2020年のアメリカ大統領の選挙は、トランプの圧勝で終わるだろう私はそう予測してきました。私は稀代の選挙予測外し屋であるのですが、今回こそは自信がありました。しかし、どうもまたしても全く予想外の動きが波乱を巻き起こす情勢となって来ています。それが、こちら。

2020年米大統領選の民主党候補の公認指名争いで、バーニー・サンダース上院議員が全米で大幅なリードを固める状況が、ワシントン・ポストとABCニュースの世論調査で示された。

ブルームバーグ

突如としてアメリカで巻き起こったサンダース旋風、この正体とはいったい何なのでしょうか。全く関係ないように思える遠い国でのこの現象が、もしかすると、私たちの未来を左右する大きなムーブメントの始まりを意味しているのかもしれません。今回はそんな物語です。

トランプとサンダース似て非なる存在

まず、このバーニー・サンダース氏っていったいどんな人物なのでしょうか。私も最近知ったばかりであり、詳しいことは存じ上げませんが、とにかくメディアの評判が悪いことは間違いありません。2016年の大統領選挙の時から、トランプとサンダースをよく書いているメディアを見たことがない、というくらいの状態です。

ワシントン・ポスト紙も翌13日、著名コラムニストによる「我々は国家的危機に立たされた今、バーニー・サンダースというリスクを背負う余裕はない」との見出しで始まるサンダース批判記事を載せ「ウクライナ疑惑を乗り切ったトランプ政権が独裁色を強めつつある今、再選を阻むチャンス到来の時期に社会主義候補に身をゆだねるほど馬鹿げたことはない。もし11月に民主党候補が勝てなければ、わが国デモクラシーが危殆に瀕することになる。まさにSOS信号発信の時期だ。民主党はなんとしてもサンダース指名だけは避けるべきだ」と警告した。

米民主党内に広がるサンダース大統領候補への深刻な不安
wedge infinity

それにしても、民意に支持されているサンダースをリスクと呼ぶメディアはいったい、どんな了見か知りませんが、暴挙と言っていいでしょう。デモクラシーの危機って自分の発言の方がよほど危機的ではないですかね。

彼らがトランプとサンダースを決してよく言わないことには、明確な理由があります。彼らはともに所謂エスタブリッシュメント(既得権益)層を破壊する政策を打ち出しているからです。

【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領のアドバイザーらは、大統領選挙でバーニー・サンダース氏が対決相手になる可能性を考慮し始めた。サンダース氏はトランプ氏と同様にエスタブリッシュメント層を批判しており、大規模な集会、忠実な支持者、大胆な公約という武器を備えている。

トランプ氏、サンダース氏を対決候補として意識  WSJ

エスタブリッシュメント層とは、具体的には軍産複合体のことです。メディアは軍需産業を中心とした企業の連合体がスポンサーであるため、基本的に彼らに都合のいい情報が流されるのです。彼らにとって、トランプとサンダースは敵です。しかし、彼らは実際、似て非なる存在といっていいでしょう。

トランプの支持者

そもそも、トランプはなぜ軍産と言う巨大な既得権益機構の意向に反しながら、選挙に勝つことが出来たのでしょうか? 民主主義の勝利? いえ、実は全然違います。単純な話で彼らの支援者の権益層の力がもっと強いからです。マサチューセッツ工科大学名誉教授のノーム・チョムスキー氏はその勢力を「保守的なグループ」と呼びました。

インタビュアー:メディアは、選挙結果の予測を大きく誤りましたね。

チョムスキー:必ずしもそうとは言えません。メディアは僅差でクリントンの勝利を予測していました。実際、一般投票はその結果通りだった。メディアや世論調査が予測できなかったのは、時代遅れの政治システムが、保守的なグループに想像以上の大きな権限を与えているということです 。

