あらすじ
八十万年後の世界から戻ってきた時間旅行家が見た人類の未来はいかなるものであったか。衰退した未来社会を描き出した「タイム・マシン」は、進歩の果てにやってくる人類の破滅と地球の終焉をテーマとしたSF不朽の古典である。
これは岩波文庫のあらすじですが、『フランケンシュタイン』に続いて「SF不朽の古典」の『タイム・マシン』を紹介したいと思います。
エロイのユートピアは偽りの楽園であった。時間旅行者は、現代(彼自身の時代)の階級制度が持続した結果、人類の種族が2種に分岐した事を知る。
裕福な有閑階級は無能で知性に欠けたエロイへと進化した。抑圧された労働階級は地下に追いやられ、最初はエロイに支配されて彼らの生活を支えるために機械を操作して生産労働に従事していたが、しだいに地下の暗黒世界に適応し、夜の闇に乗じて地上に出ては、知的にも肉体的にも衰えたエロイを捕らえて食肉とする、アルビノの類人猿を思わせる獰猛な食人種族モーロック(Morlock)へと進化したのである。
–ウィキペディア–
結果、未来予測となった可能性
以上、ウィキペディアから引用したあらすじです。これは、1895年に発表された小説ですが、どうでしょうか。どんどんこの世界に近づいている感じがしないでしょうか・・。
「おそらくウェルズは、本作を未来世界の厳密な予測であるとは見なしていなかった」
とも書かれてますが、作者が未来予測として書いていなかったとしても、鋭い洞察からくる社会構造と人間性を表現すれば、結果、正確な未来予測になってしまう可能性は大いにありうることでしょう。
最近でいうと、ギリシャ選挙で予想以上の結果が出て、また世間を震撼させていますが、この辺りもユーロの中での勝ち組に対する反抗心のようなものが多い感じられ・・まあ、これに例えてはギリシャの方に失礼ですが・・、前の記事でも触れたようなことが起きてるなと考えています。
風刺小説という位置づけだが・・
この小説は文明への警告と言うよりは、ウェルズの政治観を反映した小説である、らしいです。政治批判的な風刺小説ということのようですが、私は風刺はあまり好きではないです(笑)。
最近もそんなことが話題になっていましたが、安易な風刺は、「対象の価値を下げることで、自分を高く見せようとすること」、それを目論んだ自己陶酔となる可能性が非常に高いものです。ですから、欧州の新聞社がやったようなことなどには、もちろん文学的価値はないと考えています。
小説、文学に与えられた命題は批判するなどという、ちっぽけなものではないと思います。
ですので、個人的にはこの小説は政治批判小説という、狭い範囲ではなく、やがてやってくる避けられぬ人類の未来を描いた、まさに予言書として読みたいと思ってます。まあ、もともとそのような評価だからSF不朽の古典なんでしょうけどね。