マーケットは、イギリスの離脱問題一色ですね。もし、離脱があれば100円割れへ向かい、もし離脱なしであれば、110円手前くらいまでは、戻るかもしれませんね。私は離脱なしだと思うのですが・・。

こちらについてはこれ以上は書けそうもないので、話題を変えたいと思います。ブルームバーグに以下の記事が出ていました。

「有言不実行」の米金融当局、投資家の信頼喪失の恐れも

アメリカの中央銀行的機関のFRBの言動が最近ぶれてきており、これが投資家の信頼を損ないはじめているのではないか、と言うのです。

ブレはじめたFRB

この記事の通り、確かに最近のFRBの言動は不可解な部分が感じられます。4月のFOMCでFRBメンバーの利上げへの積極姿勢を、イエレン議長が真っ向から打ち消したのですが、その議事録ではやはり、早期の利上げが議論されていました。

また、イエレン議長の講演で、「今後数か月の利上げの可能性」という言葉があったにも拘らず、約2週間後の6月のFOMCではそれを感じさせる内容が出てこなかったり。どうも、FRBには迷いがあるように見えるのですが、これには彼女ら自身ではどうにもできない苦悩が潜んでいるのではないか、と考えられるのです。

当ブログでは予てから、”FRBの本心”への見解をお伝えしてきており、それが最近の彼らの発言から、ある程度正しかったことが証明されつつあります。FRBの最近のこころの揺れを捉えるには、今から半年ほど遡り、アメリカ以外の中央銀行にも目を向ける必要があります。注目すべきは、ECBと我らが日銀の動きです。彼らを含めて見てみると、その不可解さはすでに昨年の夏から始まっていたのです。

不可解なドラギ総裁

2015年12月の追加緩和

まずは、ヨーロッパ中央銀行、ECBの動きから追ってみましょう。この注目すべき事態が起きたのは、昨年の12月のことです。ECBは3か月も前から、12月に追加緩和を拡大することをアナウンスしており、投資家の期待はいやが上にも高まる状況でした。しかし結果、ECBとドラギ総裁はマーケットの期待を大きく損ない、いっきにユーロ高に動いて、株価は暴落の様相となってしまいました。カリスマ株式評論家の山本伸さんは「ECBの追加緩和は納得のいかない内容だった」とおっしゃっていました。そして、当時の記事の中で私はこう書きました。

「マーケットの期待が高すぎた面があるだろうが、それにしても、ドラギは期待が分からないような人物ではないので、もしかすると利上げを控えたドル高に対する配慮、もしくは圧力があったのではないか」

ECB、「ドラギ」兄貴、豪快にフラれる! ~マーケットは熱に浮かされていたのです~

 

2016年3月の追加緩和

さらに、ECBは今年の3月にも追加緩和に踏み切りましたが、今度は発表直後は株価を大きく引き上げることに成功しました。しかし、ここでもまた不可解なことが起きました。

「ECBの追加緩和は限界に近いかも」

ドラギはその後の会見でこのような余計なことを言って、せっかくの株価の上昇を失速させてしまったのです。なぜ、彼はこのようなことを言ったのでしょうか? これは真実なのかもしれませんが、それをわざわざ言う必要は全くありません。そして、それはドラギ総裁が一番よく分かっているはずのです。彼は投資家の心理掌握については、非常に定評のある総裁です。

なにせ、彼はユーロ危機から、「ユーロを守るためなら何でもする」というたった一言だけで、投資家を救って見せた偉人なのです。私が女性なら惚れています(笑)。これは不可解と言う以外の何物でもありません。

 

日銀の不可解

では、今度は日銀の動きに目を向けてみましょう。昨年の春くらいから、ドル円とそれと連動する日経平均株価は突如急騰を開始し、夏にはドル円120円超え、日経平均株価は20,000円を超える動きとなっていました。そんな中、政府要人は円安けん制発言を行うようになっていました。私は、ドル円の動きを止めてしまえば、株高も止まるため、なぜそんな自虐的なことをするのだろうか、と大いに疑問を感じていました。

そして、とうとう日銀の黒田総裁自ら、「これ以上、円安にはなりそうにない」と発言し、円安進行の息の根を止めてしまったのです。その理由に対する当時よくあった解説が「中小企業への配慮」と言うものでしたが、私には意味不明でした。

