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カテゴリー: エンターテイメント小説 Page 1 of 2

『D坂の殺人事件』と『モルグ街の殺人事件』 ~推理小説とは「お笑い」に近いものなのか!?~

江戸川乱歩作、ドラマにもなっていました『D坂の殺人事件』を読みました。この作品はとても面白かったです。名探偵、「明智小五郎」が初登場となるのですが、江戸川乱歩特有の異様な世界観が表現されており、私はこういうのが、とても好きです。

この短編小説の中で、エドガー・アラン・ポー作の『モルグ街の殺人事件』が出てくるのですが、こちらの作品はその影響を色濃く受けています。そして、この2作品、実は日本の「お笑い」に近いものなのではないか、という独自見解をこれから書いてみたと思います。殺人事件とその解決という非情にシリアルなものであるはずの、「推理小説」がなぜ、「お笑い」近いのか? そのキーワードは”非常識”にあるのではないでしょうか。

※以降、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

子猿のシャーロット騒動は「愛」のなせる業

大分市の高崎山動物園で子猿にイギリス王室の生まれたばかりの王女と同じ名前「シャーロット」と名付けたところ、抗議が殺到したという騒動がありましたが、イギリス人から見ると何が悪いんだ? というのところのようで、それを確認し、おさまったようですね。

騒動の根底には「愛」 愛の本質を教えてくれる名作2作品

『容疑者Xの献身』 東野圭吾

久々にエンターテインメント系です。
※ネタバレあります。

 

テーマ 無償の愛は存在する?

この小説はとても面白いのですが、いろいろ見ていると「切ない」と言う感想が多いようです。何が切ないかと言うと題名にもなっている『容疑者Xの献身』。

言い換えるとXの無償の愛です。この小説のテーマとも言える、この「無償の愛」ですが、実際、本当にあるんでしょうか? これが本当にあるかどうかはこの小説の評価に直結する気がします。現実的に存在しなければただの夢物語で終わってしまいますからね。この観点で今回は考えてみたいと思います。

『プリズン・トリック』 遠藤武文

久々にエンターテインメント系の小説を取り上げてみたいと思います。

「江戸川乱歩賞受賞」ということですが、解説を読んでみると結構賛否があったようですね。
それはなぜかと言うと、作品を読んでみるとすぐに分かると思います。解説にも書いてありますが、まず読んでいて誰が主人公なのかさっぱり分かりません。

文学としての小説を考えた場合、この作品はそれに値しないと言ってもいいかもしれません。私も終わりの頃でこのまま終わりかな? 無駄な時間を過ごしてしまったかな、なんて考えていました。

『オイディプス王』 ソポクレス

刺激的なサスペンス性溢れる内容

この作品、誉れ高いギリシャ古典悲劇の最高傑作ということで有名なので、さぞかし格式高い、堅苦しい話なのだろうと思い、覗いてみると、意外や意外、その非常に刺激的なサスペンス的な内容に驚かされます。

 

よく小説は、「文学」と「エンターテイメント」にジャンルわけがされますが、この作品はおそらく「エンターテイメント」に分類されるのではないでしょうか。こんな古典でそれは不自然でしょうか。しかし、あらすじを覗けば少しはそんな気がするかもしれません。

『オリエント急行殺人事件』 アガサ・クリスティ

久々の更新で、本当に今更ながらの『オリエント急行殺人事件』を取り上げてみたと思います。

この小説は本当にとても面白いのですが、私がこれまで取り上げてきた小説とは面白さの種類が少し異なっているようです。

私はいままでここで紹介してきた小説では、根底にある「テーマ」を中心に紹介してきました。では、このオリエント急行殺人事件のテーマとは何でしょうか。

私は、この作品にはテーマがないのではないかと考えています。それが他の小説と大きく異なっており、それが最大の面白いところなのです。この小説はテーマなど探さずに純粋にその面白さを味わえばいいのです。

『閉鎖病棟』 帚木蓬生

帚木蓬生 さんの作品は初めて読んだのですが、結果として、とてもすばらしく、他の作品も読んでみたいと思いました。

なんで、「結果として」なんて書いたかというと、正直、読み始めた頃は、あまり興味を持てなかったのです。それもそのはず。この作品の主人公は、イケメンや美少女や、不倫をする奥さんや愛人を抱える男などではなく、歳も結構いった、しかも、精神病を抱えた、おじさんやおじいさんたちです。

『博士の愛した数式』 小川洋子

第1回本屋大賞受賞のこの作品を読みました。この作品は、エンターテイメントなんでしょうかね、文学なのか、ちょっと、微妙でしたが、非常にいい作品でした。

 

この作品は、私たちの興奮を煽るような、非日常的な危険なことは起こりませんが、楽しく最後まで読める作品です。何より伝わってくるのは作者の小川洋子さんの、小説に対するまじめな姿勢です。他の作品も是非読んでみたくなります。

『柔らかな頬』 桐野夏生

直木賞受賞ということで、こちらの小説を読ませていただきました。しかし、推薦することは出来ないというのが、私の結論です。それは、やはり、物議を醸したと言われるラストにあります。

この作品は、ジャンルで言うと『ミステリー・サスペンス』となるでしょうか。しかし、前回紹介した『黒い家』などとは違って、失踪するようなスピード感はなく、割とゆったりと時は進みます。それでも、読者を飽きさせないのは、その心理描写の巧みさです。それは、十分にそれだけで魅力的であり、文学として成立しているのではないかと思います。そのすばらしき作品性をスポイルしてしまっていると思うのが、やはりラストです。

『黒い家』 貴志祐介

今回、新しいカテゴリを設けました。この『黒い家』は決して、人に薦める事が出来ないからです。でも、つまらないからではありません。この小説は面白いと思います。しかし、おそらく健康に悪いです。だから、推薦外です。

私は、この小説で非常に怖い体験をさせていただきました。夜中に読んでいたこともあり、本当に、心臓がどきどきと痛く、寿命が縮んだのでは?と思うほどでした。しかし、先を知りたくって、文学的な小説を読むときの何倍ものスピードで、ページをめくっていました。

こう言ったことが、所謂エンターテイメント小説の醍醐味でしょう。読後感も決して心地よいとは言えず、気味悪さが残ったまま、緊張しているとても、健康的とはいえません。しかし、こう言ったことを面白いと感じるという事実を見逃すことは出来ません。

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