国際政治上に、非常に興味深い事件が起きました。例の「プリコジン事件」です。この事件は、非常に難解です。私の頭にある仮説が浮かんでいましたが、果たしてそれを書くべきか、迷っていました。しかし、思い切ってその線で書いてみることにしました。

この事件は、”最上層部”に対する「プーチン派」の反乱かも知れません。

結果として、何が起きたか①

まず、もっとも重要なことは、この事件の結果として何が起きたか、でしょう。その情報は現時点で判明している範囲に限られるため、この記事は時期尚早かもしれないと感じていたことが、公開を迷った理由です。

時間の経過とともに別の事実が出て来て、この記事が完全な見当違いになる可能性は十分あります。しかし逆に、追認するような情報が出てくる可能性もあるわけですね。

では、今出ている事実から見てみましょう。国際情勢アナリストの北野氏が、それをうまく纏めてくれていたので、引用します。

「プリゴジンの乱」は、たった一日で終わった。しかし、プーチン政権への影響は甚大だ。

まず、「反乱」が起きたことについて。

プーチンは、「完全独裁者」で、ロシアのすべてを掌握しているのではなかったか? ところが実際には、「プーチンの料理人」と呼ばれる男の反乱を止めることができなかった。

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まず、この事件により「プーチン神話」が崩壊したと言う見立てです。どう思います? はい、私もそう思いますし、皆さんもそう思う人が多いでしょう。しかし、私の見解が変わっているのはここからで、「プーチン神話」が崩壊して、困るのはプーチンではない、と思うのですね。

ここ最近の記事で私は、プーチンは「完全独裁者」などではなく、それは単なるプロパガンダだと主張してきました。それは合っていたことが、証明されましたね。

それに、そもそもプーチンさんて「俺は、完全独裁者なんだ」って、世界中の人に思われたいんですかね? 思われたいとすると、なんでですかね? なんかいいことあります? あるなら、他の人もそうすると思うんですけど、「俺は独裁者だ!」って自慢している人っていないじゃないですか。

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ほら、習近平さんも独裁者って言われて激怒したんですって。て、ことは「独裁者」って思われたくないわけです。プーチンさんは変態だから別、なんすかね? 

私には、独裁者だって思われていない独裁者の方がずっと得なように思われるんですけどね。ですから、プーチンさんが独裁者じゃないってバレて困るってのは、変な考えじゃないすか?

じゃあ、一番困るのはだれか。それは、さっき書いた通り、「独裁者だと思われていない独裁者」ですよね?

「2月24日に起きたことは日常茶飯事にすぎない。国防省は国民と大統領を欺こうとし、ウクライナからとんでもない侵攻があり、北大西洋条約機構(NATO)全体でロシアを攻撃することを計画していると説明していた」と述べた。

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プリコジンさんは、こう言います。「ウクライナ戦争を始めたのは、プーチンではなく、軍の上層部だ!」 あら~盛大にバラしちゃってるね~。当ブログ読者の方は、すでに知ってたことですけどねえ。

プーチンさんももちろん、嘘に気づいていると思いますよ。でもその嘘に付き合わないと、自分がやられちゃうことも知っていたでしょうね。

プリコジンさんによれば、独裁者だと思われていない独裁者、それは軍上層部なんです。付け加えるとすれば、”最上層部”だと思いますけどね。

結果として、何が起きたか②

そしてもう一つ、重大な事実ですが、プリコジン率いるワグネルは、結果的にロシア軍に統合されてしまったということなんです。結局、反乱はしたものの、「最上層部」には太刀打ちできずに潰されたということなんですね。

そう、「最上層部」は「最強」なのです。

プーチンは、ショイグ国防相側につき、プリゴジンは追い詰められた。

「このままでは、ワグネルはロシア軍に吸収され、自分は逮捕されるか、殺されるだろう」

彼は、「プーチンに逆らった者たちの末路」を思い浮かべたに違いない。

「プーチン神話」をたった一日で瓦解させた「プリゴジンの反乱」とは、いったい何だったのか? 現代ビジネス

北野先生は、プリコジンはプーチンに逆らったと言います。確かに、そうなんです。普通に見ればね。でも、私にはそうは見えません。

プーチンは24日朝、「裏切り者を罰する」と宣言した。ところが同日夕方には、プリゴジンとワグネルを許し、「犯罪容疑を取り下げ、安全を保証する」と変わった。

このことは、「ロシアがまったく法治国家でないこと」を世界に示した。ロシアは人治国家だが、処分を決めるプーチン自身の意見も、一日で変わる。

ところで、プーチンは、なぜ「裏切り者」プリゴジンに寄り添ったのか?

仮説

なぜ、プーチンはプリコジンに寄り添ったのか? 私の答えはこう。プーチンとプリコジンは、今も同志だからです。

国防省やロシア連邦保安局(FSB、旧ソ連のKGBの流れをくむ諜報機関)は官僚的で、必ずしもプーチン氏の思い通りには動かせません。

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プーチンの「敵」とは、いったい何なのでしょうか? 私は、彼をスターリンと同じとは見ていません。

──ワグネルとそのトップのプリゴジン氏は、プーチン氏の私的部隊、といったイメージですね。

思い通りに動かせない「最上層部」と、自分の部隊のどっちが可愛い? これは本人に聞いてみなくても分かりそうなものです。

ロシアの英字紙「モスクワ・タイムズ」は、ロシア国防省の情報筋の話として「スロビキン氏は、プリゴジン氏側に付いたためすでに拘束されている」とする見方を伝えたほか、イギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズも29日、複数の関係者の話として「スロビキン氏は数日間、連絡が取れない状況であり、拘束されている」と報じました。

(中略)

また、スロビキン氏が反乱を知ったうえで黙認していたのか何らかの手助けをしていたのかが焦点だとしたうえで、「もともとこの反乱はプリゴジン氏とロシア国防省や軍との対立に見られていたが、実は軍の内部でも、ワグネル派と呼ばれる人たちがいて、軍の中や政権内部に対立の構図が根深く潜んでいた可能性がある」と指摘しました。

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これは、ロシア軍内の「保守派」と「ロンドン派」による闘争の可能性が考えられるのではないでしょうか? プーチンの心はどちらにあるのか? これは正義の話ではないですよ。

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さらに、そこに外国の「最上層部じゃない軍勢」も加勢した。世界中に「プーチンや習近平が弱い」と分かると、最も困るのはだれか?

答えは簡単です。

なぜなら、我々はプーチンや習が怖いから、憲法を改正して、軍備を拡張し、核さえ持とうとしてるのです。すべては、「悪魔の独裁者に対抗するため」です。

プーチンはワグネル・グループを使って紛争地帯に大混乱をもたらした。今、彼らは彼に噛み付いてきている。

飼い犬に手を噛まれたのは、プーチンじゃなくて君達じゃないのかね?