若者たちが社会主義志向に傾いているという話を最近よく聞きます。しかし、逆に若者で無い人たちは、そのことへの懸念を感じているようです。私は若者ではない側ですが、しかし、大人たちと一緒になって若者の考えを否定する気は今のところありません。彼らの感覚は正しいのではないか?と感じる部分も最近は多くなっているからです。
社会主義、共産主義は何がそんなに悪いのか
米大統領選に向けた民主党の候補指名争いでは、バーニー・サンダースが有力候補と目されるようになっている。多くの中年・年配の米国人にとって、サンダースを熱烈に支持する若者の多さは驚きだ。しかし、20代や30代前半の人たちと話せば、そうした人々がサンダースやその民主社会主義政策に大きな関心を寄せていることが浮かび上がる。
サンダースと民主社会主義を支持する米若者世代 その背景とは?
FORBES japan
まず、この話が本当のことである、という前提で今回の話を進めます。私は実際に若者たちとそのような話をしたことがないため、彼らが本当にその志向を持っているかは分かりません。しかし、恐らくこれは本当の動きではないか、と言う感覚はあります。
対する大人は、社会主義、共産主義の弊害を気にしていると言います。しかし、この弊害についてきちんと分かっている人は、どれくらいいるのでしょうか?
私もよく分からないので色々見てみましたが、特にこれと言ったまともな見解はありませんでした。とにかく「共産主義、社会主義は悪い」と言うことにされていることは分かったんですけどね・・。
だが待ってほしい。資本主義の恩恵を忘れてはいないだろうか。
アメリカのブルッキングス研究所によると、ベルリンの壁が崩壊した1989年以降、世界の貧困層は52%から21%へと減少した。さらに人類史上初めて、約38億人が十分な所得を得て、自分を中流層か富裕層だと考えるようになったという。
それはベルリンの壁崩壊後、民主主義体制下で生きる人が、23億人から41億人へと約2倍になったことにも起因する。
若者たちが急速に左傾化するアメリカ:若者の7割が社会主義者に投票予定
THELIBERTYWEB
例えばこの人は、資本主義のおかげで貧困層が減り、人類が豊かになったと主張します。いやいや、こっちこそ、待ってくれよ、ですよ。貧困層が減ったのは本当だとしても、それが資本主義のおかけだという証拠がどこにあるんですかね?
それを言うには、同時期の同環境で、その他の主義では貧困層が減らなかったというデータが必要です。残念ながらこの人の主張には、全く論理性がありません。そうだったらいいな、という話をしているに過ぎません。
若者の根源的な懸念
若者にとって、社会主義は抽象的な概念なのだ。現状に鑑み、米国が資本主義から社会主義に転向してもあまり失うものがないと感じている若者は多い。現状や将来の見通しに全く自信が持てないので、可能性に賭け、変化を起こすことに価値を見出しているのだ。
若者は、自分たちが親世代より低い生活水準を強いられる初の世代になるかもしれないことに気付き、恐怖を感じている。
サンダースと民主社会主義を支持する米若者世代 その背景とは?
FORBES japan
私には彼らの将来への心配の気持ちが分かる気がします。そして、彼らが求めているのは主義ではなく、「平等」という人間の根源的な価値観なのではないかと感じます。
狩猟採集民が平等主義である事実からは、資源の分配に対する私たちのこだわりには長い進化の歴史があることが窺える。狩猟者は自ら仕留めた獲物を切り分けることさえ許されない。家族や友人に便宜を図ることがないようにするためだ。人類学者はこれまで、世界各地の人々に最後通牒ゲームをやらせ、人類はどこで暮らしていても公平性に関心を抱いていることを突き止めた。
『道徳性の起源』 フランス・ドゥ・ヴァール
私たちは生活水準の良しあしよりも、本来、公平さを強く求めるということです。
サイエンス誌によれば、人間の脳は絶対的な富より相対的な富の差に強く反応するという。こうした人々の気持ちを理解しようとせず、私たちは格差批判を敗者の「負け惜しみ」と切り捨て、貧しいのは怠惰や浪費、そしてリスクを引き受ける勇気の欠如のせいだと決めつけてきた。
今の資本主義には規律も公平さもない、若者たちが憤るのは当然だ
ニューズウィーク 日本版
資本主義は、私たちのこの究極的な欲求に全く答えていませんね。 私たちは今より貧しくても、みんなが同じであれば、それで満足できるのです。これは資本主義の精神とは全く異なりますが、それが本当の人間の心なのです。
資本主義の正しさはプロパガンダ
それでも大人は、資本主義はすばらしいものだと信じている人が多いようです。実際そのような人々は、若者の主張に対し先程の記事のような見解にならざるを得ないのです。
しかし、資本主義の自由競争至上の精神では、昨今のマスクの高額転売を否定することすら出来ません。マスクの転売で2,000万円儲けた人がいるという記事を見かけましたが、彼らは資本主義思想の元では、成功者であり賞賛されるべき存在なのです。
資本主義思想とはその程度のものだ、と言うことが如実に露呈した事案ではないでしょうか。
ジョン・D・ロックフェラーは、それを宗教とまで結び付け、大企業の成長は「自然の法則と神の法則がうまく働いた結果に他ならない」と結論した。
『共感の時代へ』 フランス・ドゥ・ヴァール
イデオロギーの正しさを語る前にまず、彼らは明らかに事実を誤認しています。神様は人間をそのようには作っていないのですから。阿保のくせに勝手に結論づけんじゃないよ。「まったく、アタマにくるやろうだ・・・」
結局、それは彼ら大資本家たちのプロパガンダに過ぎないのです。
社会主義がいいのか
ただ、社会主義がうまく行くか?と聞かれると私はやはりちょっと懐疑的かなあと思います。いつかの時代のように権力の頂点を誰かが握り、支配者がそのために社会システムを利用しているようであれば、それは資本主義となんら変わりがなく、資本家が違う名前で呼ばれるようになっただけに過ぎません。
結局そのような形になってしまうリスクは結構高いと言えるでしょう。若者の皆さんへは、その点には注意してねと私からアドバイスさせていただきましょう(笑)。
どんな社会システムであれ、暮らしの良し悪しを左右するのは結局、私たちの価値観ではないでしょうか。
「誰かを出し抜いて成功者になればそれでいい」
彼らの思想では、今、マスクを高く売ることさえ否定できません。隣より広くて綺麗な家に住むことはそんなに素晴らしいことでしょうか? 私に言わせれば、それは単なるイスラエル主義です。 それは所詮、彼らが作った価値観だということです。もちろん好きにすればいいのですが、特別誇るような話ではありません。
繰り返しますが、 それは資本家たちが自分たちのために流したプロパガンダです。 人間はそのように生きることを運命づけられた生き物ではないのです。彼らの言質は、決して信じるに値するものではないことは、はっきりとここに記しておきましょう。
若者の本来的な懸念に気が付けず、資本主義は素晴らしいと連呼するだけの大人たちは、もう手遅れです。未来はこれからの若手に託しましょう・・と言うほどは私もまだ歳ではないのですけどね(笑)。