そして、ECBが追加緩和に失敗した後の、12月の金融政策決定会合で「補完措置」と言う訳の分からない政策を発表し、見事な暴落劇を演じたのです。

 

黒田総裁は、元々言動が一致している人ではないのですが、とにかく躊躇なくぶっぱなすことに関しては、疑いの余地はないのです。その黒田さんがらしさを失い、躊躇し始めたのもその頃からと言うことになります。これはやはり、アメリカへの配慮、圧力から来ることなのではないか、と書いてきました。

 

マイナス金利の功罪

その後、日銀は史上初のマイナス金利の導入に動いたわけですが、一時的に円安株高効果を発揮したものの、短期で下落へと転じてしまいました。マイナス金利は関係者からも非常に評判が悪く、批判の対象になっていますが、これはこのことが理由だと思われます。黒田総裁は「マイナス金利」の効果は非常に出ていると繰り返しておりますが、これはあながち嘘ではないと、朝倉先生も言っていました。

やはり金利の押し下げ効果が非常に強いと言うのです。それに政策の効果は、そんなに短期間に判断できるものではないでしょう。批判は、その後の円高、株安の動きを見ての物だと考えればいいのでしょう。そして、この政策が短期間に円高を招いた理由はすでにアメリカのドル安圧力が高まっていた中で、それに敗北したからです。

つまり、日銀のマイナス金利の功罪は、「アメリカの意向に逆らった」ということになります。黒田さんは、このことからもすごい、かなり無謀とも言える、リスクテイカーだと言えるでしょう。そして、その罰をアメリカから受けている。さすがに今は動けないのも当然と思われます。

 

不可解なイエレン先生も同じ理由

イエレン議長は、投資家から絶大な信頼を得る稀に見る議長だと思いますが、その支持の理由はやはり有言実行に裏付けられる誠実な言葉にあると思います。しかし、ここ最近、彼女の言動が不可解さを帯び始めたのも事実です。その理由は、意外にもドラギや黒田さんと同じだと推察されるのです。

 

当ブログでは、FRBはドル安と、そしてそこから生まれるバブルを何より恐れている、と言うことを繰り返しお伝えしてきました。そして、最近のFRB高官の発言からそれが裏付けられました。

ダドリー総裁は最近の株式市場でのボラティリティについて、「金融環境のある程度の引き締まりは全く適切だ」とし、「いわばそれが金融政策引き締めの目的のようなものだ」と続けた。

ブルームバーグ

しかし、アメリカの政治家はそれを許しませんでした。彼らが最優先するのは、実体経済です。確かに最近のアメリカの経済指標はイマイチなものが多く、その原因をドル高に求めるのも分かります。ですから、アメリカ政治はECBや日銀と同じように自国のFRBへもドル安への配慮を求めていたとしても、まったく不思議ではないわけです。

これが、最近のFRBの言動の”不一致”の理由と考えられるのではないでしょうか。つまりは、本音と建前が交錯しているのです。

 

まとめ FRBが正しいならばその先は・・

「ECBは政治家ではなく、法に従う」

ドラギ兄貴はそのストレスに対して、こんなかっこいい発言をしています。しかし、それは言うほど簡単なことではないと思います。私は、イエレンとドラギはとても好きですし、彼女らは非常に稀有な能力でマーケットのために仕事をしてくれていると思います。ですから、最初の記事の様に彼女らに批判が高まるのはとてもいたたまれない気持ちなのです。

それにはこんなどうにも出来ない事情があるのだ、と言うことを書きたかったのです、そう全ては「ドル安政策」のためなのです。黒田総裁はあまり好きではないですが(笑)、とにかくハイリスクを冒してくれていることは間違いがないので、彼だけが批判されるのには同情しますね。

今から一年近くも前から、始まった日欧米の中央銀行の不可解は、「ドル安」と言うその一本の線に収れんして考えることでその本当を捉えることが出来るのではないでしょうか。

そして、FRBはバブル化を防ぐために世界市場を混乱させてまで利上げを断行しようとしていたのですから、その芽が摘まれた今、米株は今後バブル化すると考えるのは普通ではないでしょうか。EU離脱を問う国民投票と言う大悪材料を抱えても、一向に下がらないダウの動きはFRBの懸念が顕在化しつつある兆候とは考えられないでしょうか。