2月28日、世界中の投資家が固唾を飲んで見守った、トランプ大統領の議会演説が行われました。結果、みんなが心配していた世界を混乱に陥れるような攻撃的な内容はなく、無難でソフトな演説でした。これにはアメリカの議員、国民も大いに好感を抱いたようで、その演説の支持率は80パーセントにも上ったと伝えられております。

当然、マーケットもこれを好感。演説への不安心理から調整局面入りしていたNYダウは、安堵感から300ドル超の大幅高となったのです。これで、株式市場は再び上昇回帰、めでたし、めでたし。

あれ、いえいえ、ちょっとお待ちください。これを読んでなんか変だと思った方も、きっといらっしゃるでしょう。「トランプ大統領演説への不安感の払しょく」で300ドル高? その二日前までダウは12連騰していたじゃないか! そして、一日前下がったとはいえ、たった20ドルじゃないかと。

そして、歴史的な12連騰の理由は「トランプ演説への期待感」からだと解説されていたのですから、もう無茶苦茶です。なぜ、こんなことになってしまうのか・・? その理由は恐らく、NYダウが今までの常識で測れない異次元相場だったからではないでしょうか。マーケット関係者がその説明をつけられないこと自体が、その事実を示していると私は思います。

 

「トランプ期待」と「トランプ不安」同時進行の矛盾

事実、一般的に12連騰は「トランプ期待」で、300ドル高は「トランプ不安の払しょく」という解説がなされていますが、これは明らかに矛盾しています。期待と不安が入り混じるということは、もちろんありますが、それでは歴史的な12連騰の説明になりません。

矛盾しているのですから、「トランプ期待で相場が上昇していた」、「トランプ不安の払しょくで上昇した」のどちらか、もしくはどっちとも否定されなくてはなりません。では、実際どちらが間違っていたのかというと、前者ではないかと私は思っています。300ドル高はほぼ空売りの買い戻しだったそうですし、投資家として、期待でこれだけ騰がったと考えれば、材料出尽くしでその後は、下落に備えるというのは当然の流れと思うからです。

それにトランプ大統領は、事前に「驚異的な税制改革を発表する」と投資家の期待を煽っておりましたが、ふたを開けてみると結局何も出てこないという相場的には最悪、と言っていいパターンだったと思います。

それでも相場は演説後に300ドル高しました。それはつまり、そもそも投資家は今回の演説には対して期待していなかったことを表しています。逆に「期待していた」ということにしてしまうと、その後の300ドル高は全く説明することが出来ないのです。

 

「期待なし」で相場は12連騰

これが、今回私がこのような記事を書いている所以になります。もし、先程書いた説が正しければ、NYダウは何の期待もなしに(期待相場はきっと最初の何日かで終了していたのではないでしょうか)、むしろ不安を織り込む形で12連騰、そして最終的には20ドル安で調整を完了したことになります。これは非常に奇妙な考えでしょうか。しかし、そう考えないと、矛盾を払しょくできないのです。

しかし、アメリカ株に限っては当ブログでは、すでに株価指数としては変態的な動きになっていると繰り返しお伝えしてきたので、それがさらに助長されたと考えれば、それほどおかしいことはないかもしれません。それに、トランプ大統領はマーケットには、言うほどの影響力はない、とずっとお伝えしてきたではないですか。これで当ブログの「トランプ、マーケット的には定食の小鉢説」が裏付けられたのではないでしょうか(笑)。

結局、なにが言いたいかと言いますと、やはり、昨今の上昇相場の主体は「グレート・ローテーション」だろう、ということです。そして、その威力は非常に凄まじいものだということです。

 

米株バブルは避けられざる運命

当ブログの現状の見方があっていることを肯定してくれているかのようなのが、FRBです。いつもぶっちゃけトークで教えてくれる正直者のダドリーさんが、こう語っています。

「金融情勢は昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合時よりかなり逼迫している」

~ 日本経済新聞 ~

FRBのスポークスマンともいわれる、ダドリーさんのお言葉ですから、実際、彼らの危機感は相当なものと想像されます。下のfacebookページで「3月の利上げはあり得る」と書いたちょうど次の日辺りから、FRBメンバーが次々と利上げに前向きな発言をし、これはドンピシャでした。昨日の正副議長の講演でもそれが肯定されたことから、3月の利上げは確定的と思われます。

金融市場に目を向ければ、利上げは確実に遅れている、それが当ブログが昨年からずっと主張していることでもあります。だから、FRBは今年利上げを加速させざるを得ない、と。しかし、FRBがそれを分かっていないということではなく、彼らはむしろ私にそれを教えてくれました。彼らは、きっと、わかっていてもどうしようもなかったのです。だから、「米株バブルは避けられざる運命だ」、とお伝えしてきたわけなのです。

3月利上げは一週間前にはほとんど織り込まれていなかったはずで、数日で90パーセントと予想される水準までもっていくその手腕はさすがです。しかし、同時に今回はイエレン議長が就任してから初めてと言ってもいい、明らかに意図的に、積極姿勢でのスピード織り込みであり、ここにも彼らの危機感がにじみ出ているのではないでしょうか。

 

ダウは下がる能力を失いつつある?

ここ一年のダウの動きを見ていて、私は最近、「ダウは下がる能力を失いつつあるのではないか」と思うようになりました。これは非常に奇妙な考えだと自分でも思います。しかし、どうも、「12連騰から20ドル安挟んでの300ドル高」の動きを見ていると、そのように感じてしまいます。それくらい、あの動きは私にとっても衝撃的でした。単に”強い”というレベルを超えたまさに異次元の動きだと思ったのです。これに関しては皆さん、一緒だと思います。

だって、矛盾した解説しかない、ということが誰もその動きを理解できていないことの象徴ではないですか。材料出尽くしで急落なんてそんな普通にはならない、と書いてきましたが、私にはその想像を超える異次元相場だったのです。

 

下がれなくなった株は行きつく先まで暴騰するしかない

相場というものは、ある日突然激変するものです。今のダウがどれだけ最強に見えても、明日から突然最弱となり、巷で心配される、リーマン・ショック並みの暴落を開始する可能性もあるでしょう。しかし、私に関しては、直近の彼の変態っぷりを見せつけられるに、心配するべきは暴落ではなく、異次元の暴騰ではないか、と感じたのです。

FRBが暴落に対する備えとして利上げを急いでいるとは思えません。バフェットさんが、米株はバブルではないと言っていたそうです。私はバブルだと思っていますが、それはまだまだ序の口とも思っており、バブルとは言わないのかもしれません。

私はこの記事を、株の高騰に対するわくわく感や煽りでという気持ちではなく、むしろ得体のしれないものに触れた怖さを感じながら書いているのです。