さて、つい2日前にプリコジン事件に対して、ある仮説を書きましたが、これを補完する形でもう一つ書いてみたいと思います。

この事件を通じて「プーチンの心」が見えた様な気がしているのです。それは正義などではなく、とても人間らしい感情です。

ある居酒屋での会話

「ちっきしょう、ふざけやがって」

「どうした? いつも冷静な君にしちゃ珍しく、えらい荒れてるじゃないか?」

「俺の課が解体させられる」

「ああ、聞いたよ。まあ、気持はよく分かる。君の営業2課が、プロジェクトの売り上げの大半を稼ぎだしてきた実行部隊であることは、社内の誰もが知るところだ」

「なぜだ?」

「君だって、勘付いているだろう? 上の連中は、君が力を持ち過ぎていると考えたのさ」

「・・・黒幕はだれだ? 専務か? なんとなく、ここ最近、俺に対する態度がよそよそしい気がする」

「それは分からん。しかし、上層部の誰かの思惑であることは確かだろう」

「このままでは気がすまん」

「おいおい、変な気は起こすなよ。逆らったところで、いいことなど何もないぞ」

「わかっている・・しかし、俺に考えがある」

「優しいプーチン」の理由

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領といえば強面で知られ、特に最近では民間軍事会社「ワグネル」のエフゲニー・プリゴジンによる「反乱」発生もあって、周辺の緊張感は高まっている──はずだったのだが、意外なほどフレンドリーに市民と交流する姿が動画で公開された。プーチンは熱狂する市民と握手を交わすどころか、女子学生にキスをするほどのサービスぶりで、普段の様子とは大きく異なるその姿に、「これは影武者だ」という憶測まで飛び交う事態となった。

女学生にキス! ロックスターみたいな「普段と全然ちがう」プーチンの姿に、「やはり影武者」の声 NEWSWEEK 日本版

「優しいプーチン」の正体は、影武者? そんなことは、まったくどうでもいい話。問題の本質は、なぜ、このタイミングで「優しいプーチン」のイメージ戦略を打ち出してきたのか? ということです。

先日公開した記事の中で、今後出てくる展開が、記事内容を否定する可能性もあるが逆に肯定する可能性もある、と書きました。

この内容は、追認するものだと私は認識しています。意味が分からなければ、前記事をもう一度読んでもらえれば幸いです。

トランプ氏はこれまで、強権支配を続けるプーチン氏をたびたび称賛してきた。インタビューでは、プーチン政権の終わりについて「代わりになる者がいるか分からない。良くなるかもしれないし、一層悪くなるかもしれない」と述べた。

プーチン氏「弱くなった」=ウクライナ侵攻で米仲介主張―トランプ氏 jiji.com

そう、「上層部」にとって、プーチンは常に強権でなければならなかったはずです。今回の一件が、彼らにとって、あまり都合のいいものではなかったことが、お抱えのスポークスマンの発言から読み取れる気がします。

親衛隊を解体せよ

そして、プーチンの「親衛隊」が、「上層部」にとって邪魔な存在だったことが、この男のツイッターで示唆されているように思えます。

プーチンはワグネル・グループを使って紛争地帯に大混乱をもたらした。今、彼らは彼に噛み付いてきている。

「上層部」は、プーチンの親衛隊がこれから作戦の邪魔になると判断し、排除に動いたのでしょう。

実はこのプリゴジンの反乱はプーチン政権の転覆を狙ったクーデターではなく、ショイグ国防相が6月末までに雇い兵と直接契約を結ぶよう命じたことが原因だ。「ワグネル」も対象としていた。これは「ワグネル」を実質的にロシア国防省の管轄下に置くことを意味する。

プリゴジンの反乱を手引きしたのは誰か?日本では報道されない真実とプーチンの次の一手=高島康司 MONEYVOICE

普通に考えて、プーチンがこれを面白く思うはずがありません。彼は「上層部」に何と答えでたのでしょうか。彼の口から言葉は、恐らくみんなの場合と一緒です。

しかし、一つ違うのは、彼には一矢報いる知恵と力があったということです。

「ワグネル」の組織としての独立性に強く拘るプリゴジンが抗議する目的で引き起こしたことであり、いわゆるクーデターではなかった。現国防相のセルゲイ・ショイグとロシア軍参謀総長のヴァレリー・ゲラシモフの即時辞任を要求することだったようだ。

ワグネル事件の黒幕はプーチンだ、と見ます。

「極」に引きづられる境遇

ところでロシアには、重要なリベラルの潮流はない。しかし、ロシアの支配エリートには、復活した 「大ロシア 」を夢見る右翼ナショナリストの強力なグループを生み出している。この潮流では、いくつかの異質なグループから合体しつつある。

(中略)

彼らはプーチンの軍事的な臆病さと、プーチンが選んだ司令官たちのパフォーマンスの低さについて不平を言っている。

どうやら、ロシア内ではプーチン氏はリベラル派、みたいですね。ロシアのこの政治状況を見ると、似てるなあって思うんですよね。どこにって、日本にです。

2021年9月の自民党総裁選挙から見てきて、ご本人が一番やりたいのは「新しい資本主義」だった、と私は感じました。就任前、「新しい資本主義」とは、行き過ぎた株主資本主義を見直すということで、その流れは所得倍増だったんですが、今、それもない。

前原誠司氏「安全保障で政界再編は起こりうる」 東洋ビジネスオンライン

ところで、所得倍増ってどうやってやります?

それは岸田氏が掲げた通り、株主資本主義を見直す、それが唯一絶対の方法なのです。所得倍増、即ち賃金を上昇は、企業収益の削減そのものだと言えるでしょう。

つまり、株価が下がる、株主の取り分が減るということなのです。この単純明快な構図をほとんどの人が理解していません。

資本家と労働者がウィンウィン? そんなの夢物語です。個別ではありえますよ。ある会社は、業績がうなぎのぼりで賃金上昇し、株価も倍増とかね。

でも、社会全体で、それはあり得ません。

ですから、国単位で所得倍増をやるには、企業収益を労働者に還元するしかないのです。しかし、それによる業績悪化は、社会的に悪とされていて経営者、とくに上場企業の経営者が、その強い「思い込み」に単身で対抗することは、ほとんど不可能でしょう。

ですから、その音頭を政府が取ろうと言うのは、大正解だと私は思いますよ。

しかし。。

憲法改正を言っているのは知っていますが、魂がこもっていないと思いますね。

ロシアや中国などの新、悪の枢軸国が攻めてくるだとか、このままだと人口が減って、日本が亡くなっちゃうとか「極論」に躍らせれた人々に引きづられた形で、全くやりたくもない愚策をやらされていると言うのが、現実です。

日本とロシアの政治状況は一緒だなあ、とつくづく思うんですね。日本の方が全然、マシですけどね。

プーチン大統領は、感情を文章にして表すことがまれです。このような弔電を打つことは珍しく、安倍氏に対して抱く心の底からの親愛の情が、率直に表明されていると感じます。

なぜ冷徹なプーチンが遺族に弔電を送ったのか…佐藤優「ロシア政界が安倍晋三を尊敬していた本当の理由」 PRESIDENT ONLINE

ですから、その理由が、今ならはっきりわかる気がします。彼らは、似た者同士。そして、プーチンと親衛隊の秘密作戦とは、自分たちは弱い存在だと世界中にアピールすることだったのです。

名付けて、作戦コードネーム「優しいプーチン」WW