恋に落ちていたマーケット

昨日のECB理事会で予想通り、追加の金融緩和が発表され、ドラギ総裁の雄たけびによって、株は暴騰! のはずが、なんと! 世界同時株安になってしまいました・・。緩和の規模が期待に全く届かないということで、ユーロは暴騰、ドイツ株は3パーセントも売られていたみたいですね。

この動きには驚きましたが、正直なところ笑ってしまいました(笑)。

ドラギ総裁

写真 -ロイター-

マーケットはドラギ総裁に惚れすぎていたのではないかと思いますが、まあ、それも仕方ないでしょう。

「ユーロを守るためなら何でもする」

というたった一言で、ユーロを崩壊の危機から救ったり、無理と言われていたユーロ圏での量的緩和を有言実行して見せるなど、その男らしい兄貴っぷりにマーケットは完全に恋に落ちていたのです。

 

まさに「恋は盲目」、そして、

「あなたは熱に浮かされているのです。熱が冷めると厭になります」

「自分が欺かれた返報に、残酷な復讐をするようになるものだから」

  夏目漱石作 『こころ』

マーケットは当ブログでも、もううるさい、というくらい紹介しているこの名言通りの動きになってしまいました。

 

期待に応え続ける、というのは無理な話。それも「先生」の教え

人の期待に応え続けるということは出来ません。応えれば応えるほど、さらに大きな期待を集めるからどこかで、裏切るしかないのです。周りの反応が怖くて、それが出来ない人は嘘でつないでしまうんですね。嘘でつないだ期待は無制限に膨張し、とうとう、嘘も限界に達した結果、信頼は地に落ちる。よくあることです。

しかし、ドラギはそんな嘘はつかなかったということなんですから、マーケットとドラギの信頼関係が崩れる、ということはないでしょう。期待には届きませんが、実際に緩和を拡大しているわけですからね。

このくらいの喧嘩の度に恋人と別れていては、お互いに身が持ちません(笑)。モテル男はつらい・・といったところでしょうか。

痴話げんか

もし、ビジネスの場か何かで、周りからの期待やプレッシャーに悩んでいる、という方がおられましたら、ドラギ兄貴のこの豪快なフラれっぷりに勇気をもらって、さっさと裏切ってしまいましょう! 周りからの期待なんて、鬱陶しいだけなのですから・・。それも、『こころ』の先生の教え通りです。

私は今のあなたからそれほどに思われるのを、苦しく感じています。しかしこれから先のあなたに起こるべき変化を予想して見ると、なお苦しくなります。

アメリカの利上げの行方と兄貴らしさがなかった関係は?

さて、ドラギとともに、当ブログでもその手腕を高く評価している米FRBのイエレン議長も、同じくマーケットに愛された人です。彼女も直近、「利上げ」という大仕事を抱えています。彼女はドラギとはタイプが違く、女性らしく細やかな丁寧な説明でマーケットの信任を得てきました。そんな彼女も、ドラギのようにマーケットから、残酷な復讐を受けてしまう可能性はあるのでしょうか。

私はイエレンは、マーケットとの相思相愛を崩さず、「華麗な利上げ」をやり遂げる、と思っています。(イエレンの華麗な利上げは12月か!? ~マーケットとは相思相愛~)

彼女がマーケットから集めるのは「恋」ではなく、「尊敬」だと思うのですが、結果は、果たしてどうでしょうか!? 利上げが発表されるかもしれない、FOMCは12月16日、要注目です。

 

最後に一つ、気になるのは、今回ドラギ総裁に対する期待が高すぎてこのようなショックになったのは仕方ないとは思うのですが、いつもの「兄貴」らしさが感じられなかったのも事実です。これまで、言葉通りかそれ以上の行動を示して来た彼なのです。

人格というのは、そんなに短期間に変化するものではきっとないでしょう。「らしくない」ということには、”何か特別な理由”があった可能性もあるのではないでしょうか。それはなにか?

これは単なる私の推察に過ぎないのですが、その一つにはアメリカの利上げに絡む「ドル高」に対する配慮、もしくは圧力があった、ということも考えられるでしょう。また、ドイツの反対という見解もあるようです。ドイツはともかく、アメリカの反対だったとすると、日本も金融緩和はしばらく難しいということになりますが、どうでしょうね。

利上げが済んでんでしまえば可能なのでしょうか? この辺りが、今後の直近の日本株の動きの肝ではないでしょうか。