10月10日、NYダウが、突然の831ドル安となり、翌日の11日にも再び545ドル安となりました。これを受けて日本株も急落。先月突如として急騰し、一時は24,500円手前まで買われた日経平均株価もあえなく、その上昇分をすべて吐き出す形になってしまいました。
この突然の急落に対し、まるで狐につままれたような反応を示している方が多いようです。特にアメリカ株の急落の理由が分からない、と言うのです。一般的に言われているのは、「米中貿易摩擦懸念」、「金利の急騰」、「中国経済の減速」などになります。
でも、少々詳しい人であれば、これらの理由には首を傾け、こう言いたくなることでしょう。
「何を今更言ってんの・・?」
そう、これらのリスクは確かに大きなものではあるのですが、すでにあまりに有名です。古びた周知の材料で株価が下がらないのは、投資家にとっては常識です。
そんな中、当ブログでは2カ月前から、今の株式市場には、ここ数年で一番と言ってもいい、巨大な爆弾が潜んでいる、と書いてきました。うちのブログに来たのは初めて、全然知らない、と言う方はぜひ、先へお進みください。
とうとうその片鱗があらわに
もったいぶってもしょうがないので、さっそく書いてしまいましょう。その爆弾の正体はこれです。
英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、英・EU間のデリバティブ(金融派生商品)や保険など金融取引の継続性に不安が強まっている。英中央銀行のイングランド銀行は条件合意なしの「無秩序離脱」の場合、最大で41兆ポンド(約6000兆円)のデリバティブが不安定な状態に置かれると警告。関係機関に対応を促した
~ 日本経済新聞 ~
どうでしょう。これを読んでどう思われますか? 私は2カ月前に、海外投資家の8兆円の売りの理由はこれではないかと睨み、「株価が暴落するかもしれない」と記事に書きました。
その後に、24,500円手前まで高騰しているので、当たっているとは言えませんが、そんなことよりも、これがどの程度の問題なのか? と言うことを読んだ方に掴んでほしいのです。
アナリスト、マーケットは完全無視
経済産業省は9日、英国の欧州連合(EU)離脱に関する官民の意見交換会を開いた。経産省は英国とEUが何の協定も結べないまま決別する「合意なき離脱」も想定されるとし、企業に「あらゆる事態に備える必要がある」と注意喚起した
~ 毎日新聞 ~
この「合意なき離脱」に対し、経済産業省はこのような注意喚起を行っています。でも、恐らくほとんどの個人投資家は知らないと思います。なぜなら、大手メディアもアナリストもマーケットもこの大問題を、なぜか完全に無視し続けているからです。そしてとうとう、期限と見られているEU首脳会談が、来週にも迫っているところまで来てしまいました。これは私にとっては不可解を通り過ぎています。
しかし、先日、とうとうこの問題を取り上げているアナリストの方を見つけたのです。
なかなか、この急落の「本質」についての言及が、市場関係者の間でありません。
ただ、日経新聞朝刊では、英国のEU離脱問題に大きく紙面を割いていたことから、どうも私見ではここに淵源があるのではないか、と思いました。確証はありませんが、ファンダメンタルズというより、金融市場そのものの構造変化に伴う動揺が始まっているのではないか、ということです。
もし欧州が本当に発信源だとしますと、市場参加者の多くが、この英国のEU離脱問題に関してノーマークであっただけに、かなり深刻な下げ相場に発展してしまうことかもしれません~ ヤフーファイナンス ~
欧州に起こる・かもしれない大惨事
そして、この松川行雄さんは本日の記事で更にこう書いています。
実はドイツDAX指数は、3月の世界同時株安のときのボトムを割っています。
この状況に陥っているのは、中国上海コンポジットをはじめ、新興経済国家の株価指数と同じです。
このドイツの問題は、三つのポイントが指摘されています。
一つは、もともとこれまでメルケル政権が中国に接近し、中国に入れ込みすぎた結果、米中貿易摩擦問題で、かえってドイツはその煽りを食い始めているということです。~ ヤフーファイナンス ~
当ブログにお越しの方は、この内容にぴくっとするところがあるかもしれません。ここでまた、これまで当ブログがお伝えしてきた内容が、はっきりとした一本の線を描いてしまうのです。
アメリカは米中覇権戦争に勝利するため、EU、そしてその雄であるドイツを叩く、と昨年一年を通して書いてきました。もう、詳述はしませんが、これはいい加減な話ではありません。詳しくは下記の本がお勧めです。
ドイツ銀行をアメリカが狙い撃ちすることにより、中国に大きな打撃を与えることも考えられる
そう、イギリスの離脱問題は、EUが一気に崩壊に向かうほどの、未曽有の金融危機に発展していく巨大リスクを秘めているのです。このタイミングでDAXが安値を割れてきた、と言うことはこの見解から、かなりの不気味な事実と言うことになります。
イギリスとEUどっちがヤバい?