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トランプを勝たせた「保守的なグループ」とはいったい何でしょう。チョムスキー氏はその正体にはっきりと言及していませんが、私はそれはイスラエルの強硬派だと書いてきました。イギリスはその昔、巨大財閥の意向をくむ形でイスラエルを建国しました。そして、現在のイスラエルの保守強硬政権であるネタニヤフ政権とトランプ政権は嘗てない蜜月関係を築いているのです。

つまり、彼の支持者とは巨大銀行家、財閥、資本家とよればれる者、またヨーロッパ貴族などであり、それは西側世界元来の最高権力者と言える存在だと考えられるのです。

トランプが大衆迎合と言うのは、全くの出鱈目と思っていいでしょう。そして、もう一つ言ってしまうと、我々の世界が民主主義で運営されているというのも嘘である、ということですね。

サンダースの支持者

それらに対し、サンダースの支持者とはいったい誰なのでしょうか。それは、トランプとは真逆の存在、つまり本物の民衆である可能性が高いと考えられます。

IRIB通信によりますと、サンダース上院議員は、「トランプ大統領は憲法を無視し、民間人を爆撃する野蛮な独裁政権サウジアラビアを支援する考えだ」と非難しました。

サンダース氏はツイッターに、「トランプ大統領は米国を戦争から遠ざけたいと発言したが、これは嘘だ」と書き込みました。

さらに、「イエメン空爆を行なうサウジへの違法な支援を終了させるために超党派法案を可決した。だが、トランプ大統領はこの法案の承認を拒否した」と記しました。

また、「中東で平和に貢献するということは、現在イスラエルに存在する、人種差別主義の過激な政府を支援しなければならないという意味ではない」とし、「ガザで起こっていることを見るがいい。人々はそこを離れることさえできない」と続けています。

サンダース上院議員が、トランプ氏によるサウジ支持を強く批判
PARSTODAY

それは彼のこの発言にとてもよく表れています。彼は、アメリカのタブーに切り込んでいます。これはアメリカそのものを内部から攻撃する行為に近いのです。なぜ、そんなことが出来るかと言ったら、彼が本物の民意に支持されているからでしょう。

アメリカの倒し方

中国の倒し方を言う専門家は多くいますが、アメリカの倒し方を語る人は一人もいないので、僭越ながら私がお教えしましょう。

それは、サンダースがやっている戦略です。アメリカの悪を叩く、これが最も効果的な方法です。それはアメリカの最大のウィークポイントと言えるものです。なぜなら、彼らはこの点に関して一切のいい訳をすることが出来ないからです。国際情勢に善悪はないと教わりましたが、それは偽善で、米英イスラエルに有利な考え方です。彼らは単に犯罪者だからです。

チョムスキー氏は彼らを「道徳の堕落者」と呼びましたが、これはまさにその通りです。我々全世界の人類には、当然ながら道徳心が備わっており、その点からの非難が集まった場合、彼らには防御が一切出来ないのです。彼らに出来るのは、せいぜい嘘をつくことでしかないのです。

しかも、その嘘は如実に露呈し始めています。

私は以前、「彼らには強さしかない」と書きました。しかし、ここ最近、彼らにはそれすらないことが明らかになりつつあります。コロナウィルス被害に乗じた中国悪魔化プロパガンダなどはその象徴で、こんなくだらない作戦で中国を倒せると思ったら大間違いです。

<欧米メディアは独裁体制の欠陥と中国国民の怒りを取り上げるが実質はより複雑、不満の矛先を地方政府に向けさせる「トカゲの尻尾切り」によって中央政府は株を上げている>

新型コロナウイルス「COVID-19」による肺炎は、週末の時点で1500人以上の死者と6万6000人以上の感染者を中国で生んでいる。欧米のメディアでは、共産党体制への国民の支持が揺らぐ可能性を指摘する議論が目につく。「政府対国民」という二項対立の図式に基づく見方だが、これは単純過ぎる。

