昨日、マーケット関係者の大きな注目を受けていた8月の雇用統計が発表となりました。当ブログに於いては、下のfacebookページに、「今回の雇用統計はどうでもいい」などと少々乱暴なことを書いてしまったのですが、その後のマーケットの結果から見てみると、やっぱりどうでもよかったのだと思える動きとなっております。

数字的には少し悪かったのですが、これを受けて利上げ観測は後退で、米株は上昇、ここまでは分かるのですが、さらに、円安ドル高により日経平均はそれ以上に大きく上昇! ということになっています。これは正面から見ると、訳のわからない値動きと言っていいのではないでしょうか。

しかし、マーケットの世界ではこの不可思議な現象も「トレンド」という一言で片づけられてしまうのですから、恐ろしいものです。そう、この動きから見るに、トレンドはすでに変化していると考えたほうが無難ではないでしょうか。というか、それ以外にこの動きを説明できるものがあるのでしょうか。

 

円高ドル安トレンド終焉?

では、そのトレンドがどこから変化したかといえば、それは先日のジャクソンホールのイエレン議長の講演からです。多くを語る場ではなかったようですが、ほんの短い言葉だけで、結果的に見事にトレンドを創ってしまっています。ジャクソンホールまではドル円は、情けないほどに弱弱しい動きを続けていたのは記憶に新しいところでしょう。

当ブログでは、「イエレン先生が新たなトレンドを創ってくれること」を予想し、期待してきましたが、ものの見事にそれに応えてくれたわけです。気迷いのマーケットに「正しいのはドル高だ」そう、力強く告げてくれたように私には聞こえたのです。そこから、ドル高以上に円売りが強まったのは私にとっても予想外でした。

 

今回の雇用統計の結果に対するマーケットの値動きから見るに、トレンドが今までとは変わっていると考えるのは自然なこととなるでしょう。これはいつまで続くのでしょうか? 短命に終わるのでしょうか。その確実なことは誰にも分らないと思いますが、一つ参考になるとすれば、今年にあった円安トレンドの「理由」ではないでしょうか。

今年の円安トレンドはいずれも非常に短命に終わっていますが、そのきっかけとなったのは、日銀の会合に関する噂話というなんとも胡散臭いものでした。しかし、今回はかなり違います。それはFRBのカリスマ議長の言葉だということです。

 

「ユーロを守るためなら何でもする」

当ブログでも何度もお伝えし、伝説的に有名なECBの同じくカリスマ総裁ドラギのこの言葉はユーロ円を90円台から150円まで暴騰させました。今回同じことが起きる・・? とは言いませんが、そのユーロ高トレンドを終了させたのもまた、ドラギ自身でした。今回もイエレン自身が「ドル高は止めて!」と言わない限り、そうは収まらない可能性はあるかもしれません。

イエレンもドラギに劣らずのスーパーな人物であることは間違いないでしょう。言葉だけで相場を創ってしまうということは常人にはとても出来ることではないはずです。彼女の言葉はそれだけ重く重要です。

 

トレンドを阻むもの

日銀会合 9月20、21日

では、この急きょ始まったトレンドを阻むものがあるとすれば何でしょうか。次のビックイベントは日銀の会合です。前回の会合で「検証を行う」とした黒田総裁の発言がいろいろな思惑を呼んでいます。私もここは要注目だと思っていますが、それはどちらかというと、大きな上方向があるかというところでの注目です。過去みたいに下方向に大きく動くかというと、そうはならないのではないかと思っています。なぜなら、今の円売りの動きは日銀への期待ではないと思うからです。日銀は緩和を縮小するのではないか、と心配するヘッジファンドもあるそうです。

 

アメリカ大統領選挙 11月

そして、当ブログでも為替の最重要キーポイントとしてきたアメリカ大統領選挙ですが、可能性は低いと思うものの、ここでトランプが勝利した場合どうなるのでしょうか。これは一見、再びドル安に戻されそうです。私もトランプが勝てば大きなドル安円高があり得ると予想してきました。しかし最近、もちろんショック的なものはあるのでしょうが、長期的にはそうもならないかもと思っています。その単純な理由は、彼がマーケットの嫌われ者だからです。

マーケットというのは、非常に不思議なもので、嫌われものの意図通りには動かない性質がありますよね。これは、人の心の動きに非常に似ています。ですから、トランプがドル安を求めてもその通りにマーケットが動いてくれるかは、微妙ではないでしょうか。むしろ逆行する可能性だって考えられるでしょう。このことは日銀の黒田総裁が実際に証明済みです(笑)。

マーケットを出し抜くような手法を続けた黒田総裁は、嫌われた挙句に会見の度に株価が暴落するようになった、私はそう解釈しています。人一倍、奮闘しているはずではあるので、個人的には少々同情気味ですが・・。でも、うそをつくようなやり方は嫌われるのは当たり前という気がしますよね。

 

結局

と、考えてきますと、イエレンが創り出したトレンドを阻むものは、そうはないように思います。株以外の何物でも、流行とは人気者が作り出し、爆発的に広がり、しばらくは続くのが常ではないでしょうか。先に書きました通り、人気者のイエレンが創りだしたトレンドは、彼女自身が止めない限り、そう簡単には止まらない可能性も考えてみてもいいのかもしれません。