アメリカ準備制度理事会、FRBの6月の利上げが確実視される中、一向に進まないドル円相場ですが、その理由はトランプ政権の混乱だと一部では伝えられています。確かにそれは理由の一つだと思います。しかし、だからと言って、ドル円相場がいつまでも政治状況に付き合って、軟調なままかというと、私はそうは思いません。

FRBは今年、利上げの加速させることに加えて、「バランスシートの縮小」を開始する方針を固めつつあります。バランスシートの縮小とは、簡単に言うと、金融緩和で市場から買い上げた債券等を元に戻す、つまり、金融政策を引き締めるということになります。

利上げの加速にバランスシートの縮小、なぜFRBは市場関係者の想定を超える引き締めを、粛々と進めるというのでしょうか。それはごく単純に考えるに、「経済が過熱し、インフレが加速することを警戒しているから」ではないでしょうか。もし、この想像が当たっているならば、世界経済の先行きも見えてくるかもしれません。なぜなら、彼らの懸念はいつも当たるからです。

 

世界経済の先行きを知りたければFRBの声を聴くべし

当ブログでは、予てから、世界経済の先行きを知りたければFRBの声を聴くべきだ、と主張してきました。たったこれだけで、昨年秋から今年の頭にかけてのドル円の急騰と、NY株の更なる高騰を予測することが出来ました。

彼らFRBは、予てから株高を警戒し、2017年は利上げを加速させることを正直に我々に語ってくれていたからです。しかし、多くの市場関係者にとって、それはかなり意外なこととして捉えられたようです。

FRB政策は2重の引き締め効果! 「米ドル/円」120円方向へ

今回、バランスシートの縮小に関して分かりやすい解説としてこちらを見つけました。例えばこの中でも、

「イエレンFRB議長の1月以降のこの変貌ぶりは何だい」

とあります。しかし、私は昨年11月12日に書いた

トランプ大統領誕生後のマーケットを占う ~2017年はインフレで利上げは加速?~

という記事の中で、「来年はイエレン先生豹変の年です」と書きました。なぜこんな風に思ったかというと、彼らの発言を聞いていれば、2016年は利上げをもっとしたくても出来なかった、ということが明白に分かったからです。その最大の障害だったと考えられたのが大統領選挙です。つまり、昨年のイエレンさんは本当のイエレンさんではなかったのです。

イエレンさんはよく言われるようなハト派な人物ではないのです。今のアメリカの経済状態に適切な金融政策の正常化をただ着々と進めています。

ここから我々が判断できることは、アメリカ経済は非常に堅調であり、今後もそのように推移する可能性が高いとFRB、世界最高のアナリストのイエレンさんは思っているだろうということです。トランプとかはあんまり関係なく、今のFRBの政策がスタンダードで、トランプの政策がうまく行けば、さらに引き締めを強めなければならない、というお話だと思うのです。でも、うまく行っていないんだから、スタンダードのままです。これが理由で先延ばし、ということにはきっとならないはずなのです。

3月の利上げ発表後の記者会見で、「この利上げを一般の方へのメッセージとしてどう説明しますか?」という質問を受けたイエレンさんは、「いい質問をありがとう」と言った後に、「アメリカ経済は非常に順調に回復しているということです」と答えたそうです。

我々は思いあがらずに、ただ先生の言うことを素直に信じればいいのではないでしょうか、

インフレ懸念

では、FRBが、利上げの加速だけでなく、バランスシートの縮小までをも積極的に議論し、二重の引き締めを進めようという動機はいったいどこにあるというのでしょうか。これは素直に考えてインフレへの懸念しかありません。

現在、米国では完全雇用が叫ばれ失業率は4.7%水準、一方で消費者物価は2%強とインフレを特段心配する水準でもない。ただ過去に目を転じれば1960年代、今とほぼ同じような状況が存在し、FRBが利下げを急がなかったため、失業率が4%を割った途端、消費者物価が3%を超え対応に苦慮した過去がある。

先程の記事にそのヒントがありました。現在の米国は完全雇用だと言われています。そこで何が起こるのかというと、人手不足です。そして、それがさらに何を招くかというと、賃金の上昇ですね。この賃金上昇が起こってくると、インフレが進む可能性が高まってきます。恐らく、FRBはこれを懸念していると推測できます。

と言っても、焦っているという状況ではなく、これが起きてくることを想定し、しっかり準備を進めている段階と考えるべきでしょう。

それが今回私が聞いたFRBの声なのですが、いかがでしょうか。

人手不足と賃金上昇、インフレと通貨安

人手不足がインフレへの足掛かりになる、で、この人手不足という言葉は、日本でも最近よく聞きますよね。しかし、同時にその割に賃金上昇が鈍いとも・・。これはなぜなんでしょうか。検索してみると、色々難し気な理論などが出てきます。きっとそれらはどれも正しいのだと思いますが、しかし、私がとても簡単に考えられると思っている理由があります。それは「まだみんなが気が付いていないから」というものです。

生意気ながら、日本の経営者のお偉いさんは、人手不足を言っていても、その将来の行く末をきちんと把握しておらず、人的リソースにきちんと投資できていないと思われるのです。日本企業の内部留保は過去最高だと伝えらていますが、それは貯金として積まれたままで、動いてくる気配が今のところありません。自社株買いには多少出てきて、昨今の株式市場の下がりにくい一因になっているようです。

私の勤めている会社でも当然、人手不足は叫ばれ、それを痛感しています。でも、今のところ、「ただ言っているだけ」の状態で、本格的に賃金上昇という投資に踏み込めていないのが実情です。「他社はどうだろう」、まさに様子見状態です。投資言葉で言うところの、「買いたい弱気」というやつですかね。

日本人は投資下手で、自分が率先してリスクを取る覚悟がなかなかないのです。有効求人倍率40年ぶりという数字を見てさえ、我先と投資に踏み出すことが出来ないのです。しかし、ひとたびトレンドが発生すれば、そこに殺到するのも日本人と言われます。

以上のことから、私は日本にもインフレが到来する日は近いと思っています。しかし、FRBとは違い、日本銀行はその準備が全くできていないように思います。当然、円安も加速すると考えるのは自然ではないでしょうか。