本日はイエレン議長の講演があるそうですね。ここでイエレンが何を語るのか、非常に気なるところです。最近続いているFRBメンバーの利上げへの意欲を踏襲することになるのでしょうか。それとも・・?

どちらにしろ、最近のFRB高官の発言はイエレン先生の本心と言えるものではないでしょうか。

本当はFRBの畏れるドル安がやって来た

「利上げ期待」で上昇した米国株の向かう先

エモリキャピタルマネジメント代表取締役の江守哲さんの東洋経済オンラインの記事です。

低金利を背景に投資先に苦慮する世界の投資マネーが、ドル安を背景に米国に再度集まる可能性は否定できない。年内は米大統領選挙などの不透明要因もあり、上下に変動する可能性があるものの、長期的にはドル安を背景に、米国株は上昇基調が続く可能性がある。

江守さんのおっしゃるこちらは、これまで当ブログが再三お伝えしてきたイメージに近いものです。

FRBはドル安をきっかけに訪れるインフレの加速と資産バブルを恐れているため、アメリカは極端なドル安政策をとることはないだろう

これが、当ブログが昨年から掲げてきた予測です。これは一部が当たっていたこと、そして一部は外れていたことが最近になって明らかになりました。

ダドリー総裁は最近の株式市場でのボラティリティについて、「金融環境のある程度の引き締まりは全く適切だ」とし、「いわばそれが金融政策引き締めの目的のようなものだ」と続けた。

最近の講演でFRBのスポークスマンと言われるダドリー連銀総裁はこうおっしゃったのです。つまり、FRBは、世界のマーケットを混乱に陥れようとも、アメリカの資産バブルを防ぐために利上げを行うと。利上げはドル高要因ですから、当然円安ドル高が続くはずではないか。しかし、実際は違いました。

ドル円は年初から下落し続け、日銀がマイナス金利を導入するなどしたにもかかわらず、とうとう今月頭に105.5円まで円高が進むこととなりました。この理由はなんだったのか? それはアメリカ政府がドル安を求めたからでした。つい先月くらいまで私にはこの視点がまったくなく、読み違えの原因となってしまいました。FRBは求めていなくても、アメリカはドル安を求めた。知らずのうちに、FRB=アメリカではなく、むしろFRB対米政府の構図になっていたのです。

 

6月の利上げと日銀の行方

FOMC議事録や相次ぐ高官の発言などで、6月の利上げに対する見方が高まっているようです。FRBの意向だけで考えるならば、確定的なのですが、FRB V.S. 米政府の構図が続く中、果たして利上げを行わせるのか、と言うことには疑問が残ります。

実際、4月にもFRB高官が利上げを匂わしていたにも関わらず、イエレン議長がそれを真っ向から打ち消すと言う不自然な事態が起こりました。過去の発言からも、FRBメンバーの言質は彼女の意向とそう変わりないはず、だったのです。そもそも、メンバーと議長とでまったく逆のことを言うのは、非常に変です。

ですから、利上げの打ち消しは政治的な理由によって行われた、イエレンの本心はむしろ、FRBメンバーの発言にある、と言うことが推察されるのではないでしょうか。

 

そして、FRBの他にもドル安にしたくない勢力がもう一つあります。それは我らが日本政府です。アベノミクスは円安政策ですから、こんなに円高ドル安が進んでは非常に困るわけです。と言うことは、FRBと日本政府はどちらかと言うと、同じ方向を向いているわけです。しかし、力関係に於いては、アメリカ政府が上であることは誰でも知っていますから、米政府の方針にFRBも日本政府も追随しなければならない可能性が考えられます。

6月の金融政策決定会合で追加緩和観測が高まっており、日本の都合だけで考えれば、かなりの確率で追加緩和が飛び出すだろうと思いますが、今の状況をアメリカを含めて考えれば、果たして日銀が動けるかは微妙ではないでしょうか。3者すべての足並みがドル安方向へ揃うかは分かりませんが、マーケットが期待する、利上げ有、日銀の追加緩和有、は可能性が低いように思われます。あったとしても、そのどちらか一方、もしくは両方なしも十分想定されるのではないでしょうか。

