年末に向かって順調に上昇! と考えていた株式市場ですが、残念ながら急激に雲行きが怪しくなってきてしまったようです。というのも、まったくと言っていいほど下がらなかったドーピング状態のダウが先週の金曜日に突如400ドル近くも売られたのです。しかも、朝方から一方的に売られ続けて、安値引けのような形で異様な様相といえる動きでした。

「ハト派とみられていたFRB高官から思わぬタカ派の発言が飛び出しサプライズとなった」

その理由の解説がこれでしたが、全く納得のいかないものだというのが率直なところではないでしょうか。これはFRB高官の間で数週間前から繰り返されていた内容でしたし、なによりイエレン議長が利上げに積極的な発言をしていたのですから、今更ほかのメンバーの発言で大きく下げるというのは非常に変な話です。ずばり、これは本当の理由ではないでしょう。

では、この急なマーケットの変調の理由は本当はどこにあるのかを探ってみたいと思います。

売られ始めた債券

 

投資家のシナリオになかった「金利の上昇」で株式市場はまだまだ下がる可能性が大きい! 2016年10月半ばまでの投資家の注意点とは?

毎度取り上げさせていただいている広瀬隆雄さんの解説です。広瀬さん曰く、先日のダウの急落は債券市場の変調が引き金になっているというのです。そして、世界的な金利の上昇が始まっていると。

現在世界の金利水準は異常なほど低い水準、一部マイナスの状態に達していて、債券は大きなバブルだと言われています。その原因は世界的な金融緩和だったわけですが、その中でも大規模な緩和を行っているのが、ECBと日銀です。しかし今年に入ってからというもの、その金融緩和もそろそろ限界ではないかとささやかれ始めています。

しかし、なぜECBと日銀は限界といわれるようになるまで、追加の金融緩和を拡大してきたのでしょうか。それはインフレにならないからです。ECBと日銀はデフレからの脱却、すなわちインフレを作るために異常といえるほどの金融緩和を行ってきたのです。

 

インフレを阻止していたのは、金融緩和?

債券が一斉に売られているということは(景気は、それほど弱くない)ということを意味し、さらに言えば(次に心配しなければいけないのはデフレではなく、インフレだ)ということを債券価格が先取りしているということです

広瀬さんの解説で非常に気になったのはこちらです。9月8日のECB理事会でもドラギが追加緩和を否定したことで、再び金融緩和の限界が強く意識されたわけですが、そこから債権が売られ、金利が上昇し始めているようです。そして、それはインフレの序章を意味している。これはつまり、金融緩和が実はインフレを抑制していたとは考えられないでしょうか。インフレのために金融緩和がインフレの抑制とは変な話ですが、でも、異常な低金利は金融緩和のせいなのです。

「なぜこんなにも世界的な金融緩和を行っているのに一向にインフレにならないのか?」 この答えはまったくわからなかったのですが、相場的に見るならば、金融緩和の限界、金融緩和の終了が、むしろ世界的なインフレの幕開けとなるというシナリオは、むしろそんなに不自然ではないのではないでしょうか。テーマは逆流です。

 

9月の日銀会合

9月20、21日に日銀の金融政策決定会合が開かれます。ここで総括的検証が行われ、追加緩和の期待もあります。しかし、一時期言われていたヘリマネのような更なる異次元の追加緩和は結局出てきそうもありません。それはさすがに出来ないよというところなんでしょう。とすると、ECBと同様に金融緩和の限界が意識されることになります。それは一時的には円高に動くでしょう。でも、そのさらに先はどうでしょうか。

今回、一部では日銀は緩和を縮小するのではないか、というような声もあったよううです。もし、そんなことがあれば猛烈な円高に? 果たしてそうでしょうか・・。さっき示した考えでいえば、逆に緩和の終了が悪い円安の開始となる、という考えはあまりに突拍子ないでしょうか?

 

クリントン健康問題がショック相場に?

もう一点、非常に気になるニュースがクリントンの健康問題です。もし、仮にクリントンがこれを理由に撤退するようなことがあれば、相場はかなりのショックを食らうことでしょう。ニュースに出ているようなことでショックにはならないのが普通かもしれませんが、これは織り込めないと思います。体調という読みようのない材料であることもありますが、マーケットはクリントン勝利を信じて応援し続けてきたようなところがあるので、敗北を織り込んではいないのは必然だと思うのです。

仮にトランプ誕生でも、ショックは一時的なのことではないか、という気がしています。本当にトランプ=ドル安でしょうか? トランプ誕生でドル安がピークを迎える可能性があるかもしれません。どうも最近は当局の思惑の反対に動くことが多くなってきた世界のマーケットじゃないでしょうか。

 

インフレが加速したら対処できるのはアメリカだけ

FRBは利上げが後手に回っている。広瀬さんはそうおっしゃいますが、当ブログでもそれは繰り返し伝えてきたことです。でも、インフレが加速した時、遅くても対処できるのは金融政策の正常化に動いているアメリカだけ、ともいえるのではないでしょうか。日本はそこに打てる手はなく、ただそれを呆然と眺めるだけになる、ということは想像に難くありません。