前回の記事でも書きましたが、覇権国家米国の衰退は著しい限りです。私は、2020年、トランプ政権がコロナを利用した「中国悪魔化作戦」を展開し始めたのを目にした時、米国に勝利がないことを確信し、それを「警告」しました。

その馬鹿げた作戦を中止すべきである、と。

その頃はまだ、「自由主義陣営」というのを少しは信じていましたのでね。かれらは、その後も破滅の道を歩むことを止めていませんが、それは歴史上幾度も繰り返された、当たり前の姿でもあるようです。

「中央銀行」という支配道具

米国の覇権の衰退を語る前に、彼らがどうやって覇権を維持してきたのか、その方法を探ってみましょう。

アメリカの中央銀行であるFRBは、通貨発行権を駆使して、世界中の富を吸い上げ、世界経済を支配している。そんな噂話を一度は聞いたことがあるでしょう? その話は本当なんですよ。

それは米国が覇権を長期維持するための、知恵だったのです。

さらには、国際収支を赤字にすることも厭わず、諸外国から資源からサービスまでさまざまなものを購入するアメリカは、ドル債権国に対して「理論と統計」でドル保有の正当性を説いた。ドル債務国には、自らに従順なエリートを通じてドル建て債務を強要する。そうして各国の中央銀行から資金を吸い上げ、衛星国が購入する米国債を介して、さらなる国富を拡大させていく。そうした「帝国主義サイクル」を何度も回すことで、覇権を握り続けてきた。このように、過去、覇権国が衰退した構図を克服し、覇権を掌握し続けているのが今のアメリカである。

覇権国が衰退する時(4):アメリカ(2)【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

では、その「通貨発行権」とは、いったい何のことなのでしょうか。これこそが金融緩和なのです。

2008年11月21日、連銀議長のベン・バーナンキ自身が、堂々と自分の考え方を次のように述べている。

「米国政府には印刷機という技術があります。(現在では電子的に)政府は欲しければ欲しいだけのドルをほとんど何の出費もなしに作り出すことが出来ます。市場に流れる米ドルを増やすことで、あるいはそうすると脅すことで、米国政府はドル紙幣の価値を物やサービスに対して下落させることができます。それは物やサービスの値段を上げるということです。紙幣通貨体制下では、政府は常に高い支出を行うので、その結果としてどうしてもインフレが起きます」

私は、連銀の議長がこれほど正直に連銀の権限を語ったのを他に見たことがない。

『ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ』

現在、経済学ではインフレが私たちの利益であるかのような説明が、公然となされています。それに疑問を呈する記事を書いたところ、通りすがりの方から、強烈なお叱りを受けました。

「おまえは経済を分かっていない」

どこぞやの素人が主流の学問と違うことを偉そうに述べている、それがムカついたという訳ですが、まあ、気持ちは分かります。

しかし残念ながら、嘘は嘘なのです。経済学、中央銀行、金融緩和、インフレは米国の覇権維持のための道具です。

しかし、いくら世界をコントロールする「道具」として便利だからとはいえ、あまりにも米ドルを刷りすぎると、インフレが起きて価値が下がってしまう。そこで、アメリカ政府は大胆な戦略転換を図る。いわば「米国債本位制度」への移行である。具体的には、欧州や日本、石油輸出国機構加盟国の中央銀行に対して、「世界の金融システムの流動性を維持するため」だと説得し、アメリカ国債を積極的に購入するよう迫ったのである。すなわち、世界に溢れた米ドルの信用を買い支えさせたのである。これでアメリカは衰退しつつあった覇権を、再び回復することに成功した。

覇権国が衰退する時(4):アメリカ(2)【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

そして、米国の覇権の回復が必要だったのは、銀行家と呼ばれる人たちです。

連銀はロックフェラーとロスチャイルドによって作られた

『ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ』

「バンカー」という支配者

中央銀行とともに、陰謀論の中核とも言える、ロックフェラー家。彼ら一族がアメリカを支配し、強いては世界を支配してきたことも本当ですよ、と書いてきました。

デイヴィッド・ロックフェラーは一族の兄弟が(一説には暗殺されたのではないかというほどに)早逝していく中で長寿を誇った。20世紀の後半にアメリカの世界覇権国となる動きと軌を一にして隆盛を誇り、勢いを失っていったようにも見える。これは、極端に単純化して言ってしまえば、デイヴィッド・ロックフェラーが、石油と金融、つまり資源とマネーを支配する仕組みを作ったことによる。

ロックフェラー後の世界秩序を握る人物(1) net IB NEWS

そのデビット・ロックフェラー氏の戦略について、面白いことが書いてありますね。

ドナルド・トランプ大統領やその側近たちが、貿易赤字や知的財産の侵害を行っているとして中国を批判しているが、もともと中国の世界市場へのデビューのきっかけを作ったのもデイヴィッドである。周恩来首相と会談したほか、中国の改革開放の父である鄧小平を文革が終わった直後にアメリカに呼んだ。ロックフェラーはチェース銀行や資本を握る石油企業のために中国に急接近をしたわけだ。

