さて、今回は懲りずに当たりそうもないマーケット予想でもしてみたいと思います。もっとも、ここ最近書いたものは当たりつつあるようにも見えていますが。
世間的に話題になっている日銀会合後の円安、すばらしき我らが日銀と財務省ですが、今回の対応には不可解な部分も感じられます。それを私なりに拡大想像してみると、題名にした結論に達したのです・・
円安容認?
4月26日の日銀の金融政策決定会合後に円が急落し、ドル円は158円台に突入しました。今回特に不可解に感じるのは、政府、日銀がまったく意に介さなような態度を取っているところです。
吉田恒先生もこうおっしゃってます。
しかし、まず大前提としてあるのは、円安を止めるために日銀がタカ派化するというのは、全くもって馬鹿げた考えであるということです。
これまで再三書いてきました通り、日銀の最大のミッションは金利を抑えることであり、その意味においては円安などは、どうでもいいことではあります。
ただ、とは言えですよ。
日米韓は17日に開催された初の財務相会合で、外国為替市場の動向について「緊密に協議する」ことで合意した。
共同声明で「最近の急速な円安およびウォン安に関する日韓の深刻な懸念」への認識を示し、「既存の20カ国・地域(G20) のコミットメントに沿って、外国為替市場の動向に関して引き続き緊密に協議する」とした。
日米韓、為替巡り「緊密協議」 急速な円安・ウォン安懸念に言及 ロイター
政府は通貨安に関して、韓国と協調姿勢をとり、
マネックスUSA(ワシントン)の外為トレーダー、ヘレン・ギブン氏は、今回の声明で政府・日銀による市場介入の地合いが整う可能性があると指摘。「文言がかなり強いため、週末までに何らかの具体的な動きがあっても驚くべきことではない」と述べた。
強い文言で円安をけん制していました。なのに、何もしない。
鈴木俊一財務相は17日にイエレン米財務長官と2国間会談も開き、「行き過ぎた動きには適切に対応する」用意があることを説明したと記者団に語った。詳細には言及しなかった。
神田真人財務官は過剰な円の動きに対処する上で、いかなる選択肢も排除しないと述べた。
神田氏はドルの上昇抑制に向けた協調介入の可能性に関する質問にはコメントを控えた。
コーペイのチーフ市場ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は「過去数回の介入サイクルでは、米当局(特にイエレン氏)が日本の動機を認める声明を発表し、口頭で支持を表明した」と指摘。
これは不可解でしかないのですが、その理由として第一に考えられるのは、イエレンさんが首を縦に振らなかったという可能性でしょうか。実際に、イエレンさんはこう言っています。
イエレン米財務長官は、円の対ドルでの下落に対応するために日本当局がとり得る動きについて自身の姿勢を問われ、為替市場への介入はまれな出来事であるべきだと語った。
イエレン米財務長官が円相場で発言、為替介入は「まれ」であるべきだ ブルームバーグ
取りようによっては、「おまえら1年半前にもやったやろ。今回はアカンで」と言っているようにも思えます。
それで結局、出来なくなったという仮定は可能なのですが、そうなると、昨日の植田総裁の会見、まるで「投機筋さん、どうぞ、ご自由に」と言わんばかりの態度には疑問が残ります。
介入という武器が使えなくなったのだとすればなおさら、なんらかの牽制があってしかるべきではないでしょうか?
不可解を埋める推理
さて、この不可解さを埋めるためにはどうしたら、いいのか。もしかすると、この人物が鍵を握っているのかもしれません。
11月の米大統領選の共和党候補指名を確実にしたトランプ前大統領は23日、ドルが対円で34年ぶりの高値を付けたことについて、米国の製造業にとって「大惨事だ」と、自身が立ち上げたソーシャルメディア・サイトのトゥルース・ソーシャルへの投稿で批判した。
トランプ氏、34年ぶり円安・ドル高「大惨事」-現政権の「放置」批判 ブルームバーグ
非常に興味深いことに、トランプ氏のこの投稿は麻生氏との会談が行われた24日早朝の時間帯に行われているですね。
なおトランプ、麻生両氏が会談で為替相場について話し合ったかどうかは現時点では分かっていない。
投稿がその前か後かは分かりませんが、とても無関係とは思えませんよね。
「おまえら、バイデンへの攻撃材料が無くなるから、介入とかふざけた真似はするなよ。植田にもよ~く言っておけ」とトランプ氏に脅された可能性はあるのでしょうか?
