一昨日、ドル円が遂に115円台に突入、日経平均先物は夜間で19,170円と年内20,000円を伺える位置にまで到達しています。日本の個人投資家はこれに対し、巨額の「売り」を入れている模様で、現物売りならばまだしも、それを通り越して空売りをかなり入れてきているということです。皆さん、今の動きはそんなに納得いかないでしょうか・・?
私に関しましては、スピードこそ早いと感じるものの、今の水準に違和感はまったくありません。なにせ、当ブログでは7月半ばから、「ドル円は99円が底で、年末115円越え、日経平均は20,000円」と予想してきたのです。私に予想できるくらいなのですから、決して大した値位置ではありません。その証拠かどうかわかりませんが、海外投機筋のドル円のポジションは今は、ただニュートラルに戻っただけのようです。つまり、彼らはまだ、対して円売りには傾いていないのです。
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ドル円115円という水準の意味
さて、題名に来年の高値は135円、というようなことを書いておりますが、これをご覧になった方は「そんな馬鹿な」と思う方の方がきっと多いでしょう。少なくとも、今の個人投資家の姿勢を見る限りは一笑に付されそうな内容です。しかも、当ブログでこの予想を出すのは、実は二度目なのです。いつ出したかというと、昨年末です。つまり、この予想は一度大外れしているのです・・。
ですから、これを再度書くことは非常に勇気がいるのですが、根拠を含めて再度書き記したいと思っています。
その前にまず、現状の確認をしたいと思います。12月9日のドル円の終値は115.2円程度ですが、私にとってはこの115円という水準には結構意味があります。昨年の夏、所謂「VWショック」によって、世界的に株価が暴落しましたが、この時のリスクオフの円高が最大で115円程度でした。つまり、投機筋が最大限円売りを巻き戻した水準が115円だった、ということになります。
そして、現在、史上空前の円買いに傾いていた投機筋のポジションが巻き戻されたと言われる水準がやはり、114円程度です。ですから、現在の115円はバイアスの少ない非常にニュートラルな状態と捉えられるのです。
なぜ円高?
来年にはドル円は100円方向に戻るだろう。最新の調査でもこのように考えている方が多いという記事が出ていました。しかし、私は疑問です。なぜ円高なのだろうと。前述しました通り、投機筋のポジションはニュートラルな状態です。現在、海外勢が大きく円売りに傾いているならば巻き戻されるだろうという予想は成り立ちますが、そういう状況ではありません。
つまり、彼らが再び大きく円買いに傾かなければ、100円方向へは動かないはずなのです。なぜ、円高論の方は海外勢が再び大幅な円買い越しに動くだろうと考えているのでしょうか。
私が円安方向が普通だと考える根拠は単純で、それは両国の金融政策のスタンスの違いです。利上げに動いているアメリカと異次元の金融緩和を続ける日本とで考えた場合に円高論は根拠がないように思うのです。
とは言え、つい先月まで実際それはそこにありました。私は今年の前半、これに相当頭を悩ましました。「なぜ円高?」私には正直115円を大きく下回る円高は理解できなかったのです。しかし、怒涛の円高も一服した中、とうとうその理由を知るところとなりました。それも酷く単純なものでした。アメリカがドル安政策に傾いていたのです。私はそもそもアメリカはドル安政策をとることはない、と考えていました。
なぜなら、通貨安政策はインフレを助長してしまうからです。イエレン大先生がそれを許すはずがないと。しかし、アメリカ政府がドル安円高圧力をかけていることは明白だったため、色々と調べた結果、最終的なそのターゲットは大統領選挙だと突き止めたのです。ですから、選挙が終了すれば115円に戻ると予想し、実際その通りになったわけです。
アメリカは来年ドル安政策を取るの?
ここまでで金融政策からは円高には動き難いということは、ある程度はご理解いただけたかと思います。では、来年円高になる根拠を探す場合は、「アメリカ政府が再びドル安政策を取るのか?」という一点を探ることに尽きるでしょう。実際、来年円高になると考えている方は、トランプ大統領がドル安政策をとるということを理由に挙げている方が多いようです。確かにトランプは選挙前に、製造業を守るという理由でドル安政策を標榜していたようです。
しかし、私は実際その可能性は低いのではないか、と考えています。確かに現在ドルが一点買いされているような状況で、行き過ぎれば当然その是正を求めるような場面があるでしょう。ただ、それだけで全面的なドル安政策に進むという理由には全然ならないように思います。
そもそも、「通貨安がよい」という価値観は絶対的なものではなく、デフレ時代の手段として有効だったものです。しかし、全般相場を見てわかるように、明らかに債券バブルは崩壊し、大きな金利の上昇が始まっています。これが指し示すものはインフレ時代の到来です。
インフレとうまく付き合うために必要なのは、通貨高です。ですから、「通貨安が正義」という発想はすでにもう過去の物だと私は思うのです。インフレで通貨安は普通に考えて危険です。アメリカ大統領がそんな危険を冒すでしょうか?
