2月28日にハノイで開かれた米朝首脳会談が、まさかの決裂に終わったと言うことで、騒ぎとなっていますね。「歴史的な大失敗だ」と言う声もありますが、見ていて、やはりどこか様子がおかしいように感じます。

果たしてトランプは、今回「わざと決裂した」のでしょうか? それとも「決裂させられた」のでしょうか? これが今回の謎を解く重要な鍵かもしれません。

ボルトンが邪魔をした?

こんな記事が出ていました。

米朝会談決裂の下手人は「壊し屋」ボルトンか 米朝会談決裂の下手人は「壊し屋」ボルトンか

ハノイで開催された米朝会談が最終的に合意に至らなかったのは、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の影響が大きい――と複数の外交専門家が指摘している。

(途中略)

女性による反戦平和団体「DMZ(軍事境界線)を超える女性たち」の創設者のクリスティン・アンは、「ボルトンがテーブルに着き、会談の準備を進めてきたビーガンが後ろに座ったのを見て、雲行きが怪しいと感じた」と、話している。

ニューズウィーク 日本版

大統領補佐官のボルトンさんが、邪魔をしたらしいですが、これはなぜなのでしょう。実はトランプさんと金正恩さんが仲良くなることに強い嫉妬・・ではなく、抵抗を見せる権力機構がアメリカにはあるのです。

軍産複合体

軍産複合体(ぐんさんふくごうたい、Military-industrial complex, MIC)とは、軍需産業を中心とした私企業と軍隊、および政府機関が形成する政治的・経済的・軍事的な勢力の連合体を指す概念である。

この概念は特にアメリカ合衆国に言及する際に用いられ、1961年1月、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が退任演説において、軍産複合体の存在を指摘し、それが国家・社会に過剰な影響力を行使する可能性、議会・政府の政治的・経済的・軍事的な決定に影響を与える可能性を告発したことにより、一般的に認識されるようになった。アメリカでの軍産複合体は、軍需産業と国防総省、議会が形成する経済的・軍事的・政治的な連合体である。

ウィキペディア

それが軍産複合体です。

1世紀初頭でのアメリカの軍需産業にとって、中東地域に関しては大きく2つの点で、基本的に反イスラムの立場をとることが自己の経済的利益に結びつく構図となっている。

1つは、冷戦崩壊後の国際社会の平和安定化が進展することを防ぎ、軍需産業にとっては適度に不安定化することで「イスラムへの脅威論」が現実味を持つことである。テロや軍事的な脅威が現実となるほど、軍需産業は国内国外への販売増加が見込める。

今回は、イスラムは関係ありませんが、シリア撤退を巡ってトランプさんと軍産複合体は、大喧嘩していましたね。軍産複合体の利益は、どこから捻出されているのか、それはもちろんアメリカの税金ですね。

彼らはこの権益を守ってもらう見返りに、議員たちの票に多大な影響力を行使している、と言うことでしょう。

これ見よがしな「ロシア疑惑」

で、たまに聞く、この「ロシア疑惑」ですが、軍産複合体のでっち上げで確定です。トランプとプーチンが仲良くなって、中東での戦争ごっこが終わってしまうことを彼らは強く懸念しているのです。

そして、これは東アジアでも同じ構図だと考えられます。”非常識派”のジャーナリスト、田中宇さんは、実際にトランプが在韓米軍の撤退を巡って、軍産複合体と争う様をブログに書き記しています。

米国では、トランプが在韓米軍を撤退させたい半面、トランプの仇敵である軍産複合体は在韓米軍の恒久駐留を画策している。米議会の民主党は、米朝和解を妨害するための法案をいろいろ用意し始めている(かつてオバマのイラン核協定を共和党が妨害したように)。

田中宇の国際ニュース解説

で、今回、こんなこれ見よがしなタイミングで、再び騒ぎだしました。

トランプ氏の元弁護士「隠蔽加担を後悔」ロシア疑惑証言

ただし、コーエン被告はトランプ氏や陣営がロシアと結託していたかについては、「疑ってはいる」が、「直接的な証拠は知らない」としているという。

朝日新聞

メディアはこれをさも大問題かと言う風に伝えていますが、まあ、読んでもらえれば分かると思いますが、「だから何?」と言う話以外の何物でもありません。

ですから、トランプさんが、このせいで「米朝合意」をあきらめざるを得なかった、と考えるのは少々無理があるでしょう。それに、マクマスター、ティラーソン、マティスなど軍産の影響が色濃い幹部は次々と失脚させられ、唯一の生き残りのケリーも、大きく力を失っています。

