日本中が嫌韓ブームに沸いておりますね。ネットは韓国叩きの記事やコメントだらけ、テレビメディアも「レーダー照射事件」を一生懸命報じています。事実、12日付の朝鮮日報は、
「日本国内で反韓世論が全方位に拡散している」
時事通信
と報じています。でももしかして、なんだかこれ、「変に煽られてない?」って感じている方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。あなたのその感覚、きっとあってますよ。
こう書くと、今の空気からすると、韓国を擁護するつもりなのか!とお叱りを受けそうですが、右派だとか左派だとかそんなことを超えるお話を、私は今から書き記したいと思っているのです。
米朝中関係の誤解
その重大なお話に行く前に説明しなければならないことがあります。当ブログに繰り返しお越しくださっている方はとっくに知っていることなのですが、多くの人は重要部分に関して大いなる誤解をしており、ここを抑えないと先に進めないのですが、それは、「米朝中関係」に関するものです。
先日、北朝鮮の金正恩さんが、4度目の訪中をしましたが、ここに関する認識はいかがでしょうか。後ろ盾の中国が金正恩を呼び寄せ、「対米共闘」を呼びかけた、と言うのが一般的でしょうか。
しかし、はっきり書きますと、その認識は大いに間違っています。そのことをお伝えするために最適な記事がありましたので、ご紹介します。
ニューズ・ウィーク 日本版
それと同じように、金正恩委員長がどんなに訪中して習近平と会いたいと思っても、習近平の招聘状がなければ中国入国はできないのが常識だ。
しかし日本のメディアは「わざわざ習近平主席が招聘した」と、まるで「習近平が主導的に懇願して金正恩訪中があった」かのように報道し、日本国民をミスリードしている。
実際、どうだったのか。先ず、この点に関して中国政府高官に聞いてみた。
以下、Qは遠藤、Aは中国政府高官。
Q:日本では習近平がわざわざ主導的に金正恩を招聘したような報道がなされていますが、実態はどうなんですか?
A:何をバカなことを言っているのか。外交のイロハを知らない者たちが言っていることになど、耳を傾ける価値もない。当然のことながら、今般の金正恩訪中は金正恩側が懇願してきた。それによって、中方(中国側)は、米朝首脳会談が近づいたなというのを実感したくらいだ。
そもそも、「こっちから呼んでね~し」、と中国政府高官さんが言ってますね。筆者の遠藤教授も同じ見解です。さらに、
習近平はいま、北朝鮮にかまっている時間などない
まあ、そうですよね。習近平さんは世界最強の覇権国家アメリカ、トランプ政権との対決に大忙し、アジアの弱小国、北朝鮮の金正恩の相手などしている暇はない、と言うのも頷ける話となるでしょう。
金正恩は金三と呼ばれています(笑)。さらに見ていきましょう。
金三が2017年まで、核実験やミサイル発射に関して、中国に対してどれだけ挑戦的なことをしてきたかを考えれば、十分反省させる必要があるだろう。
さて、この部分なのですが、皆さまの認識と随分違うのではないですか? 2017年の所謂「北朝鮮危機」が、中国に挑戦的だって? そして、その少し前にはこうも書いてあります。
Q:つまり、「米朝は話し合いをしているのだから対北朝鮮の制裁をやめろ」ということと、「北朝鮮国内の軍隊を説得するために早いとこ、一枚の終戦協定にサインしろ」という要求をアメリカに出したいので力を貸してほしいということですね?
A:その通りだ。トランプはイエスと言うかもしれないが、アメリカ政府は非常に嫌がる。通商交渉している相手は「アメリカ政府」だ。アメリカ政府が嫌がることを金正恩から引き出して、中国に有利になる要素が一つでもあるだろうか?日本のメディアの報道と、その中国研究者の分析というのは、論理破綻を来している。
これどう解釈したらいいのでしょう? 事実だけを抜き取るならば、金正恩は中国に不利益を与え、トランプを喜ばすための行動をしているってことになりませんか?
2017年の北朝鮮危機当時、メディアは黒幕は中国と言わんばかりの報道姿勢を貫いていました。しかし、私はこのブログで何度も書きましたね。この問題はアメリカ側にはメリットしかなく、中国にはデメリットしかないですよって。
そして、最も印象的なのが、「トランプはイエスと言うかもしれないが」の部分です。私の言いたいことをもっと、端的に表す事実をご紹介したいと思います。
金正恩の望みは「在韓米軍撤退」 亡命元北朝鮮高官が米議会で証言
現在の韓国を南ベトナムに見立て、そこから在韓米軍が引き揚げるように仕向けるため、北朝鮮は核やミサイルで圧力をかける。圧力に屈したアメリカが在韓米軍を撤退させれば、南ベトナム同様に韓国の体制崩壊に繋がるというのが金正恩国務委員長の狙うシナリオだ。
ニューズ・ウィーク 日本版
へえ~なるほど、確かにアメリカ軍を撤退させれば、北朝鮮は有利になりそうだし、全て思惑通りで、金正恩はなんて戦術家なんだ!・・・って言うか、在韓米軍の撤退ってトランプの選挙公約ですやん! 「金正恩国務委員長の狙うシナリオだ 」って、彼らは初めから同じ方向を向いて仕事をしていたのじゃないですか! なにこれ!?