しかし、アメリカのルー財務長官は、あんまり仕事が出来るようには見えな・・、この辺りがどの程度影響するかではないでしょうか(笑)。

 

ドル安はきっとまだ続く

ゴールドマン・サックスがドルは底を打った、と言っているようですが、それはまだまだ怪しいと私は思っています。先日のG7でも、アメリカが日本の円安誘導を許したようには見えませんし、空気的には決まり! みたいになっているトランプ氏が実際に大統領になれば、極端なドル安政策を取ることが標榜されています。

結果、101円の奇想天外ライン(画像参照)を突破されると、95円くらいまでは円高になってもおかしくはないのでないでしょうか。

名称未設定

しかし、それ以上にずっと円高が続くイメージはありません。なぜなら、それは本格的な円高転換ではなく、長期円安時代の円高局面の範疇だと思うからです。

トランプ氏が大統領になると、マーケットが暴落すると言う見解ばかりですが、以前お伝えした通り、彼はむしろ、かなり大胆な株高政策を掲げており、その通りに行われるならば、米株はむしろ更に上昇していくと言うことでしょう。

米国株はきわめて長期にわたって上昇基調が続いているが、この基調はFRBの賢明な政策により、今後も株価上昇が続く可能性は十分にある。

米国株の次の高値は2019年第2四半期あたりになる。また上昇率は43%に達すると計算され、その時点のダウ平均株価は2万3500ドル程度にまで上昇すると試算できる。

江守さんもこうおっしゃっています。しかし、ドル安により、日本株にとってはしばらく辛抱の時が続くかもしれません。それは過去に何度も繰り返されてきたことであり、結局、日本株は、アメリカ経済、アメリカのマーケットの十分な上昇の後の、ドル高への転換点において、急速にNYダウを追随する動きとなるのではないでしょうか。

 

「イエレン先生」の教えはきっと正しいが・・

最近、マーケット関係者の中にNYダウが暴落するという意見が多く、著名な世界の投資家の方の中には、半値になるくらいのことをおっしゃる方もいるようです。今は、もう金融緩和バブルで、あとは崩れるしかないと。確かに、NYダウは史上最高値付近ですし、値段だけを見ていれば、いつ下がってもおかしくないように思えます。

しかし、だとすれば、なぜFRBはそこまでして、更なる利上げをするのでしょうか。なぜイエレン議長は、世界のマーケットを混乱に陥れてまで、そこまでの覚悟を持って利上げを開始したのでしょうか。アメリカ経済が大きく軌道に乗っていない中、資産が暴落するのならば、利上げをする必然性なんてまったくありません。

 

ダドリー総裁が言う通り、FRBは、放っておけば米株はバブル化してしまうから、相応のリスクを取って、利上げを開始したのです。と言うことは、もし、政治の都合によって、利上げをさせてもらえないのならば、米株はバブル化する、と考える方が普通と言うことになります。

バブルが訪れる前に先回りで利上げしなければ、後追いでは急激な利上げをしなければならなくなる

イエレンはどこかでこう言っていたと言います。だとすると、今がバブルなのではなく、下手をすれば、これからバブルがやって来ると言うことでしょう。それとも、イエレンはマーケットへの見方を大きく誤っているのでしょうか?

私は、イエレン議長は、経済、マーケットに対する高い先見の明を備えたスーパー議長だと思っており、彼女は世界のどの政治関係者よりも、正しく世界のマーケット事情を知っていると思います。

安倍首相がサミットで、「今はリーマンショック前に似ている」とわけの分からないことを言ってましたね。これには山本伸さんが日本人として恥ずかしいとおっしゃってました。ダウが暴落するなら、イエレン先生より安倍首相の方が正しいことになっちゃいますね。著名投資家の暴落予測よりも、私は先生を信じたいと思っています。

しかし、そんな先生でさえも、バブル化を防ぐことだけは出来ない。なぜなら、それが時代の潮流ではないかと思うからです。