離脱危機が発生した際にどうなるか、ということに関して、イギリスがまずいことになる、ポンドがまずいことになる、と言う見解はまま見かけます。
しかし、本当に危ないのはEUの方ではないか、と言う感じがします。イギリスのメイ首相は、「合意なきEU離脱は、この世の終わりではない」などとおっしゃられました。まあ、確かにそうです。経済は相当混乱するでしょうが、死ぬほどのことはないでしょう。
でも、EUにとってはどうでしょう? 瓦解に繋がる危険性を孕んでいますよね。つまり、下手をすると彼らにとっては、「この世の終わり」になるかもしれません・・。
「合意なき離脱」が起きても、イギリスが無くなることはないでしょうが、EUが露と消える可能性はあります。改めて考えてみると、この問題で、存亡にかかわる致命的なリスクを抱えているのは、実はEUの方なのです。
アメリカの怨念
中国を潰すためアメリカはEUを潰す、先程こう書きました。しかし、米国の姿勢にはそれ以上の”何か”を感じる部分があります。
3億人以上の人口を抱えるヨーロッパが単一市場として機能すれば、アメリカに対抗しうる勢力になる。共通通貨のユーロを流通させることで、ドルの一極支配を崩せるかもしれない。
EUはアメリカの覇権に対抗するために作られた組織だと渡邉さんは言います。そして・・
ドイツ銀行は、かつてのサブプライム問題でアメリカの金融市場を危機に陥れた”戦犯”であり、アメリカ当局としては当時の恨みがある。
ですから、アメリカは、中国経済の減速のためだけではなく、自分たちを脅かす存在、敵としてEUを潰しに行くことが考えられるのです。そのためにドイツ銀行が狙い撃ちにされるかもしれません。
それにしても、ではなぜ、イギリスが、アメリカの”報復”に協力するのでしょうか。これも渡邉先生に教えていただきましょう。
ブレグジットにより、キャメロン政権が倒れ、知中派や親中派といわれる人物が政権から追い出されることになった。新たに発足したテリーザ・メイ政権は、インフラ投資の見直しをはじめとして反中路線に舵を切っている。
(途中省略)
もともとアメリカの共和党はイギリスとの関係が深く、イギリスとしてもトランプ政権の誕生で冷え込んでいた英米関係を復活させて、従来のような「特別な関係」を再び構築したいと考えている筋が見て取れる。
これがイギリスが、アメリカのEU潰しに協力する理由です。彼らは”特別な関係”で結ばれているのです。
ユーロはヤバイ
ですから、通貨ユーロはヤバイです。今ユーロ円は130円ほどを保っていますが、2年後にはまさかの0円だったりして・・?
問題の本質をつかめ!
今回の記事の趣旨は、「合意なきEU離脱」が投資家にとって、はたまた一般の人にとって、どれほどの影響を与えるどの程度の問題なのかを考えることにあります。
先程も書きましたが、肝心のマーケットアナリストはこの問題をガン無視し続けています。この問題が目に入らなくて、果たして本当にプロなの?と言いたくなります。
私はこのブログを書く上で、一つのポリシーを持っています。それは人の悪口は書かないこと(笑)。ですから、これ以上は言いません。
しかし、私たちは、彼らが言わないから、大手メディアが取り上げないから、という理由で、問題の本質を判断することがあってはなりません。
全ては自分で判断するべきです。
私は先日の日経平均株価の上昇を尻目に、「ここは最後の逃げ場になる」と書きました。それはこの問題が相当深刻であり、私たちの生活に影響が及ぶ可能性を秘めたリスクとまで思っているからです。
私の投資家としての経験は大したことありませんが、過去一番の緊張、恐怖を持ちながら今のマーケットを見ています。はっきり言って、今回はかなり嫌な感じがします。
私はいつも、予想を当てたい、と願って記事を一生懸命書いています。しかし、今回ばかりは違います。必ず外れてほしい、そう強く願わずにはおれません。