金正恩はトランプの部下である
そう、だから、全く信じられないことなのかもしれませんが、「金正恩はトランプのために働いている」、もしくは、「図らずもそうなってしまった」、事実としてはこの二つしかないのです。図らずも・・そんなわけねえーだろ!
この件に関して、他の見方は存在しません。中国黒幕説は完全に論理的に矛盾しているのです。
これが私が最も言いたかった誤解です。
日本の核武装論
ペンタゴン高官のエド・ティンパーレイクは、アメリカの取るべき道を次のように明快に述べている。
真っ先にしなければならないのは、金正恩の命令系統を断ち切ることだ。
地上戦に訴えれば、戦争を始める前からアメリカの負けだ。彼を排除し、容赦なくそして速やかに、彼を抹殺しなければならない。
『米中もし戦わば』 ピーター・ナバロ
ではいったい、金正恩さんの意図のもたらす結果は、どこにあるんでしょう。答えはこの記事から読み取れます。
9月3日の産経新聞に興味深い記事が掲載された。黒瀬悦成ワシントン支局長の署名入りの記事は、米国内で、北朝鮮に核開発を断念させることは不可能という見方が強くなっていることに言及。その前提で、日韓の核武装を容認し、それによって北朝鮮の核に対抗するという議論が勢いを増しつつあると伝えている。
民主党系のシンクタンク「ブルッキングス研究所」の研究員による、「日韓の核武装を認め局地的な衝突も辞さない構えで、北朝鮮を封じ込める」との主張、米国の別な軍事専門家の「日本が自前の核兵器を持てば、すべての民主国家は安全になる。強い日本は中国の膨張を阻止する」という積極的な日本核武装支持論も紹介している。
WEDG Infinity
北朝鮮の核に対抗するため、核武装論が本格化した時期があったんですね。これは2017年の9月頃の話です。
ライス女史は、「日本でそういう声があがることは意味がある。北の核開発を野放しにすれば大変なことになると中国も思い知るだろう」とコメントしている(『ライス回顧録』集英社)。
そう、中国なのだ、日本の核武装論をもっとも気にするのは。中国が戦後ずっと恐れてきたのは、最近こそあまり口にしなくなったが、“日本軍国主義”の、復活だ。日本からみれば、軍国主義復活など、とんだ取り越し苦労だが、実のところ、「強い日本」を中国はもっとも恐れている。
2017年の9月頃と言えば、みんな北朝鮮ばかりに気を奪われて、アメリカの対中姿勢など全く気にしていませんでした。でも、私は当時から知っていたのです。アメリカの最大の敵が中国であるということを。
もうはっきりと分かったでしょう? 最初の記事で政府高官が、「2017年の北朝鮮の挑戦的な態度」って言った意味と私の書いた「北朝鮮危機はアメリカにメリットしかなく、中国にデメリットしかない」という意味が。
そして、金正恩さんは、トランプのために働いているってことも。
「北朝鮮に対抗するために核武装論」は生きている
実際、日本独自の核武装ってどうなんでしょう? 心配しなくても、万に一つもそれはあり得ません。アメリカ側が絶対に許さないからです。
「日本核武装シナリオ」のほうが、「日本が中国に乗り換える」シナリオよりさらに悪い
『米中もし戦わば』
大統領補佐官のピーター・ナバロさんもこうおっしゃっています。
日本国内でも、自民党の石破茂元幹事長が、米軍の核の国内配備について議論すべきだという考えを示し、この問題に一石を投じた。
ですから、用意されているシナリオはこれである可能性は結構高いのです。
嫌韓ブームの本当
反韓は煽られているって最初に書きましたよね。もう答えはほとんど見えたんじゃないでしょうか。単にこのシナリオの筋道だからです。北朝鮮(統一に向かう韓国)に対抗するために、核の持ち込みを行うためです。
それがアメリカの対中軍事戦略。日朝韓関係は悪化の一途をたどるでしょう。
これは実に巧妙な心理トリックになっているのです。多くの日本人の心には、現在、北朝鮮、韓国に対する「勧善懲悪の物語」が出来上がっていることでしょう。
彼らはこれを利用するのです。甘く見てはいけません。大体、メディアの掲げる相手を見下した理論はすべて事態を見誤る元凶になって来ました。
トランプは何を仕出かすか分からない愚か者だ! 金正恩は核のボタンを押しかねない狂人だ!
私がどんなことでもやりかねない男だと信じ込ませてくれ。彼らにちょっと口を滑らせるだけでいいんだ。「お願いだ、ニクソンが反共に凝り固まってることは知っているだろう。彼は怒り出すと手が付けられない。彼なら核ボタンを押しかねない」とな。
『米中もし戦わば』 ニクソンの「マッドマン・セオリー」について
そして、今も同じような間違いが、起ころうとしています。不可解な文大統領の言動にも、大きな意図が隠れていると考えた方がいいのです。
ですから、文大統領もトランプのために働いていると考えるのは、むしろ普通の話なのです。彼の任務は日本の未来を決定づける極めて重要な役回りであるのです。