ロックフェラー後の世界秩序を握る人物(2) NET IB NEWS

トランプ政権は元より、現在の米国は中国に対する強硬姿勢を隠さなくなっておりますが、中国を育てたのは、なにより米国自身であり、ロックフェラーであるというのもよく聞く話です。

彼らはなぜわざわざ、自分の敵を育てるなんて、愉快なことをしたのでしょうか。「戦争で儲けるため」もっとも純粋な陰謀論者はそう言いますが、それで納得できますでしょうか。

別の答えがあるのならば、こうではないでしょうか。銀行家は覇権国家の寿命を知っており、自分たちの権益をそっくり、中国に移そうとして失敗したのだと。

2度の世界大戦を経て、アメリカを除く主要国の資本は、戦費によって枯渇してしまった。イギリスから覇権を譲り受けたアメリカが主導した国際的施策は「自由市場に基づく公正な世界経済を実現させ、戦火からの復興を達成させ、防共体制の構築を図る」という目的で進められた。

覇権国が衰退する時(3):アメリカ【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

銀行家は、嘗てイギリスからアメリカに覇権を移しました。今度も同じように出来ると考えた可能性は高いでしょう。しかし結果、中国に拒否された。慌てた彼らは、急きょトランプを台頭させ、中国退治に乗り出したというわけです。しかし、彼ら自身が、それが所詮悪あがきであることを初めから知っていたようです。

「われわれは中国との経済戦争のただ中にある。どちらかが今後25年か30年の覇権を握ることになるだろう。このまま行けばそれは中国になる」とバノン首席戦略官は述べた。

バノン氏、米中は「経済戦争のただ中」 政権内の対立も認める CNN

「イスラエル」という支配者

イギリスからアメリカに覇権が移る際に、決定的な役割を果たしたのが、イスラエルです。

バルフォア宣言とは、第一次世界大戦中の1917年11月2日に、イギリスの外務大臣アーサー・バルフォアが、イギリスのユダヤ系貴族院議員である第2代ロスチャイルド男爵ライオネル・ウォルター・ロスチャイルドに対して送った書簡で表明された、イギリス政府のシオニズム支持表明。この宣言をシオニスト連盟に伝えるようロスチャイルド卿に依頼した。

「バルフォア宣言」 ウィキペディア

世界最大の銀行家が自分たちの権益をイギリスからアメリカに移すためにイスラエルを建国した、と考えても問題はなさそうに思えます。そのイスラエルは、米国の覇権そのものだと言ってもいいくらいです。

「国の力が、出来事や事件に対してどれほどの影響力を持つかという基準で計測されるとするならば、世界の超大国はイスラエルということになる」

イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 Ⅱ

力をつけた中国を破壊しようともがいているのは、イスラエルでしょう。イスラエルが米国の対中圧力を作り出しているという証拠は今のところ見つかりませんが、状況的にそう考えるのは妥当に思えます。なぜなら、彼らの「新世界秩序」にとって、現在の中国は最大の邪魔者だからです。

ニュー・ワールド・オーダー

「新世界秩序」という言葉は、新しい覇権体制を意味する言葉として知られます。

この用語が一般にも広く知られるようになったのは、1990年9月11日に時のアメリカ大統領ジョージ・H・W・ブッシュが湾岸戦争前に連邦議会で行った『新世界秩序へ向けて(Toward a New World Order)』というスピーチであった。

「新世界秩序」 ウィキペディア

その言葉を広めたのはブッシュ父で、スピーチの日付が「1990年9月11日」・・。2001年9月11日、2011年3月11日、2020年3月11日・・・勢ぞろい・・

アメリカは9.11をきっかけに、中東に「新世界秩序」を構築していきますが、その中心にいたのは、世界に「NWO」を認知させた男の息子でした。私がこの世界の民主主義に疑問を持つきっかけになったのは、ジョージ・W・ブッシュその人の顔を見たときだと何度か書きました。

「こんな奴が選挙で大統領に選ばれる訳ねえだろ!?」

純情少年だった私の頭に宿った違和感は強烈でした。こいつがクラスにいても、学級委員長に選ばないよね? 絶対。

「この世はおかしいのか?」

そう、確かにこの世はおかしかったのです。

この政権を取り巻く「異様な何か」を直感し、「この政権は乗っ取られている。ブッシュは操り人形、黒幕はラムズフェルドだ」と、政治的知識が皆無だった高校生の私は、友人に冗談めかしてそう話しました。

