最近、日経平均とドル円の相関関係が非常に薄れているようです。日経平均が直近の高値に迫る中、ドル円はいまだに年初来安値付近の101円~102円をうろうろしています。先程も、アメリカの経済指標が少し悪かっただけで、102円から一気に叩き落されている動きを見ると、まだまだ円高圧力は強そうです。そして、この動きはまだしばらく続くと予想されます。しかし、更なる下にも行きづらいというのが、現状じゃないでしょうか。

しかし、このドル円と日経平均の相関関係はいったいなぜ、ここに来て大きく崩れ始めたのでしょうか。これはどちらかの動きがおかしいことを表しているのでしょうか? その理由としては、多く言われるように先日の日銀の追加緩和によるETF買いの増額がここに影響しているのは間違いないと思います。しかし、それだけかと言うとそうでもない気がします。私はおかしな動きのドル円に、日経平均がいつまでも付き合い切れなくなったように感じています。

ドル円-日経平均6か月png

※ドル円と日経平均複合チャート(直近6か月)

普通にみて、ドル円はおかしいほどに弱いからです。その弱さの理由については、あくまで推測ですが、過去記事でさぐっておりますので、よかったらそちらを見ていただきたいと思います。で、今回は何を考えるかと言うと、まさに今更ですが、「なぜ円安だと株高になるのか?」という疑問です。改めてみると、これが結構、ちゃんとした理由が見つからないのです。

 

ポンド安で高い英株価

世界の先進国の株価を見渡してみると、アメリカ株は史上最高値を更新、ドイツは年初来高値を更新と強い動きを見せているわけですが、とりわけEU離脱で大荒れのはずの英国株価は年初よりも15%も高く、アメリカ、ドイツを大きく上回る上昇率のようです。その理由になっているのが、ポンド安と言う訳です。そして、毎度大きく出遅れているのが、日本株でその理由は円高です。

 

通貨安=株高は絶対?

しかし、なぜ円高になると株安となるのでしょうか。よく言われるのが、「輸出企業の採算が落ちるから株価がさがる」というやつです。確かにこれでトヨタの株が下がる理由は説明できます。しかし、円高局面では円高の方が儲かる企業も同時に売られて全体が下がることがよくあり、これだけですべてはすっきりしません。

もう一つよく言われるのが、外国人投資家の影響です。東証一部の売買シェアは外国人投資家が7割を占めているため、日本株を買う際に円安になっても損しないように、同時に円を売るというのです。私も昔、アメリカ株を買ったことがありますが、その後にドル安になったため、株価に関係なく目減りしました。彼らはこうならないために、同時に円売りヘッジをかけるわけですね。だから、円安=株高になると。

なるほど、最初はこれで合点が言ったような気がしたのですが、しかし、後から疑問が湧きました。そもそも外国人投資家は日本株を買うために円を買っているのではないか、と。その後に円を売っても相殺となるだけで円安要因にはならないのではないか・・。やはりイマイチ納得いきません。

そんな中、大和住銀投資顧問のこんな解説を見つけました。

通貨と株式市場-「通貨安=株高」は本当か?(その1)

世界的には日本は例外で自国通貨安の時でなく、自国通貨高の時に株高となる国が多数です。

韓国は日本以上に輸出企業が多いため、ウォン安で株価が上昇するとのイメージを強くを持たれていますが、実際には逆、ウォンと韓国株は順相関の関係にあります。

通貨安=株高は、世界的に見ると絶対的な法則ではないようです。輸出企業が多い韓国でもそうではないというのです。

 

リスクオンの円安

こちらによると、通貨安=株高の理由は、投資家が積極的に資金を投じる、所謂”リスクオン”となると、低金利の通貨は売られ株が買われるため、低金利の国は「通貨安=株高」となるのだと解説さています。逆に”リスクオフ”となれば、低金利通貨に資金が向かい、株は売られる。なるほど、これが一番しっくりくる感じがします。

そして、こちらから極端に言えば、「円安=株高」は今たまたまだということになるでしょう。一言で言うと、トレンドです。だから、ドル円と日経平均株価の相関関係が崩れること自体は特別驚くべきことではないということです。

それに今はどこから見ても”リスクオフ”に傾いている場面ではありません。リスクオフでもないのに円高になるなんて、先の解説から考えると変です。しかも、その下落率は史上最大のリスクオフとも言える、「リーマン・ショック」に匹敵するものになっているようです。そして、米株価が史上最高値を更新する中で、大した反発すらない・・。

この不可思議な理由は、よく批判的に言われる「日銀の円安政策への手詰まり」だけで説明できるものなのでしょうか?

 

本当は怖い通貨安

私は今の円高は当然修正されるだろうと思っています。金融政策の正常化に向かっているアメリカと、異次元緩和をまだ当分維持する日本とで考えた時に、リーマン・ショック並みの円高がいつまでも続くと考えるのは、とても不自然だと感じるからです。もしそうなれば、大きく出遅れている日本株にも、世界の余りある資金が流れ込むのは必至と考えられます。

ところで、アメリカはなぜ、金利正常化に動いているのでしょうか。それは今の低金利を長期に渡って続けることは、インフレを加速させてしまう恐れがあるからです。少し古いですが、こんな記事がありました。

市場は混乱、本当に怖いのは通貨安! アルゼンチンペソ暴落はなぜ起こったか?

通貨高で苦しめられるというのは、実はあまり一般的ではなく、むしろ特殊なケースです。それよりも、本当に怖いのは通貨安です。

そう、私たちはまだ気づいていないのかもしれませんが、通貨安は本当はとても怖いものなのです。アメリカの始めた大規模な金融緩和に各国が追随し、資金がじゃぶじゃぶの状態になっていると言われています。各国はこぞって金融緩和に走り、通貨安によるインフレを求めたからです。だから、G7、G20の度に「通貨安競争は避けましょう」と毎度わざわざ宣言しているのです。

そんな中で、アメリカはいち早く金利の正常化に動き出しました。それはインフレ抑制のために、通貨高の方向へ舵を切ったということでもあります。世界のリーダーのアメリカは世界的な流れの先陣を切っているとみるべきではないでしょうか。

アメリカの金融緩和に各国が追随したように、今度は金融政策の正常化に各国が追随する時がやって来るように思います。それは各国が今度は通貨高を求めるようになるということです。それに失敗した国には容赦なくインフレが襲い掛かるということでしょう。

そして、将来的にその後塵を舐めそうな日本は、通貨”高”競争に敗れ、暴発的な円安とインフレに見舞われる可能性が高いとは考えられないでしょうか。かつては通貨安競争に敗れて超円高となった日本ですが、今度は真逆の方向に動いてしまうことも、少しは頭に入れておいても良さそうです。