つまり、アメリカの軍産複合体は風前の灯、と言うくらいに弱体化させられていたはずなのです。

それ以上の力

しかし、そもそもトランプは、なぜ、巨大権力機構の軍産複合体との戦いに勝利できたのでしょうか。彼が交渉の達人だから? いえ、違います。彼はそれ以上の勢力に支援を受けているからです。

イスラエルの強硬派 アメリカの福音派を動かす

アメリカの中間選挙が迫るなか、トランプ大統領に世界中が振り回されています。いや、1か国だけ、その例外があるかも――そう、中東のイスラエルです。中東情勢に関してはイスラエルが意のままにアメリカを動かしているようにすら見えます。

NHK NEWS WEB

それがイスラエルです。

「オバマ政権の中東政策に不満だったからこそ、ネタニヤフ政権は、前回の大統領選挙でトランプ氏が勝つよう大きな賭け(支援)に出たのです。その結果トランプ氏は勝利し、両国関係は過去最高の関係となった。それが崩れないよう、イスラエルの右派勢力は必死なのです」とギルボア教授。

そう、イスラエル、ネタニヤフ政権はトランプ政権の最大の支援者なのです。もっと分かり安く言うと、彼らはトランプのボスです。私は他記事でも指摘している通り、彼らがアメリカの民主的な選挙をひっくり返してトランプを勝たせたと見ています。

その目的は今回は、対中東ではなく、対中国ではないでしょうか。つまり、イスラエル、ネタニヤフはオバマ政権の中東政策ではなく、対中国政策に不満だったからこそ、トランプ氏を勝たせたのではないでしょうか。

ネタニヤフが大ピンチ!

そんなネタニヤフさんが、このタイミングで大ピンチに陥っているのです。

イスラエル検察、ネタニヤフ首相を起訴へ 汚職疑惑で

イスラエル検察は2月28日、汚職疑惑があるネタニヤフ首相を起訴する方針を表明した。警察が検察に昨年12月までに勧告していた収賄や詐欺など3件の疑惑が対象だ。法律上、起訴されても首相を辞任する必要はないが、批判は強まり4月に控える総選挙に影響を与えそうだ。通算13年近く国を引っ張ってきた同氏は正念場を迎えている。

日本経済新聞

これで流石にトランプさんは、米朝合意を中止せざるを得なかった、と言うのが私の仮説ですが、いかがでしょう? 情報が非常に限られており、確信に至るのは難しいですが、やはり一番気になるのは、タイミングです。

誰がいったい?

そして、このタイミングでいったい誰が、ネタニヤフ、強いてはトランプ政権を攻撃したのでしょうか。

その答えは先程のウィキペディアのページに記されているかもしれません。

AIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)が、イスラエルにとって有利な政策をとるようにアメリカ政府や議会に働きかけることを中心に活動しているのに対して、JINSAは米イの軍事関係者と軍需産業関係者の間での関係強化を目的として活動している

(中略)

こういった長年の努力の結果、米国は全対外援助の6分の1をイスラエルの軍需産業に経済援助している。

JINSAはアメリカ国内でイラク戦争を最も強く推進した団体である。JINSAの顧問のリチャード・パールは開戦時の国防政策委員会のメンバーであったし、ディック・チェイニー副大統領やジョン・ボルトン国連大使、ダグラス・ファイス国防次官もJINSAの顧問である。

どうでしょう。ボルトンは、イスラエルの軍需産業と関係の深い組織の顧問なんだそうです。もし、仮に米朝会談決裂の真相が、世界最強の小国、イスラエル内の権力闘争の結果だとすると、これはもう、容易には進まないでしょう。

私の読みでは、在韓米軍の撤退は、日本にはいいことはなさそうなので、まあよかったのかな・・?

アメリカの軍産複合体に勝利したトランプですが、今回、より強大な敵が彼の前に立ちはだかったのかもしれません。

さて、どうなるか、かなり不透明感が増したことは間違いなさそうです。