私はその危険への対処から、FRBは来年利上げを加速させるのではないかと見ています。逆に言うと、日銀、日本政府も本当は円高に価値を見出す方向へ舵を切りなおさなければならないと思っています。頭の体操ではなく、本気で緩和策の出口を考えなくてはならない時期が来ているのです。この点で、私たちはすでに世界から大きく出遅れているのです。
本当はきっと「トランプ相場」じゃない
来年円安ドル高が巻き戻されると考える理由のうちのもう一つに、今の相場はトランプ大統領への政策期待によるものだから、その期待がはげ落ちれば巻き戻される、という物です。これに関しては、私もトランプ期待は続かないと考えています。今トランプが言っているような政策がそのまま実行される可能性はかなり低いと予想してます。
一緒にしては失礼なのかもしれませんが、大いに世界中の投資家の期待を集めたアベノミクスの成長戦略も一切進まないというお粗末ぶりでした。トランプの政策もきっと同じようなものでしょう。政治家の言うことなど、信用できないのは毎度のことです。でも、この相場は本当にトランプ期待だけで動いているのでしょうか。
そもそも、債券相場が崩れ始めたのは、大統領選挙の結果が出る前の段階でのことです。そう、グレート・ローテーションはすでに静かに始まっていたのです。そして、さらに元を正せば債券相場が恐ろしいほどの高値まで買い進まれ、金利が異常に低い水準にあったのは、各国中銀の金融緩和のせいです。各国中銀が国債を大量に買ってくれるため、投資家はこぞってそこに殺到していたのです。
しかし、最近になり、中央銀行は金融緩和の限界を認め始めました。そして、私が非常に大きなインパクトになったと考えるのは、ECBが緩和を縮小の方向へ方針を転換したことです。これまで、いち早く緩和を終了させ、金融政策の正常化へ向かっていたアメリカに代わって債券相場を支えていたのは、ECBと我らが日銀の両輪だと考えられるからです。
今、起こっていることはあくまでも過去に例をみない大規模な金融緩和の後始末の話であり、あくまで金融政策の話で、政治はあまり関係ないのです。トランプも本当はあまり関係ないのです。もちろん、影響がないとは言いませんが。
単純化するとお金の行き場のお話
ごく単純に考えると、お金の行き場のお話です。債券から流れ出た大量のお金はどこに行きましょう? それは燃やさない限り、もはや株式しか向かう先はないように思います。先週のECB理事会のドラギ総裁の発言を聞く限り、慌ててそのお金の回収に回るというわけではないようです。であれば、株高はまだまだ続くでしょう。日経平均の上値も決して”常識”では測らない方がいいでしょう。
12月12日追記
当ブログの日経平均株価の来年の高値の予想値は、24,000円としました。
「N」が天井なら来年95円、底なら135円
ドル円の年間値幅は、平均的に概ね20円程度になることが多かったようです。そして、現在の115円は、実質的に相場を動かす力を持っている海外投機筋のポジションがほぼニュートラルになっている状態です。きっと、彼らは2017年にこのポジションを、アクセル全開でどちらかに大きく傾けるでしょう。
ですから、そのニュートラルが天井なら、来年再び95円程度までの円高に戻ることも十分考えられるわけです。しかし、前述したことが正しい現状ならば、115円を底に135円方向へ動く可能性が高いのではないでしょうか。
ちなみに、2012年後半にスタートしたアベノミクス円安は2012年末時点で89円程度でしたが、これが2013年の底となり、2013年末に105円までの円安となったことは記憶に新しいところです。いろいろと類似性が指摘される、「アベノミクス相場」と「トランプノミクス相場」、これはこれからを示唆しているのでしょうか。
大誤算となった今年の初めの135円予想。しかし、私は100円割れに向かったドル円の動きを見ても、今が「長期円安時代」であることを一度も疑ったことはありません。そして、135円予想を復活する時が来ることを信じていました。そして、それは思ったよりも早くにやってきて、今度はそれが当たることを信じ始めているのですが、果たしてどうでしょうか・・。