アメリカの大統領予備選挙で、トランプ氏の共和党大統領候補としての指名獲得が確実のものとなったようですね。数々の過激発言で物議をかもすトランプ氏が実際に大統領になったら、一体どうなってしまうのか。ネットで調べてみると、世界は大荒れで、株は大暴落するのではないか? そんな記事ばかり出てきます。そうなると、逆の記事を書いてみたくなるのが、私の悪い癖です(笑)。

トランプで株価暴落はむしろ変

大胆予測!トランプ大統領誕生なら、アメリカの経済政策はこうなる

現代ビジネスにこんな記事が出てました。経済学者の高橋洋一さんの記事です。高橋洋一さんの本は私も読んだことがありますが、非常に分かりやすく、説得力がある内容でした。この人が言うのだったら、デタラメではないだろう、そんな風に思える方です。

最近のトランプ氏の発言をみていると、いよいよ「ヘリコプターマネー」を言い出すのではないかと筆者は思っている。

トランプ氏の積極財政、金融緩和は世界経済にとってはそれほど不味いことにならないだろう。

高橋さんは、トランプが、もし、大統領になれば、積極財政と金融緩和を行うのではないか、とおっしゃっています。このような政策を標榜している人が大統領になって株価が暴落する、と考えるのは、むしろ変ではないでしょうか。では、なぜ暴落説がこんなにも溢れているのでしょうか。

それはおそらく、彼の自由な過激な放言が、「彼が大統領になったら、世界の混乱を引き起こすのではないか?」との漠然とした不安を人々に与えているからではないでしょうか。

 

トランプはペテン師だから大丈夫?

しかし、私はそれも言うほどではないのではないか? と思っています。確かに彼が大統領になって、彼の発言の通りの政策を次々に断行すれば、世界中は大混乱! となるでしょう。しかし、そんなことが現実に可能でしょうか? アメリカは独裁国家ではないのですから、奔放な発言通りの政策を行うことなど、事実上不可能なはずです。

現時点で、共和党内に反対派が多数いるくらいなのですから、議会で反対派を蹴散らして、政策を次々決行することなど出来るはずがありません。北朝鮮なら、粛清しちゃいますけど、彼は結局、妥協点を見つけていくしかないのです。それに歴史上、投資家に逆らった大統領はことごとく暗殺さているそうですね・・。トランプもそう簡単には我々には逆らえないってことです(笑)。甘利氏はそれに逆らったから、失脚させられたようにしか見えな・・いえいえ、何でもないです。

そもそも政治家が選挙前に言った通りのことを行った試しなんてありもしないではないですか。アベノミクスが期待された通りに実施されていれば、今頃日経平均株価は2万5千円くらいのはずです(笑)。

もし、この考えが正しいとするなら、トランプは大統領に当選したら、過激な発言は鳴りを潜め、ある程度おとなしい普通の政治家になるはずです。でも、そうなると、今度は国民が怒りだすかもしれません。それが混乱に?

「トランプは言ったこととやっていることが違って、期待を裏切った。彼はペテン師じゃないか!」

いえ、それも大丈夫です。なぜかと言うと、これには前例があります。それがEU離脱問題で世間を賑わしたギリシャのチプラス首相です。

「ギリシャ国民は緊縮財政を直ちに廃止し、政策を変えることを強く求めた」
「そのため、失敗に終わり破壊的な結果をもたらした救済措置をまず停止する」

こんなかっこいい台詞を次々に放ち、ギリシャの英雄となった彼ですが、結局最終的にはEUに完全敗北し、条件を丸のみしてしまいました。そんなペテン師のチプラスですが、しかし、驚いたことにそれでも彼は国民の支持を決して失うことはなかったのです。

これが表していることは、元々ギリシャ国民は、チプラスの発言が嘘であることを見抜いていて、それでも、「ひどい今」を変えてくれるかもしれないと言う夢を見せてくれるチプラスを支持した、ということでしょう。逆に言うと、本当に痛みを伴う改革なんて国民は求めてなかったと言うことです。夢で、嘘で十分だったと言うことです。

これは、同様に今のアメリカにも当てはまるのではないでしょうか。トランプ氏の支持の理由は今の政治に対する不満からだと言います。閉塞した「今」を変えてくれるかもしれないという夢を見せてくれるだけで十分。だから、彼の過激な発言が今だけの物であったとしても、支持は失わないと言うことが、ギリシャの例からも予想出来るのではないでしょうか。

そして、夢を見せてくれることに関していえば、その力はクリントンより遥かに上だという事実があるのではないでしょうか。

 

トランプの勢いが景気回復を生む?

トランプが大統領になったとしても、発言通りの過激な政策なんてとても出来ないでしょうが、しかし、積極財政と金融政策くらいは十分行ってくる可能性があるでしょう。それは、当然、経済回復、インフレ要因となるわけですが、それ以上に大きいかもしれないと思われるのが、トランプ氏の「何かを変えるかもしれない」、というその「空気」です。

景気と言うものの本質は、決して理論ではなく、その名の通りに人の気によって、好不調が決まる物ではないでしょうか。人がこれから良くなると思えばよくなるし、悪くなると思えば悪くなる、そんな性質のものだと思うのです。

今、先進国はデフレに悩み、そこからの脱却を金融緩和に求めていますが、一向にその目が見えてきません。もうインフレにはならないのではないか、景気は再び悪化に向かうのではないか、そんな停滞感が漂っています。そんな空気をぶち壊す爆発力を彼が秘めていることは、予備選の結果に表れています。これは、実は景気の回復には一番重要な要素ではないでしょうか。それは、つまらないクリントンにはない魅力となっているのが事実なのです。

以上のことから、NYダウはむしろ暴騰してもおかしくないと私は思います。

 

イエレン先生は交代?

イエレン議長は4年で交代だとトランプは言っているようですね。彼女にとっては、その方がいいかもしれませんね。ここに来ての積極財政と金融緩和はイエレンの意向とは違うと思います。

高橋洋一さんのおっしゃるような政策が本当に行われたら、アメリカ株のバブル化は間違いないと思われます。世界の潮流は、バブルの方向へ向かっているようにしか私には思えません。バブルを防げなかったFRB議長と言う不名誉なレッテルを張られる前にイエレンさんは退いた方が賢明だと私は思いますね。中央銀行総裁として真面目で誠実な彼女はトランプとは決して合わないでしょう。

 

日本株は?

では、日本株の行方はどうなると想像できるでしょうか。やはり、トランプショックは初めは起こるかもしれません。積極財政と金融はドル安を生み出すでしょうし、ダウが上昇しても、日経平均は全く上がらず、おなじみのかい離が進むかもしれません。しかし、トランプノミクスが成功し、アメリカの経済の大々的な復活の暁には、日本株も最終的にはやはりダウを追従する動きが出るでしょう。そんな動きが実際、度々起きていることは過去記事でお伝えした通りです。

nikkei225-NYDow2

インフレの加速と株価暴騰はアメリカを自然とドル高政策へ戻すでしょう。その時が、日本株暴騰の初まりではないでしょうか。

以上、こんな妄想を膨らませながら、大統領選挙を見守ると言うのも面白いではないかと思いますが、どうでしょうか。