新型コロナ対応で共産党支持が強固になる皮肉 ニューズウィーク 日本版

それは強者のそれではなく、単なる卑怯者のやることです。彼らは臆病者で正面から戦うことすらできない、世間ではそれは弱者と判断されるのが普通ではないでしょうか。つまり、彼らにあったのは、実際、嘘と卑劣さだけだったのです。

とはいえ実際問題

とはいえ、実際に今回の選挙でサンダースが勝てるか、と言うとそれはなさそうと答えるしかありません。なにせ「保守的なグループ」はアメリカのCIAやイギリスのMI6、イスラエルのモサドなどの諜報機関を自由に扱える権限を有している可能性が極めて高いからです。

この話にソースを提示しろと言われても難しいのですが、例えばヨーロッパー最大の財閥、ロスチャイルド家の5代目当主のヴィクター・ロスチャイルド、彼について、ウィキペディアにはこう書かれています。

大戦中からイギリスの対外諜報機関と連携することが多かったため、その人脈を生かして戦後には私的諜報機関を作ったといわれ、中東戦争や中国国共内戦の情勢を調査したり、イスラエルの諜報機関モサドの育成にあたったなどといわれているが、諜報活動の真偽を調べるのは困難であり、定かではない 。

ヴィクター・ロスチャイルド (第3代ロスチャイルド男爵)  ウィキペディア

これはかなり辻褄があっている話であり、信じてもいいと言えるでしょう。実際にロスチャイルド家はイスラエルの建国に中心的な役割を果たしています。だから、彼らは白昼堂々米大統領の頭を撃ち抜くことが出来たりするのです。JFKの暗殺の真犯人はもう分かったも当然でしょう?

ですから、サンダースがいくら民意に支持されているからと言って、彼らに勝つのは容易ではないでしょう。

未来の希望?

ただ、このムーブメントに私は一つの希望を見出したのです。実際、イスラエルを批判するアメリカの議員が支持率でトップを飾るなど、到底考えられないようなことでした。それは直接、彼らの力の弱体化を表しているのではないでしょうか。

もし、万が一サンダースが勝った場合、中国との覇権戦争に米国は確実に負けるでしょう。しかし、そんなに悲観的にならなくても大丈夫です。その暁には、今度はきっと中国の民衆が中国共産党を倒すからです。

我々の民意が権力者を倒す未来、最高じゃないですか。「保守的なグループ」と中国共産党が共倒れる未来、私達日本人にとって、ベストシナリオじゃないですか。

ハーメネイー師は20日月曜、イランのメッカ巡礼関係責任者らと会談し、「イランの抵抗を含む、イスラム的な思想の基盤は世界にとって魅力的だ」とし、「米国がイラン国民に苛立ちを覚える理由は、国際社会の一員である武断的な国に対し、独立した体制(=イラン)が立ちはだかっているからである」と述べました。

また、イランの新たな表明、すなわち世界に向かって宗教的民主主義というモデルを発信することを強調し、「宗教的民主主義のモデルは、世界ではまだ知られていない。今日、反イランのプロパガンダを発信する多数の宣伝機関に対抗する中で、このモデルや米国による敵対の理由、イラン国民が暴力に屈しないという論理等のテーマを世界に向かって説明する必要がある」としました。

parstoday

実際に国民の抵抗によって、外部の強力な権力者を倒した国も存在しています。私たちの力は意外と大きいのかもしれませんよ。そして、その鍵を握るのは、価値観だと私は思います。彼らにとってのそれはイスラムでしたが、私達にとってのそれはなんでしょうか。私たちは日本人です。

30年後の未来は、ヨーロッパの巨大財閥が勝つか、中国共産党が勝つか、そのどちらかだとずっと考えてきました。そして最近の私は、その未来はどちらもあまり良くないものであることに絶望していたのです。

しかし、今度のサンダース旋風によって、「最後に民意が勝つ」という第三の物語がほんの少しだけ、隙間から覗いたような気がしたのです。

そんなの絵空事だ! いいじゃないですか。やはり、誰しも未来には希望が必要なのですから。