数十年後、その「ジョーク」が正しい事実を示していたことに、自ら驚愕することになったのです。

ブッシュ政権の高官の中で、ラムズフェルド国防長官だけが政権発足の時点からイラクとの戦争を明らかに支持していた。

イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 Ⅱ

ラムズフェルドははまさに、黒幕だったのです。随分昔のことなので、記憶が都合よく改変されている可能性もありますが、そう言ったことをはっきり覚えているのです。当時の友人に会ったら、是非聞いてみたいものです。

「あの時、確かにそう言ったよな?」と。

そして、アメリカを乗っ取った勢力とは、イスラエルだったのです。

しかし、イスラエルと〈イスラエル・ロビー〉は、CIAや国務省とは反対の立場を取ってきた。そして、イスラエルと〈イスラエル・ロビー〉は大統領選挙においてブッシュ大統領に勝利をもたらしたのだ。

イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 Ⅱ

彼らの「ニュー・ワールド・オーダー」は、911のおかげで成功裏に進みました。

ネオコンがイラク戦争の主要な設計者であるという事実と同じくらいに重要なことは、彼らがクリントン、ブッシュ両大統領にイラク侵攻を説得できなかったと言う事実だ。ネオコンは自らの目的を達成するために手助けを必要としていた。そして911同時多発テロはその手助けとなったのだ。

分裂

しかし、それから20年が経ち、その「新秩序」も限界を迎えつつあるようです。イスラエルの中の「旧・新世界秩序」にすがる勢力と、その凋落を察知し、「新・新世界秩序」を創ろうとあがく勢力の内戦が勃発しています。

「トランプ旋風」を強く警戒しているのはブッシュ大統領の「アフガン・イラク戦争」を支えた「ネオコン」の面々である。トランプがこのまま大衆の支持を集めるなら、共和党を分裂させてでも阻止すると「ネオコン」は考えている。トランプの最大の敵は「ネオコン」なのだ。

「トランプ旋風」は「ネオコン」を吹き飛ばせるか YAhoo ニュース

彼らの言葉通り、共和党は分裂してしまいました。

トランプを旧支配勢力とは無縁のニューヒーローだとする言説もありますが、これは誤りでしょう。彼はデビット・ロックフェラーの系譜だと思います。その奥は恐らく、ロンドンのロスチャイルド家です。デビットの懐刀だったキッシンジャーの動きを見ていると、その線が見えてきます。

宗教保守であったテキサスのテッド・クルーズ上院議員が指名を受けなかったこともあり、キッシンジャーはトランプが「大統領の任に耐えるか」を首実検したわけだ。だから、トランプが大統領になれたのは、反ネオコン派の財界人や軍人たちの強い意志があったからである。その意志を体現していたのが、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平とも昵懇の仲であるキッシンジャーというわけである。

ロックフェラー後の世界秩序を握る人物(2) NET IB NEWS

ロックフェラー個人の意志が働いたかはよくわからないが、その直臣であったキッシンジャーは、危険なヒラリーよりはトランプのほうがマシと判断したフシがある。「彼にチャンスを与えよう」とキッシンジャーは当選後に雑誌のインタビューで語っていた。

ロックフェラー後の世界秩序を握る人物(3) NET IB NEWS

そうポピュリズムとは全く逆、トランプは世界の最高権力が選んだ大統領だったのです。

ロックフェラーはロスチャイルド家と同様に実像以上に大きく描かれたことも確かだが、20世紀の一時期にアメリカが世界覇権国家として世界に展開する環境づくりを行ったことは誰しも認めるところだろう。

 あれだけヒラリーやその支援者の金融家のジョージ・ソロスを口汚く批判するトランプ大統領だが、ロックフェラーを批判したことは私の知るかぎり一度もない。

ロックフェラー後の世界秩序を握る人物(4) Net IB NEWS

彼らは自分たちの過ちに気が付き、慌てて戦略を転換したのです。それがトランプ旋風の正体です。ただ、それは既に手遅れでした。

世界の支配者は、覇権国家米国とともに滅びる

さて、もうここまでで、覇権国家米国とそれを支配してきた銀行家の現在地がもうはっきり見えたのではないでしょうか。ロスチャイルド家には、「ロンドン」の他に「パリ」も存在しますが、パリがロンドンを抑える形での統合が決まっている様です。

嫡流であるロンドン家が、ただでそれを許すはずがなく、間違いなく彼らも、致命的な分裂に陥っています。

華麗なる銀行家たちは、自分たちの権益を新興国家に移すことを失敗しました。そして、年老いた覇権国家の寿命を延ばすどころか、対立がゆえに、加速度的に死を加速させているのです。

この記事が、読んだすべての人の頭にはっきりと、彼らの時代の終わりをイメージできる内容になっていれば幸いです。

覇権国家の衰退と勃興は、人類の歴史上幾度も繰り返された当たり前のことでした。しかし、その裏にいた「支配者」が国家とともに滅びることはそうはなかったはずです。

そういう意味で、今は時代の大転換期と言えます。