います。

過去のFRB議長が就任直後に試練のようにマーケットから受けてきた「~ショック」をまだ彼女は受けていないと言われます。果たしてこれが偶然でしょうか? それを投資家に思いとどまらせるほど彼女は強い尊敬を受けている、これはその証拠と考えた方が自然ではないでしょうか。それとも、彼女が議長になってからというもの、一切何事もなく平穏無事な日々が続いていただけなのでしょうか・・。

 

トランプ敗北を織り込み始めたマーケット

トランプ氏が不利は情報が出てきたからと言って、選挙はやはり結果が見えるまで分かりません。そのことは6月のイギリスのEU離脱選挙で教訓を得ました。実際、少しあの時の状況と似ています。残留派の議員が殺害され、残留だろうとマーケットが踏んで先行して上昇を開始したところで、カウンターパンチで離脱を食らったあの状況です。

そして、今後の株高予想を掲げる方も増えてきていることも不安要因の一つと言えるでしょうか。私がそのような予想を書いていた7月、8月はそんなことをおっしゃる方なんて人っ子一人いない状態だったのですが・・。とはいえ、そう言う方が増えたからと言ってならない、ということはないでしょうし、当ブログは引き続きその予想を維持したいと思います。

前回は少々、弱気な記事を書いてしまいましたが、その要因はクリントンの健康問題でした。その後に9月のFOMCがあったのですが、イエレンの発言から円安に動き出していたそれは、利上げのトーンダウンによって、再び円高方向に戻されてしまいました。

 

イエレン VS トランプ

8月末に突如強まった円安トレンドはイエレンが起点なので、止めるならイエレン自身と書いたのですが、その通りに9月のFOMCでなぜか彼女は早々にそれを打ち消してしまったのです。そして、イエレンはこう言いました。

「FRBが政略的だという懸念は一切ない」

「選挙に向けて、株価下落を避けたいオバマの意向で利上げを先延ばししているのではないか」

こうトランプ候補に指摘されたことを受けてです。「利上げと政治は関係ない」というイエレン先生の言葉は100パーセント嘘だと思いますが、ここから考えられることは、イエレン先生はずっと戦っていたわけです。自分を外そうとする変な大統領候補と。そう考えれば、今年一年の不可解なFRBは説明がつきます。イエレンの6月の利上げに対する奇妙なちゃぶ台返し、そして今回の9月も納得がいくのです。もちろん、証拠はありませんが。

選挙の結果は読むことが出来ず、最後まで分かりません。トランプが如何に変な候補であっても、クリントンにはそれすら圧倒できる魅力がありません。しかし、イエレン VS トランプという構図で考えれば、イエレンが負けるはずがない。少々おかしな考えかもしれませんが、個人的にはそのように感じています。皆さんはどっちが勝つと思いますか。

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この画像は少々悪意ありでしょうか(笑)。

戦いが終われば”普通”に戻る

何はともあれ、選挙のせいで今のマーケットは”普通”ではないことは明らかなようです。特に「リーマン・ショック並み」の円高は、「日銀の手づまり」という材料だけの説明では無理があることは繰り返し書いてきた通りかと思います。「リーマン・ショック」=「日銀への失望」ではないですよね。どう考えても。

では、選挙後の普通とはどんなものでしょうか。更なる円高と考える方も多いようです。しかし、私はやはり円安方向ではないかと考えています。

「今は追加緩和は必要ない」

と黒田総裁がワシントンの講演で答えたというニュースも流れていました。これを受けて明日のマーケットがどう動くのかはわかりません。しかし日銀には、もはやトレンドを創る力は残っていないと思います。

鍵を握るのはやはりFRBです。FRBは本当は利上げをしたくて悲鳴を上げているような状況だと私は感じています。それが彼らの本音だろうと。マーケットを普通に戻せるのは彼ら、その中でも絶大な影響力をもつイエレンではないでしょうか。

「来年には115~120円の円安に戻るだろう」

株式評論家の杉村冨生さんがそうおっしゃっていました。私もそのように思っています。それが今の状況に対する普通ではないかと私は考えているのですが、果たしてどうでしょうか。