スペインで反緊縮政党が躍進

ギリシャのチプラス首相がEUに対し、まさに駄々っ子作戦を仕かけて、瀬戸際で踏ん張っているようですが、私にはとてもうまくいくとは思えません。大人が駄々をこねてうまくいくのであれば、だれが大人をやるんでしょうか?

 

そんな中、少し前ですが、ひっそりとこんなニュースが。

スペインの統一地方選で、反緊縮を唱える左派政権ポデモスが勢力を大幅に増したそうです。これにより、ギリシャと同様に反緊縮派の政権が誕生する可能性が現実の物となってきたようです。

ギリシャが滑り落ちるくらいのことは、きっとわれらのドラギ兄貴がなんとかしてくれると思いますが、さらにその先となるとどうなんでしょうか?

兄貴の任期がずっと続くわけでもないですし、そんな彼ですらどうしようもない状況にEU、ユーロが陥っていくという可能性はそんなに低くないんではないでしょうか。

 

「人間性」を無視した仕組みのEU

私がその根拠に思うのは、EUが人間的な気持ちを無視した文明的仕組みによって成り立っていると考えるからです。そして、そんなEUの未来を暗示していると思われる小説が、H.G.ウェルズの古典SF小説の傑作『タイム・マシン』です。

 

エロイのユートピアは偽りの楽園であった。時間旅行者は、現代(彼自身の時代)の階級制度が持続した結果、人類の種族が2種に分岐した事を知る。裕福な有閑階級は無能で知性に欠けたエロイへと進化した。抑圧された労働階級は地下に追いやられ、最初はエロイに支配されて彼らの生活を支えるために機械を操作して生産労働に従事していたが、しだいに地下の暗黒世界に適応し、夜の闇に乗じて地上に出ては、知的にも肉体的にも衰えたエロイを捕らえて食肉とする、アルビノの類人猿を思わせる獰猛な食人種族モーロック(Morlock)へと進化したのである。

-ウィキペディア-

まあ、ちょっとかなり後半は過激ですが(笑)。要は経済的な勝ち組と負け組の格差が広がり、初めは勝ち組の支配が続くも、やがて負け組の反乱が始まりユートピアは崩壊へ向かうと言うことです。

抑圧される労働階級とは、まさに緊縮財政を強制されるユーロ圏内で経済的に貧しい人々を表しています。そして今回のスペインの選挙結果はそんな支配への反発、反抗と言うものが引き起こしたということでしょう。

 

人間の本性、”非合理性”がEUを崩壊へ導く?

そして、もう一つ、こんな小説を紹介したいと思います。

端な自意識過剰から一般社会との関係を絶ち、地下の小世界に閉じこもった小官吏の独白を通じて、理性による社会構造の可能性を否定し、人間の本性は非合理的なものであることを主張する

~ ドストエフスキー 『地下室の手記』 岩波文庫あらすじより ~

 

理性による社会構造の集合体のEUが、非合理的な人間の本性によって崩壊に向かう可能性は大いに注目すべきことなのではないでしょうか。

まあ、まだ当面しばらくはドラギ兄貴がきっとなんとかしてくれるんでしょう!

 

追記 2016年6月25日 イギリス、EU離脱

国民投票でイギリスがEUの離脱を選び、世界の株価が暴落しました。これが果たしてEUの崩壊への第一歩となるのでしょうか?