ないとは言えないですね。
ただ、今回の話はそんな単純な構図ではないような気がしており、もう一つ真逆の可能性を考えています。それは、イエレン氏の話をもう少しよく聞いてみると、見えてくるかもしれません。
「介入がまれであることを願う。そのような介入がめったに起きず、過度な変動がある場合に限定され、事前に協議があることが期待される」と述べた。
イエレン米財務長官が円相場で発言、為替介入は「まれ」であるべきだ ブルームバーグ
「そのような介入がめったに起きず、過度な変動がある場合に限定されるのが望ましい」
それが日米当局の合意ではないのか、と。
そう言えば、植田総裁の態度のおかげで「過度な変動」の条件は整いましたね。
CFTCのデータによると、ヘッジファンドとアセットマネジャーによる円の売り越しは4月23日時点で18万4180枚と、過去最高だった前週の水準を上回り、データがさかのぼれる2006年以降で最大となった。
円ショートが過去最高を更新、日銀会合前の23日時点-CFTC ブルームバーグ
そして「そのような介入が滅多に起きない」、つまり一発で仕留められる条件が整ったように見えます。
投機筋の代表格であるヘッジファンドなどは、今回の場合すでにかなり米ドル「買われ過ぎ」懸念が強くなっている。そうした中で米ドル売り介入が行われ、米ドルが急落となった場合は、米ドル買いポジションの手仕舞いを本格化する可能性が高いだろう。以上のように見ると、今回は2022年の介入局面より、介入サイドに有利な状況にあるのではないか。
【為替】為替介入で円安が止まる可能性 デイリー
植田総裁の態度は、為替介入の効果を最大化するための誘い水だった可能性があるのではないでしょうか。
外国為替市場で24日、節目の1ドル=155円を突破したことでドル売り/円買い介入への警戒感が一段と高まってきた。連休中の東京市場はメインプレーヤーが減り、急な動きにつながりやすい。市場では、政府・日銀が介入に踏み切っても、米当局はビナイン・ネグレクト(優雅なる沈黙)で応じるとの見方も出ている。
焦点:連休中の為替介入警戒、取引減で再動意も 米当局は優雅な黙認か ロイター
もし、GW中に介入が行われた場合、その説明は限りなく説得力を帯びるでしょう。
そして、その後・・
そして、その場合は、今の状況からして円は急騰する可能性が高いのです。結局は、日本政府、日銀の勝利、めでたしめでたし。
戦後初の学者出身である日本銀行の植田和男総裁が就任してから9日で丸1年となる。歴史的な大規模緩和の幕引きを混乱なく成功させた手腕への評価は高い。
混乱なき政策転換に手腕、利上げでのぞく勝負師の顔-植田日銀1年 ブルームバーグ
つい先日、本当に珍しくですね。日本の当局を誉める記事がメディアに出ていたのですね。過剰な円安を見事に阻止、日本の当局の有能さがついに国民に周知される時が!
・・・・いや、今回はそれを上回る思惑が「仕組まれている」ような気がしてならないのです。円高になれば、株価が大きく下がることが同時に想定されますよね。
個人投資家の現物株買い越し、過去最大の9000億円超-4月3週日本株
ブルームバーグ
その条件も整いつつあるように思えます。
今年に入って上昇を続け、一時4万円の大台を突破した株価。さらに、より投資が身近になる新NISAが始まり、投資熱が高まるなかでのこの大幅下落。SNSには悲鳴にも似た声が…。
Xへの投稿
株価大幅下落で新NISA「損切り民」が続出? テレ朝news
「毎日、資産が減り続ける。NISAは何かの陰謀か?」
「貯蓄より投資と言われてだまされた。もうかるって言ったじゃないか」
そして、やっぱりこうなった。
タイミングを見計らったように、金融資産に応じて保険料を増額すると言う話が出てきました。その上、政府の為替介入で株価が暴落したら、いったいどうなることでしょう?
そして、こんな「思惑」の出どころと言えば? 当ブログ読者の方にとって、その答えは、火を見るよりも明らかなはずです。
「日本は今まっしぐらに後ろ向き」「これが続くと確実に物価高になりますね そして給料が増えても税金と社会保険料で消えてしまう世界。厳しい」と現況を嘆く声も。「何か手だてあるんかね」「日銀植田総裁の危機感の無さ 円安容認の態度」「黒田前日銀総裁が無能だったので、円安が止められない状態を作りましたね。財務省も介入もせず、無能ぶりを発揮していますね」などと政府や日銀の対応を批判するコメントも目立った。
止まらぬ円安、ついに1ドル=158円台… 「1年で円の価値は18%減」「確実に物価高に」政府・日銀へ批判高まる 中日スポーツ
円相場153円台に下落 介入待ちの個人、逆張り諦めず
日本経済新聞
そう考えると、今回の為替介入は「参加者」全てが待ち望んでおり、そんな中、何もしないと言う選択肢を取ることはむしろ困難な状況にさえ思えてきますが、果たして結果はどうでしょうか?